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テレワークゆり物語 (161)テレワーク実施率『半減』に物申す!

日本生産性本部が、第13回 働く人の意識調査 を発表した。

この調査の発表を受けて、コロナ5類移行後の調査において「テレワーク実施率が半減」という記事が、メディア各社から出された。

しかし、テレワークの現状を『半減』や『激減』と表現することに、一言申し上げたい。


日本生産性本部の7月調査で、個人のテレワーク実施率15.5%

日本生産性本部は、コロナ禍が始まった2020年5月から、「企業」ではなく、「働く人」を対象に調査を続けてきた。信頼できるデータとして、私も講演などで何度も引用させていただいた。

今回の発表の最新グラフをご覧いただきたい。

第13回 日本生産性本部「働く人の意識調査」調査レポートP16から引用

コロナが5類になってからの最新データとして、2023年7月のテレワーク実施率は、「15.5%」である。

「非常時」の数字と「平常時」の数字を比較をしている

では、「半減」「激減」の比較の対象になっている「31.5%」をみてみよう。

「31.5%」という数字は、2020年5月最初の緊急事態宣言が発令され、企業が在宅勤務を実施しなくてはいけなくなった時期、いわば『非常時の数字』だ。

これに対し、今回の調査における「15.5%」という数字は、コロナが5類になって2か月が経過した2023年7月。いわば『平常時(に近い)の数字』である。

『非常時の数字』と『平常時の数字』の比較にフォーカスが当たり、各種メディアで「半減」が強調されるのは、どうだろうか。

もちろんメディアでは「2020以降」「調査開始以来」という言葉が添えられており、正しく報道されている。
しかし、多くの視聴者・読者が「コロナ収束で、半数もの企業が出社に戻っている」と勘違いしてしまうのは悲しい。

コロナが5類になったことによる変化は「1.3%減」の微減

ちなみに、コロナ5類になる前の2023年1月の「第12回 働く人の意識調査」では、「16.8%」だった。

コロナが5類になった変化とするならば、「1.3%減」の微減に過ぎないのだ。

2020年の最初の緊急事態宣言が解除され、「31.5%」が「20.2%」に激減した以降は、グラフをご覧いただいてわかるように、2021年10月の「22.7%」が最高値で、少し20%を切るぐらいで推移してきたのだ。

二極化が進むテレワーク。しかし、確実に働き方は変化している

長年テレワークを推進、(研究者ではないが)コンサルタントとして企業の現場でテレワークの変化を見てきた私としては、今回の調査結果について、以下のように考えている。

コロナ渦でテレワークを実施してきた企業は、そのメリットとデメリットを体感しつつ、それぞれの企業で方針で「テレワーク」を実施してきた。
実際には「コミュニケーション」や「マネジメント」の問題から、生産性が低下していた企業も少なくない。しかし、テレワークのメリットを実感し、さらにテレワークを進める企業も多い。

今回の調査の結果でわかった、コロナ5類移行を経ても、わずか「1.3%」しか減ってない」という事実は大きい。
日本におけるテレワークという働き方が確実に変わってきているということではないだろうか。

テレワーク実施中の雇用者は、なんと約930万人

以下は、私の最近の講演で、利用している「今のテレワーク状況」を示す図である。

田澤由利の講演資料から

青い矢印は、テレワークの課題を解決できず戻る企業(左方向)と、さまざまな壁を乗り越えテレワークを進める企業(右方向)の二極化が起こっている。

またさらに、「進む企業」の中にも、「出社メインに戻り、テレワークは止めないものの減らす」企業と「どこでも可能なテレワークを目指す」企業の二極化が起こっている。

実は、今回の調査の結果から、私の考えが間違っていないことを確認することができた。これについては、あらためて、説明したい。

コロナ渦で3歩進んで1歩下がった日本のテレワーク

つまり、コロナ前より、2歩も進んだことになる。

また、日本の雇用者は約6000万人。その15.5%は、数字にすると、

テレワークをしている雇用者は、なんと約930万人となる。

コロナ渦を経て、930万人の雇用されている人が、テレワークを実施している。これってすごい数字ではないか。

今後すべきことは、1歩下がった分を取り戻すこと。そして、もう1歩さらに踏み出すこと、ではないだろうか。


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