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長い出張だと思うことにした

【活動90日目】

全隊員帰国させるらしいよ、という噂が数日前から隊員同士のLINEやWhatsAppで飛び交っていたのだけれど、流されたくないのでペルー事務所から連絡が来るまで情報はスルーしていた。
だけど昨夜、事務所から連絡。ついに来てしまった。
JICA海外協力隊の歴史の中でおそらく初めての「全隊員帰国指示」

ペルーは15日に発令された大統領の国家非常事態宣言のため国境閉鎖中で30日まで外に出るのも中に入ることもできない状態。今も、旅行に行ったまま帰ってこられなくて外国の空港で寝泊りしている人がたくさんいる。リマのホルヘチャベス国際空港にも毎日人が押し寄せている。
サッカーの試合でメキシコに行った10歳の男の子たちが帰ってこられなくなっているのが連日ニュースで流れている。今日明日にでもペルーにいるメキシコ人を送って、子どもたちをペルーに戻すための飛行機が飛ぶとか飛ばないとか…
国境閉鎖がスピーディーだったこともあって、意図せず家族と離れ離れになっている人たちがいる状況が続いている。
国内でも、郡をまたいだ移動に制限がかかってしまったため、この間に自分の住んでいるところに戻れなかった人たちもたくさんいるだろう。
そのくらい、大統領令って強いんだなと実感。
だから、私たちもすぐには出られない。非常事態宣言の延長だって考えられるんだし。

そんな状況を毎日ニュースで見ているけれど、私のいるワラスは至って平和(毎日流れてくる感染報告では私のいるアンカシュ州は3/18現在で感染者2名)。
首都では警察の指示に従わない人たちが検挙されていたりするので、基本的には家で大人しく過ごしてくださいという指示が出ている。不用意に街なかをうろうろすると警察の検問にあったりするから、ということらしい。
#YOMEQUEDOENCASA (私は家で過ごします)というハッシュタグが使われているほど。
私もこの二日間は買い物以外で外に出ていない。

家はWI-FIも通っているし、Netflix見放題の快適環境だけれど、やっぱり家に篭っているというのは飽きてくるし、気が滅入ることもある。
唯一の気分転換は家から見えるアンデスの山を見ながらお茶を飲むこと。
唯一と言うにはずいぶん贅沢なことだと思う。首都からバスで8時間半かかるけど、この環境があるから気持ち的にだいぶ助かっていることは間違いない。

それでも、昨日事務所からペルーも例に漏れず帰国することになったと連絡を受けた時はやっぱりショックだった。
一時とはいえ、本当に帰らなくてはいけないんだ、と。何があっても一晩寝ればスッキリできる私だけど、昨日は4時過ぎまで眠れなかった。日本の友人にやるせない気持ちを伝えたりしながら過ごして、ショックを受け止めてもらったらほっとしていくらか眠れた。おかげで今日は朝寝坊、まぁ仕事もないからいいんだけど。

朝ご飯に降りてくるのが遅かったから大家さんに「今日はゆっくりね」と言われた。実は昨日一時帰国の連絡が来て、眠れなかったのだと伝えたら、「どうして?ここは昨日と比べてほとんど変わってないわよ。日本の状況はどうなの?ここよりいいの?それにあなたまだここにきて2ヶ月しか経ってないじゃない。」と。
日本の方が感染者は多くいるし、比較して安全かどうかは微妙だけど、世界中にいる全ての隊員を一時的に日本に戻すことに本部が決めたから、一回帰らなくちゃいけない。そしてこの状況が落ち着いたらまたペルーに戻ってくることになっているけど、それが何ヶ月先になるかは今のところわからない。ペルーはまだ過ごしやすいけれど、アフリカなどでは様々な事情で隊員が過ごすことが難しくなっていることなどを話した。私もできることならここにいたい、でも、私たちに選択権はないから従うしかない。
「あなたたちにとって良い方向に進むようにお祈りするしかないわね」
と空に向かって一緒に手を合わせた。

この状況だと、2ヶ月一緒に活動した同僚や私を暖かく迎え入れてくれた配属先の子どもたちにも直接事情や気持ちを伝えられないままのお別れになってしまう可能性が高い。彼らと最後に会ったのはリマに出張に行く前だったから「また月曜日ね!」「出張気をつけてね!」が最後の言葉。こんなに長い出張になるとは誰も思っていなかったろうな。

帰国するにしても、私はタダで帰れるとは思ってない。
日本を出発する時から遅延トラブルに巻き込まれてアトランタで乗り換えできず、クリスマス直前ですぐにはチケットが取れず、まさかのアトランタ2泊の後にペルー入り。任国に入る前に任国外旅行を経験。しかもこの時の任国外旅行は旅行届を提出しなくてよかったので、楽なものだった(笑)
最終的にJICA事務所に提出したのはアトランタのホテルの領収書だけ。
*協力隊が自分の任地から郡や州、国をまたぐような移動をするときには旅行届を提出しなくてはならない。

このアトランタ乗り換え事件があったから、大きな移動のときにはまた何か起こるんじゃないかと思えて仕方ない。
長い出張なのか、手続きが必要のない任国外旅行に日本へ行くのか。
気持ちは複雑だけど、少しずつ準備を始めるしかない。

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