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タロットカードを言葉に翻訳するため必要なのは?

「タロット歴2年、今までズバっと出してくれたのに最近はうーん、、、という感じが続く」というスランプの方からの質問に答えました。

スランプをどうするかというより、リーディングのムラっけをなくすためには? という話になっちゃったかもしれないですが・・・

タロットでどう宇宙全体を捉えるかが大事、というお話です。


タロットカード→「?」→ことば

先日、twitterで流した画像にいろいろな方が答えてくれました。

「?」のところになにが入りますか?

画像1

なにかを集める人、なにかを作り出す人、直感的に引き出す人・・・いろんな回答があってよいと思います!

自分の場合、「?」に入れるものは「体系」だと考えています。

タロットで宇宙全体を体系的に捉える

タロットが森羅万象を説明できるツールだとすれば、どんな体系に基づいてそれが成り立つのか。宇宙全体をどうタロットで体系的に捉えるか。

自分なりの体系ができてないと、リーディングにムラができてしまいます。いろんなタロットの解説本やデッキがあるけど、それは作者がタロットをどんな体系で捉えているかに沿って書かれているはず。

なぜリーダーの中で体系がないといけないのか?

直訳と意訳

タロットカードを人間の言葉に翻訳するのがリーダーの役割だとします。

翻訳には直訳と意訳がある。直訳は文法と単語の意味に則っているので基本的にはいつどうやって訳しても大きな差は出ません。それはその言語の体系がちゃんと身に付いているから。最終的には意訳するにしても、その前に直訳ができていなければ、翻訳はそのときのフィーリングに頼るものになってしまうでしょう。

リーダーに体系があれば、タロットはその体系に則ってふさわしいカードを出してくれます。カードにはリーダーとコミュニケートしメッセージを伝える意志がある。リーダーのルールに沿って、ちゃんとそのルールで読み解けるカード並びにしてくれるはずです。暗号解読のキーをカードと共有できる。リーダー側に確固たる体系がないとカード側もフィーリングで出るしかなくなり、時と場合によってムラが出てしまう。

体系を持つときポイントになるのが、抽象―具象のスケールをどう移動するのか、という問題。

「宇宙のすべては一つ」か?
「宇宙は無限の事物で溢れている」か?
(あるいは「宇宙は78つのエネルギーで出来ている」?)

森羅万象をたった78枚のカードで表現するには、抽象と具象を行き来する必要があります。

抽象度を最大限まで上げると「宇宙のすべては一つ」に到達します。ここまで行くと「私もあなたも地球も宇宙もタロットもすべて一体」になるので、もはやタロットを使う必要もありません。

でも現実世界の我々の周りには、ほぼ無限に分割された事象があります。私もいるし、Aさんもいるし、バラも椿もあるし、ごはんを食べた喜びもBさんにフラれた悲しみもある。宇宙が無限の分割に近づくほど、抽象から離れ具体的になっていく。

タロットは「宇宙は一つ」よりも、もう少し抽象度を下げて「宇宙のすべては78種類のエネルギーで出来ている」まで世界を分割します。すべてが一体、というところまでは抽象化されていませんが、無限の具体的事象に分割されている訳でもない。

タロットは「私/Aさん/バラ/椿/ごはんを食べた喜び/Bさんにフラれた悲しみ」という具体的な事物・現象を示す言葉を持っていない。だからリーダーはタロットの78分割から、現実の無限分割に向けて抽象―具象のスケールを移動しなければなりません。

抽象―具象を行き来する

抽象―具象スケールの移動に必要とされるのが、リーダーの持っている体系。

例えば数字のロゴスとスートの分類を使って「8は集中、濃密化。カップは感情や共感」という抽象的な役割をカップ8に与えるとします。そこから「感情が濃い、執着、念が強い、逃げ場のない気持ち」みたいなもう少し具体的なキーワードへ移行できる。実際の占いの現場なら、個別のケースに合わせてさらに具体化されていきます。

