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№4 脱出

真っ暗なトンネルの中を
だるま落としで抜かれたような
力の入らぬ腰で
足だけは動き続けますようにと
泣いちゃだめだ止まっちゃうと
目を閉じたまま
わななく唇の端で
小さく叫びながら走り抜ける
そして
この身が無事だったと
安堵するだけ
繰り返し 繰り返し

時に僕は暗い谷に降りていくしかなかった
底はあったが正気を失いそうだった
引きずり降ろされそうになりながら
蹴散らしながら
壁をつかみ
這い上がることだけが選択肢だった
やり方なんてどうでもよく
何故なんて考えもしなかった

抜け出したあと僕は
そのまま走り続け
絶対に振り向かなかった

僕のしたことはそれだけ
大人になって
神様がくれたといわれたそれが
試練だといわれたそれが
ただの苦しみだったと知った
だけど大人は
「乗り越えろ」って言ったんだ

意味なんてない
今ひとまず生きてる
息が整うまでここにいさせて

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