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“借り物”が多いバーチャル界だけにリスペクトの気持ちは忘れないように―「8番出口」開発者様のポストを受けて―

先日、ゲーム実況界隈で人気のタイトルである「8番出口」を開発されたコタケクリエイト様がXにてこんなポストをしていました。

△コタケクリエイト様のXより引用。

まず初めに注釈をつけておきますと、こちらは「8番出口」及び、その他コタケクリエイト様が開発されたタイトルに関しての話ではありません。同じくゲーム開発者であり、過去には「学校であった怖い話」や「四八(仮)」、等のタイトルを開発している飯島多紀哉様に関しての話題です。

経緯を説明すると、飯島多紀哉様が代表取締役社長であるゲーム開発会社SHANNONの最新タイトル「アパシー殺人クラブ」を、とあるゲーム実況者(名前は伏せておきます)が発売初日から許可なくネタバレありでの配信を行いました。この「アパシー殺人事件」はノベルゲームであり、ゲームのジャンルの中でも特にネタバレについて繊細に扱わなければならないものなのですが、数種類あるというエンディングを全て配信されてしまったそうです。

さらに質の悪いことに、そのゲーム実況者は一応謝罪の言葉を述べましたが、捨てゼリフとして「めっちゃつまらなかったです」などの開発者を煽るような言葉を残しています。結果、この記事を執筆している現在でも尾を引く問題となっており、実況に関するマナー、モラルについて、今一度考えさせられる出来事となりました。

ゲーム実況者と開発者の関係は持ちつ持たれつではない

まず大前提として認識しておきたいのが、ゲーム実況者と開発者は対等な関係では無いということ。最近は「ゲーム実況者が配信することで売り上げが伸びる側面もあるから開発者は感謝すべき」などという意見を目にすることもありますが、これは大きな間違いです。

もちろんその側面もありますが、開発者がゲームを作ってくれなければ実況することはできないというのは当然のこと。実況者は常にリスペクトの気持ちを持って「させていただいている」という感覚を忘れないでほしいです。ここ数年でゲーム開発者からの案件で実況を依頼されるという形も増えているので、それは喜ばしいことなのですが、やはり敬意の気持ちは持っておくべき。これはVtuberに関しても同様です。

バーチャル界は“借り物”で成り立っている

私はバーチャル界を追いかけている者なので、Vtuberへのリスペクトの気持ちも持っています。ただ、誤解を恐れずに言うならば、バーチャル界は借り物で成り立っているというのも確か。

それはゲーム実況に限らず、例えば歌配信も基本的に他のアーティストの曲を歌うことがほとんどでしょうし、そのカラオケ音源も他の方が作ったものを使用していることが多いでしょう。オリジナル曲を出し、自身もアーティストとして活躍しているVtuberさんもどんどん増えていますが、根本にあるのは「他の方の作品を借りて自己を表現する」という、古来ニコニコ動画の流れを汲んだ形です。

それがバーチャル界の根本であるならば、それを受け入れて、権利関係をしっかり把握し、許される範囲外の行為はしないことが重要。時に常識から外れる異端的な行為が面白がられる界隈ではありますが、今回の出来事を受けて、もう一度己を考え直すきっかけにしたいですね。配信者のみならず、リスナーもそれは同じで、配信上でのコメント等、作品に対するリスペクトを持った言動を心がけたいところです。

近年は権利関係はしっかりしている場合がほとんど

といっても、近年はしっかりとした考え方の方が増えていて、Vtuberも企業勢・個人勢に関わらず許諾を取って認められた範囲内でのゲーム実況を行っている場合がほとんどです。これはバーチャル界の歴史が紡がれるにつれてより厳粛な対応がされるようになった印象で、今では新規のVtuber事務所であってもほぼ確実に権利関係をクリアした上での配信を行っています。これはバーチャル界以外の配信者界隈でも同様で、きちんとした考え方の人が増えていることは(例えそれが当然のことであったとしても)評価されるべきことであると思います。

ゲーム開発者側も、実況者側がクリーンになるにつれてゲーム実況案件等の依頼を行うことが増えており、今回のような問題が稀にあるにせよ、健全に近い関係性が出来上がっていると言っていいでしょう。

過去のバーチャル界ではもやもやが残るような出来事も

現在は良好な関係性であるバーチャル界とゲーム開発者ですが、過去には大手Vtuber事務所が無許諾でゲーム実況を行い、結果として関連の動画が大量に削除されるということもありました。

また、収益を認めないゲームタイトルの実況で、その配信後にスーパーチャットありの雑談配信を行い、いわゆる“集金枠”のような行為をしたり、とあるタイトルの実況でラスボスの一歩手前から配信を開始し、開発者から苦言を呈されるという出来事もありました。

それによってバーチャル界はより厳しい目で見られることになり、反面教師として権利関係・モラルやマナーについてもさらに注意深く管理する事務所が増えています。皮肉にも結果としてクリーン化に一役買ったと言えますが、こういった出来事は決して繰り返してはなりません。必要以上に攻撃されることはあってはなりませんが、功績だけでなく失敗例も同じく周知しておくのもある意味で重要かもしれません。

最後に

今回は、コタケクリエイト様のポストを受けて今一度ゲーム実況や歌ってみた、カラオケ配信等について考え直すきっかけになればと思い、このような記事を書きました。

近年ではゲーム実況者に対して好意的な印象を持っているクリエイターさんも多くいて、件のコタケクリエイト様も「誤解されないように言っておくとゲーム実況自体は好き」と語っており、決して実況する行為そのものを否定しているわけではないことは知っておきたいです。

また、歌手のAdoさんが自身の楽曲「唱」の歌ってみたを聴く配信を行ったり、アーティストでも歌ってみたやカラオケ配信等に寛大な姿勢を見せている方が多くいます。この背景には自身も同じく歌ってみたを投稿していた過去があったりと、そういったアーティストが増えていることもあると思いますが、こちらも時代の移り変わりと共に好意的に受け止められることが増えていると言っていいでしょう。

このように、多様な界隈と良好な関係を築けているバーチャル界ですが、根本は“借り物である”という意識は忘れないようにしたい。今回私は「バーチャル界」と「その他ゲーム実況者」と分けて書いていましたが、一般の方からするとその違いは認識されません。今回の出来事でもVtuberを叩く意見が見られたり、一緒くたにされがちです。その為、「自身だけでなく界隈全体に迷惑がかかる」ということは常に肝に銘じておいてほしいです。

バーチャル界の継続的な発展にはゲーム実況や歌ってみた、カラオケ配信等は欠かせない要素だと思うので、これからもリスペクトの気持ちを忘れず、その上で自己を表現していきたいところです。

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