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大阪舞台挨拶!『KUNI 語り継がれるマスク伝説~謎の日本人ギタリストの半生~』佐藤監督と“日本のメタル・ゴッド”伊藤政則氏が海外一流ミュージシャンたちに愛される「KUNI」の魅力を語る!

大阪での開催初日となる3月24日、ミステリアスな仮面をかぶり、L.A.メタルブームに沸くミュージックシーンのど真ん中でギタリストとしての地位を築き上げた謎の日本人ギタリストKUNIの軌跡に迫るドキュメンタリー映画『KUNI 語り継がれるマスク伝説~謎の日本人ギタリストの半生~』が上映され、佐藤功一監督音楽評論家の伊藤政則が上映後に舞台挨拶を行いました。

 まず最初に本来だったらここに来るはずだったKUNIさんから「大阪は人懐っこいのかなれなれしいのか、すぐに声をかけてくるんで(笑)、ちょっと戸惑う時もあるんですが、愛すべき街です。」と大阪へのお客様へのビデオメッセージが流れると、映っていた背景について「なんかいいところ住んでるね。後ろに竹があって。」と突っ込みを入れる伊藤に、「これは彼の住んでいる自宅の近くです。」と返す監督。舞台挨拶冒頭から三人の仲の良さを伺わせつつ、劇場の席が一列目から埋まっていることについて触れ「恐れ多い」と恐縮する一幕も。

 本作の製作に至った思いについて監督は「以前から私とKUNIは表裏一体だと話していました。KISSが来日した時、私とKUNIはお互いの存在は当然知らなかったんですけど、KUNIも私もKISSのポール・スタンレーにあこがれて、そしてデトロイト・メタルシティを聞いて、ハードロックの虜になりました。今映画でもご覧いただいたように、KUNIはポールに憧れながらロックミュージシャンの道を歩んで行きますが、私は進学をし、そして就職をして全く違う人生を歩んでまいりました。私が今年の一月でTBSを定年退職し、一つ違いのKUNIも来年還暦を迎えます。今このタイミングで『映画の製作を通じて今しかできないことはなんだろう、自分にしかできないことはなんだろう』と考え、『それだったら単身アメリカに渡って成功したKUNIを世の中に紹介しよう!』と思いました」と振り返る。

 伊藤は「実はKUNIのお母さんが亡くなった時に献杯の会をやることになって、『4人ぐらいでお袋を送りたい』とのことだったので、4人くらいならいいかなと思って行ったら40人ぐらいいるんですよ。(笑)静かに送るんじゃないの?みたいな。その時に佐藤監督とは初めて会ったんだよね。」と監督との出会いのエピソードを披露し、「その後番組を作ろうと、企画書とか出さずに予算をかけずに、すぐ結果出そうと。それでレコードのアートワークジャケットを語って、それを編集してやろうと。で11月頃に番組収録を1日で4本撮り終わったところで、佐藤監督とTBSの報道の方が来て、『KUNIちゃんはやはり伊藤さん周りのところなんだよね』っていうから、『そうだけど、なに?』て言ったら、『KUNIのドキュメンタリー撮る』って言われて。それ大丈夫かい!?となったんだけど、だけどやる以上は協力は惜しまないということは約束したんですよ。」と本作に関わるきっかけを述懐。
 
 映画の前半部のインタビュー中心の構成について監督は「映像を使うとなると、あらゆる方の許諾をとらなくてはいけなくて・・・時間的に厳しいのと、予算不足、人不足、とどこにでもある話です。」と製作の苦労をにじませつつも、「構成的に前半はKUNIがアメリカに渡って成し遂げた偉業をまとめて、後半はドキュメンタリーですから彼のありのままの姿を描きたい。それを72分という尺に収めると(インタビューとライブシーンの比率が)そういう作りになるので、この結果になったと思っています。」と回答。
 
また監督は若くして単身アメリカに渡ったKUNIさんについて「この映画は1980年、今でいうと40年前のロサンゼルスが舞台になっているわけで、ネットも携帯もない、今じゃ考えられない時代ですよね。その中でKUNIはアメリカに飛んで行っている。今WBCが話題ですから野球に例えると、野茂選手がアメリカに行かれたのが95年。KUNIはその10年も前からアメリカに一人で旅立っているわけですから、立場は違いますけど、そういった意味ではKUNIはある意味無鉄砲なんだけどすごいやつだな、と思います。」とコメント
 
 伊藤は「すごい人に好かれるっていいことだなと思うよね。KUNIと働いた人の多くは『いい加減なやつ』って言う人も多いんだよ。超いい加減な男ではあるけれど、人に愛される人なんですよ。だからビリー・シーンとかジェフ・スコット・ソートとかエリック・シンガーとか本作のインタビューに応じてくれたのもKUNIの人徳なんじゃないでしょうか。“ミュージシャンとミュージシャン”じゃなく人間として付き合いがあることも、今回の取材に応じてくれたんじゃないかな。やっばりね、愛されたら得だな。」とKUNIさんの魅力について語りました。
 
 監督は「(今回取材ができて)一番うれしかったのはKISSのエリック・シンガーさん。彼は今日日本にいたと思ったら次の日にメキシコにいるような人ですから。そんな方がなんとかスケジュールを駆使して『ここの20分ならいいよ』と取材対応してくれました」とKUNIが一流ミュージシャンたちにいかに愛されているか語る。
 
 KUNIさんのギターテクニックについて聞かれると伊藤は「はっきり言ってKUNIよりうまい人はいます。KUNIはステージで上手いふりするのは上手でしたよ。うまく見せるというのかな。やっぱり存在感なんだと思う。ステージの存在感。KUNIはそういうのがとても上手だったよ。」とKUNIさんのパフォーマンスについて言及。

 またKUNIさんが出したアルバムについて伊藤は「やはりファーストアルバム『マスク』は本当に印象に残っていて。当時はロックの大手メディアが少なかったわけで、口コミで広がっていったんだよね。やっぱり口コミって一番強いんだと思うんだよね。人から人へ伝わることがこうバズっちゃう。KUNIはファーストアルバムでそうなったからね。」と語ると、監督は「アルバムが出た86年、大学生でレコードショップで物色していた時に手の中にKUNIの『マスク』が入っていたんです。ミステリアスなジャケットでジャケ買いしました。(笑)」というエピソード披露。

 最後に監督から「今日、この映画をきっかけにぜひKUNIにもっと関心を持っていただいて、彼が本当にまたギターを持って復活するかどうかちょっと私も分かりませんけれど、ぜひその日を願って応援をしていただければと幸いだと思っております。」とメッセージ。伊藤は「まさかKUNIのドキュメンタリーが皆さんと一緒に楽しめると思っていなかったんですけど、KUNIというギタリスト、人間について、また当時の音楽シーンについていろいろ考えることがあります。本当にいい時代だったと単に振り返るだけでなく、作り手のパッションみたいなものが、今もどこかにあるはずだと思いながら仕事をしていきたいと思います。」と締めくくり、舞台挨拶は終了しました。

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