Cigarstory4

「那珂湊の街角で携帯灰皿片手のハイライト」
 
なんてことのない海の街。
夜の冴えわたる空気。
あたしはこの街で育った。
隣街にはそこそこ有名な水族館があって、この街には公園がある。
 
なんだかんだ、公園では学生達がデートしていたな。
あたしはなんだか子供みたいだなあって彼氏できてもしなかったけど、
昔ながらの良い街だからきっとそんなもんだねって心で思ってた。
 
まああたしも20年生きていて彼氏出来たの一回くらいしかないんだけど、それも顔はいいけど、常にお母さんと一緒にいなきゃいけない、マザコン男、はじめてのデートにもお母さんがついてきたのですぐ縁切っちゃった。
 
高校時代の話。
それからはなんだか友達と話す方が楽しかった。
ちょっと中性的で胸もそんなに大きい感じじゃなかったから。
はじめてのキスは女の子が好きな女の子にキスをされた。
別にそんな人もいるんだなあっておもってたし、あたしは恋愛対象が異性だったから、そのまま友達でいた。
 
どうしても男を好きでいられない女の子もいるし、その子はいつも何かに反抗していた。
いつも補導されていて、その理由がいつもハイライト。
 
いつの間にかその子はいじめはなかったけど、仲間外れにされていた。
女の子を好きでいることがどうにも仲間達には合わなかったみたい。
あたしは面倒な事をするから一言いったら気づけばあたしも仲間外れにされた。
 
つまらないなあと思った。この世界はきっと多くの恋を知らない女の子達には伝わる事も伝える事もきっとおぼつかないんだなあとおもった。
 
男子同士の恋愛もあるし、女の子同士の恋愛もある。男子同士の体の関係をみたくない男子もいれば女の子いるし、女の子同士の体の関係をみたくない女子もいれば男子もいる。
多様性の時代のはずなのに、違うというだけで受け入れない世の中はつまらないなあと思うし、かといってあたしには変えようのない世界だからなあともおもったし、心から変革を願う人達はすごいとおもうよ。
 
言葉一つで世界は変わるという事も見つけた人もいるし、あたしは結局退屈なまま、この街にいるだけだけど、高校卒業して内定とって水戸の会社の事務員やって親元で少しのお金をいれて、なんてことのない毎日を過ごしている。
 
まあ両親は離婚したから少しばかり裕福ではないかもしれないけど、母親とは仲はいいし、休みの日は那珂湊のお魚市場でランチくらいはしてる。
 
母親はそこそこ苦労してあたしを育ててくれたからたまの贅沢で連れてくけど、人込みが苦手なのでご飯を食べたらさっさと帰る。
 
ちなみに女の子が好きなあの子はこの街で居場所を見つけられずに都会にいった。
風の噂では男装Barみたいな所に務めているらしいけど。
 
別に女の子のままで女の子が好きならばわざわざ男に扮してまでと思ったけど、それはそれであの子には大事だったんだろう。
 
あたしは何故かその子が吸っていたハイライトを20になってから吸い始めた。
煙草なんて体に悪いなあとは思ったし、これから煙草も高くなるし、でもそれでもこの世界の居場所を見つけようとなんだかんだ抗ってたと思うあたしの初キスを奪ったあの子の事は忘れないでやろうと吸ってみるわけである。
 
何てことのない日常はきっと大事だし当たり前ではないけれど、好きという感情が一般的でないとみられるならきっとそれは重荷になるのかもしれないね。
 
あたしには父親はいないけど、母親という見守ってくれる存在はいたし、大切な事は色々教わったけど、好きな子が同性だったあの子は一人で考えていたんだろうか?親には相談できたのかな?
 
あたしは別になんとも思わなかったけど、あの子が女の子を好きと知った瞬間の好奇の目線、すごくやだったな。
 
あたしだったら出来たけど、誰かと合わせることでしか生きれない人達はきっと難しいんだろうね。
 
あたしは元彼があんなだったからあれだけど、きっと恋や愛は素敵なものだろうし、ハイライトのような苦みあるようなもんでもないだろうし、まあ苦いのもあるんだろうけど。
 
あたしはあたしの世界が緩やかにあればいいとおもっているし、誰かを救おうなんてしないし、20になった今を存分に謳歌してやろうと思うので、誰かを思いやるなんてそんな事はないけれど、30代後半になって生きる事を苦しんでるおじさんも知り合いにいるので、まあその人はそれなりに病気や障害やら苦労があって色々選択しているわけだし、責めたりはしないけども。
 
