見出し画像

花森安治の仕事/世田谷美術館 -2017.02.12-

『暮しの手帖』で知られる花森安治氏の集大成となる企画展が昨日2月11日(土)から世田谷美術館で開催されたので、早速見てきました。

表紙画の原画や、カットはもとより、中吊り広告のレイアウトや細かい指示まで本人が自ら手がけておられるとは伝説のように聞いて知ってはいましたが、現物を目の当たりにすると、そのクオリティに圧倒されます。特に表紙画の原画が素晴らしい。創刊間もない初期の号のものが特に印象に残っています。素敵なレターヘッドなどもありましたが、これもご本人のデザインでしょう。

1960年代〜1970年代の商品テストでは、耐久性をテストするため、のべ100km以上をベビーカーを実際に押して歩いたという記録映像(一部)など、大変興味深い展示物もあって、今から40年以上前にすでにこのような活動をされていたことに驚愕します。

ユーザビリティに関わっている人間の端くれとして、半世紀前にこのような試みを組織的になされていたことはもっと知られて良いと感じました。晩年には商品テストより社会の矛盾を鋭くえぐる批評に焦点があたり、政治的なポジションで語られることが多くなりがちでした。しかし、ベビーカーを様々な路面で長距離押して歩くとか、扇風機の風がどこまで届くか実際に人間を立たせて確認するなど、日用品の商品テストの重要性や先進性はもっと大きく語られて良いのではないでしょうか。

今回の展示では、第二次世界大戦中の仕事も含まれており、戦時中のポスターでもきちんとセオリーどおり「デザイン」されているのが興味深い点でもありました。そのため、読みやすくわかりやすい。デザインの力で説得されてしまうという訳です。



世界中にある使いにくいユーザーインターフェースの改善・研究のために、ご支援をお願いします。