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医療と制度① 不自由な医療、そこから考える

不自由な医療、そこから考える

 2022年の1年間、「医療の正義」について連載をさせて頂いた。連載を終えてほっとしたところで、医療制度についての新連載のお話を頂いた。不意を突かれて快諾してしまったが、今更このテーマの適時性とその重さに気づき、私はたじろぎを感じている。

 医療は決して自由ではない。法律で医療行為の正否が定められているし、法律に抵触しない範囲のことも様々な医療制度に従って行われなければ保険医療は成立しない。

 1月27日、新型コロナウイルス感染症が5月8日に感染症法の2類相当から5類へ移行する政府方針が発表された。
 私が働く病院は地域の中小病院で、院内に感染症対応の設備や能力は乏しかった。それでも近隣にコロナ対応医療機関がなかったため、行政からの依頼で発熱外来を始め、続いて一般急性期病棟の半分をコロナ病棟へ変換した。今は在宅でもコロナ診療を行っている。医師もスタッフも一から勉強した。得体の知れない新興感染症に対峙することは本当に怖かった。今、コロナ病棟で自信を持って働いているスタッフは、それでも自ら名乗りでてくれた人達だ。

茨城新聞にコロナ病棟開設の記事が掲載された


 コロナ患者と一般の患者を接触させないため、発熱外来は外のプレハブで行っている。換気のために窓は全開で、先日診察室の温度は2℃だった。寒さで電子カルテのキーボードが打てなかった。

小豆畑病院の発熱外来(プレハブ2棟):2020年開始当時に、コロナ診療を行っていることで、周囲から心ない批難を受けた。周りの不安を煽らないように、建物を壁で覆った。


 コロナ第8波の流行期に、当院の療養病棟スタッフの半分以上がコロナに感染し、また、同時に同病棟で院内クラスターが発生した。未感染のスタッフは年末年始を返上し、他の病棟や併設する老人保健施設、在宅部門のスタッフまでが療養病棟に入って、コロナ感染者のゾーニングをしながら全員の治療を行った。スタッフのみんなに本当に頭が下がった。
 このようにして地域のコロナ診療は行われている。法律で5類に変わるからウイルスがおとなしくなるわけではないので、私達の対応は変わらない。今さらインフルエンザと同じように扱えと言われても、おっしゃる方に無理があるとしか言い様がない。それでも、私達は医療制度の中でしか医療ができないのである。私達は、そこから考えなくてはいけない。

 新型コロナだけでも「医療と制度」の関係性が抱える課題は大きく、深い。私がどうしよう、と悩むことはコロナばかりではない。これから1年をかけて私達の悪戦苦闘ぶりを報告していきたい。皆さんが医療について考えるヒントになれば、これほど嬉しいことはない。

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