20のうちに誰かのために悩むなんてことはしないでもいいなあと個人的には思っている。結局の所選択は自分自身にしか選べないし、自分の内在的な性を決めるのも自分だし、ハッピーになるのは結局自分なので。
 
あたしはあたしのできる仕事と嗜好品の煙草を吸いながら、大好きなお酒をのみつつアニメとゲームに時間を費やし干物女子をしてればいいんですよ。
 
あ、でも美容品はきちんとそろえてお肌ケアもしているし、ちゃんと料理や家事もしてますからご心配せずにうふふ。
 
後はゲーオタ彼氏がいれば完璧だなあという感じですね。
女だから煙草吸ってるなんて笑う奴は論外だけど。
 
正直な話、男は男で出来る事やって女は女が出来ることやってという話でいいとおもうんですよ、それに性別なんて関係なくて好きな人が好きでいいじゃない。
 
なんで好きな人が同性ってだけであんなに好奇の目線を出せるのか、あたしは異性が恋愛対象だけども、刺青いれてるひとだってさ、優しい人いっぱいいるじゃない。
 
見た目であんたらは逐一なんか偏見もつのかと。
 
まあ当事者じゃないからわからないから仕方ないよねーしか言えないけど、それなのにその人達の想いを護ろうとかなんでいうのかと、わからないなんて当たり前だしきれいごとじゃないでしょうにーとあたしは思うわけですよ。
 
あたしの名前なんて猪狩誠ですよ?女なのに!しかも胸ないからはじめは男としかみれなかった!!まあ最近になってCカップになったし、なんか医者が言うには今になってなんか胸の大きくなるなにかが活発化しだしたとか言われてなんなんだーってかんじですけどね!
 
最近セクハラ部長に「誠ちゃん色っぽくなったねえ!ゲハハ」なんて言われましたがね!
酒まずくなる顔ちらちらみせんな!!バーコードがよおおおおおお!!!
 
 
いけないこれも差別ですね、ダメですダメですよー。
もうね、茨城の日本酒開けちゃうんだから!
日本酒と煙草も美味しいよねえー。
スパスパして四箱くらいハイライト吸ったら母親にスナギツネの顔されたけど、
うちの母親なまじ美人だから圧がすごいんだよね!!
 
しかも名前が乙女、あたしよりキラキラネームってはなしよね!!
それ言うと嫌いなピーマン出されるから言わないけど。
 
まあ簡単に言うと皆ハッピーになるためには適度に干渉しあわず、そんなもんでいいんじゃないのって感じだけどね。
 
あたしも含めてだけど大切だとおもったひとに過干渉起こしたり、自分の正義を押し付ける人が多すぎんのよ。
 
障害あろうがなかろうが、誰かを好きになろうがなるまいが、目の前の現実を頑張るしかないから、それでいいじゃないって感じよね。
 
あたしもなんだかんだ給料日の時に新作ゲームとお酒買いすぎるのまじやめないと、貯金できないし、女は楽でいいよねえーとかいう男子はマジ滅べと思うし、お前ら生理の辛さと化粧品の価格の辛さを知ってから言え?マジで?化粧男子が最近増えたし美容の知識も増えたけど、お前ら女子の大変さまだまだだかんな!!って最近弟にも言いました。
 
高一のくそ生意気なそこそこイケメンの弟が、あたしに「姉ちゃんは色々できていいよなあ、めんどくせえ事男任せだもん」とそんな事言いましたのでとりあえず死なない程度にぶっとばしときました。ちゃんと後遺症が残らない安全な行為なので問題はないです。
離婚した父親が整体師してたので学生時代それなりに安全な整体の仕方を教わり、その応用です。
 
そんな父親はギャンブル狂でパチンコでお小遣いを擦切り、生活費にも手を出しそうになったので母親にジャイアントスイングたたき込まれ罵詈雑言をされて実家にたたき出され、何どこの修羅の人って感じです。
 
まあうちのお母さま元々は福岡の出身で若い時はそれなりに圧の強い職業をしてました。ちなみに140センチでのほほんとした優し気なお母さまです、はい、ちなみにあたしは170センチ、部活は帰宅部でしたが、なんだかんだ運動部に助っ人で入ってました、はい。
 
ちなみに弟は猪狩健介といいます、高一の育ちざかり、部活は剣道部です、そこそこイケメンでそこそこもてますが好きな女の子に告白できず中学を卒業したへたれです。
 
いじるとものすごく泣くのでさすがにお姉さんはいじりません、代わりにハイライトの煙草を吹き付けて笑ってやります。思い切り怒り出しますがそこは通信教育で習ったり、お母さまから習った護身術でひねりあげます。
 