リーダーが「8は集中」というロゴスを含む体系を持っているから、タロット側も「ああ8は集中していくエネルギーね、わかってるわかってる」とそれに即したカードを出してくれるでしょう。体系があればリーダーとタロットはスムーズに会話ができます。

ただ数秘術の流派によっては8が違う意味を持つこともあるし、数秘とは無関係にタロット体系を持つ人がいてもいい。それならそれで、リーダーが持つ体系に沿ってタロットも合わせてくれるのではと思います。

具体的になりがちなカード解説のキーワード

一般的なタロットの本や、ネットで出てくるカード解説では、抽象度を落とした具体的キーワードがフォーカスされやすい傾向があります。例えば「ロマンスの予兆、友人からの冷たい仕打ち、アルコールやドラッグの乱用」など。そういう抽象度を下げた状態をカードに当てはめてリーディングすると、占いで扱える範囲が狭くなります。

もちろん具体的なキーワードがいけない訳ではなく、抽象的概念と具体的キーワードの間を行き来できなければならない、ということです。この行き来に必要なのが全宇宙をどうやって78のエネルギーで理解するか、という体系なのです。

カード同士の比較で体系を作る

オズヴァルド・ヴィルト著「中世絵師たちのタロット」より引用します。これは4枚組のカードを比較して考察する章の最後の文章です。

タロットを解読するためには、アルカナ同士を比較し、様々な比較と対照が示唆するところを悉く引き出すことが不可欠である。沈思黙考する人は、それぞれの四項から、部厚い論考の材料を引き出すことができる。とはいえ、各人が自分で考えることが必要であり、タロットの研究を真剣に行おうとしている参入者に対し、我々が作業のお膳立てまで行うのは筋違いであろう。

「自分で考える作業をせよ」「カード同士を比較せよ」と言っている訳ですが、この比較の作業が体系を作るために役立ちます。いろんなカード同士をチョイスし「このカードとこのカードの相違点は」と自分で納得できる答えを考え出すことで、より確固たる体系が作られていくでしょう。


今回のスランプ状態の質問者さんは、ある程度経験を積み、占いで扱う範囲が広くなり、これまでの抽象度のスケールでは収まりきれなくなったのでは。より抽象度の高いところまで行ける体系を作る必要がありそうです。


Q「同じリーダーでもデッキの違いで体系は変わるのでしょうか?」

デッキの違いとは基本的には絵の違いでしょう。絵は抽象度の低い具体的なものなので、宇宙の事象すべてを具体的な78枚の絵では描けない。デッキの違いで体系が変わるなら、それは抽象度の低い具体的なレベルでの体系ということになります。

絵は抽象―具象のスケールを移動するとき役立ってくれますが、より抽象度の高いレベルの体系を目指すと、カードの絵だけに頼っていてはついていけなくなりそうです。

抽象度の高い体系がないと汎用性が低くなります。が、もし「恋愛相談専門!」など分野を絞るなら、それに特化した具体的レベルの体系でもいいのかも。

もちろんデッキの絵には作者の思想や体系が込められているから、それを自分の体系を作るために取り入れることもできます。

まとめ

・タロットは全宇宙の無限の事象を78種類のエネルギーに抽象化したもの

・カードのメッセージを現実に落とし込むため、抽象―具象のスケールを行き来する

・リーダーは「全宇宙をどうタロットで捉えるか」の体系を自分なりに作る

・体系がしっかりしていればカードとの意思疎通がうまくいき、リーディングがブレない

ご参考になれば幸いです!


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有料部分にはおまけ「4つのタイプから見るスランプ解決法」を置いておきます。このおまけは「4つのスートから見る、タロットリーダーの4タイプ」の記事のおまけとまったく同じ内容です。どちらかご購入いただいた方はご注意ください!


おまけ「4つのタイプから見るスランプ解決法」

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