テレワークゆり物語 (9)23年前のワーケーション
偶然、23年前の「ワーケーション」写真をみつけた。
田澤由利リサーチによると、「ワーケーション」という言葉が日本のマスメディアにはじめて登場したのは、2015年。アメリカではこんな言葉があるよ的な小さな記事だった。その後、少しずつ増えたものの、ブレイクしたのはコロナ禍真っ只中の2020年7月末。当時の菅官房長官の言葉から、露出度が大きく向上した。2019年10月の菅総理大臣の所信表明にも「ワーケーション」という言葉が入っている。
話は前世紀にさかのぼる。1998年の夏。夫の転勤で北海道北見市に転居して、はじめての夏。田澤ファミリーは、毎週末家族5人で北海道のおでかけを楽しんでいた。海、山、湖、川、畑、行くところ、見るところ、食べるもの、会える動物たち、すべてが本州と違う。そして、何より、土日でも渋滞がない。子育てに最高の環境である。
しかし、当時、フリーライターだった私は、原稿の締め切りとの闘いの日々でもあった。明日は、家族でキャンプの予定。でも、原稿が間に合わない。しかし、子どもたちは、楽しみにしている。私も家族と過ごしたい。
よし、キャンプは決行。原稿はキャンプ場で仕上げよう。
家族との時間は目いっぱい遊び、翌朝、キャンプ場で早起きする。家族はまだ寝ている。テントのそばの炊事場で、まだ珍しいノートパソコンを開き、せっせと原稿を書き始める。鳥のさえずりを聞きながら、さわやかな朝の空気の中で、どんどん言葉が出てくる。キーを打つ手も心なしか早く感じる。やった! 終わった!
と、ひと息ついたとき、当時1歳の三女が起きてきた。夫に頼んで撮ってもらったのが、冒頭の写真である。
当時はフリーランスだからできた、働き方、休み方だ。23年の月日が経ち、企業にテレワークが広がり、「ワーケーション」という言葉のもと、社員として働く人も、この「新しい働き方、休み方」が可能になろうとしている。
しかし、「ワーケーション」の推進には、企業、個人、地域、自治体、国と役者が多く、それぞれの目的が交錯し、課題も多いのも現実。
ワーケーションに対して自分に何ができるか悩む中、たまたま見つけたこの写真が、教えてくれた。
ワーケーションの本質は、シンプル。家族も仕事も、両方を大切にしたい人の願いを叶える、働き方&休み方。それを実現するのがテレワーク。
周りに流されず、自分の考えと行動で、「ワーケーション」を適切に実施できるテレワークを推進していこうと思う。