ちなみにお隣の警察勤務のお兄さんから虐待ではなくスキンシップと判断されてるので問題ありません。
 
まあ弟にもなんだかんだお小遣い一万あげてるしね、こつこつ貯めてるみたいだし、お父さんの浪費癖は遺伝しなくてよかったねえーって感じよね。
 
まあ家族の話になったけど、女の子が好きだったあの子とはこの前久し振りにこの街で会って連絡先交換したし、彼女もできたみたいだし、相変わらず女の子として女の子が好きみたいだけど。まあなんかあたしが言うのもなんだけど、子供作るだけが人生じゃないと思うし、同性で子供を育てるなんて生活してるひともいるだろうし、いいんじゃないかなあっておもうのよ。
 
 
あたしだってゲーオタ彼氏欲しいっていっても趣味の合わないゲームならきっと友達止まりだろうしさ、仮にあの子が女の子好きではなく普通と言われる男子が好きだとしてもあたしに話しかけてくれるなら話すし、友達になりたいっていうなら友達になるし、きっとそれくらいの価値観でいいのよ、あたしはこう思うだけの話だけど、一般性は必要かもしれないけど、必ずしも自分の価値観や考えだけど誰かと話そうとかはしないでもいいかもね。根底が違えば話は合わないし、年齢差においてもずれはあるし、誰かれかまわず受け入れたらきっと自分がなくなってしまうから。
 
あたしはあたしとしてあの子を忘れたくなかったという気持ちがあってハイライトを吸い始めた。でも今ではあたしにとってなくてはならないもの。マナーを守れば吸ってもいいと思っている。まあ今の世の中は吸う人にとっては吸いづらい世の中だし、20という大人になった時点で煙草をはじめるのは問題ないけどもったいない事かもしれないね。
 
 
でも思い出とかそういうのも含めて感傷も含めて吸うのならいいかなあってね。
世の中に疑問をもつのもいいし、疑問を思った時に質問するのもいいけど、そこに望む答えは必ずあるとは限らないから、あたしはあたしの居心地のいい場所や考えを持つようにしてるかな。
 
わかってなんてきっと叶わないしわかるなんて事はできない。寄り添うことや考える事はできても、異性が好きなあたしは同性が好きなあの子の気持ちなんてわからないもの。
そんな価値観もあるのねって頷くぐらいしかない。
 
かといって好奇の目線を嫌だからといってその人達には何かは言うけどやめてなんてきっと言わない。だってそれがその人達の価値観だから、仮に差別や区別だといっても、根底から違うと思っているものに関して変えさせるのは難しいし、ならば離れるか、きちんと寄り添える人といるべきだと思うから。
 
年を重ねてそういうものだと受け入れられる人もいれば年若いからこそ無邪気に否定する人もいる。疑問は必ずしも解答を得られるものでもないから、寧ろ疑問が深まる事で否定も産まれるという事も考えるといいかもしれないね。
 
あたしはあたしでこう思うだけできっと他の方には色んな意見があるから、あたしはこの考えを押し通すつもりもないし、煙草がキライな嫌煙家もいる事も知っているから、ならばお互いの領域を大切にしてぶつからない風にするだけ。
 
寧ろ違う事や相手が言い返さないと思って大多数の人と好奇の目線や好き勝手な言葉を使うのは好きじゃないし、やってしまって反省している人とは話すけど、反省すら気づかない人とはあたしは話さないし、寧ろ煙草一本の時間で煙にまくわね。
 
まあ好きに生きればいいのよ、あたしはとりあえず日本酒やビールを飲んでハイライト吸って、ゲームしながらオタ活できてたらいいわ、コミケいくまでのオタクではないけど、浅く広く寛げてたらそれでいい。
 
皆は居場所に名前をつけすぎて本来の場所を忘れるくらい誰かを批判したり否定したりするよね、疲れないのかしらね。
 
まあ誠ちゃんは別に誰かに好かれようとも嫌われようともしないので勝手にどうぞですけどねー。というわけであたしはおうちに帰ってゴロゴロします。
 
那珂湊って結構狭い街だから煙草吸いながら脳内で話してると目立つのよね。
 
やばっ、あの人近所の矢島さんだ。
 
じゃまたねえー

発達障害当事者の詩人が色々と経験しながら生きていくかんじです。興味あれば支援してくださるとありがたいです