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マネージャー見習い視点でのHigh Output Management書評

先日、Intel元会長の故アンドルー・グローブ氏の名著"High Out Put Managament"を読みました。

その中から特に心に残った・参考になった箇所についてnoteにまとめたいと思います。

著者について(Amazonより)

アンドリュー・S・グローブ(Andrew S. Grove)
1936年ハンガリーのブタペスト生まれ。1956年にハンガリーからアメリカに移住。
ニューヨーク州立大学を主席で卒業(化学工学)し、カリフォルニア大学で博士号取得。
インテル社の創設に参画し、第1号の社員となる。79年社長に就任。97年にはタイム誌の今年の人に選ばれた。
98年にはインテルのCEOを辞任し、2004年には会長から退いた。スタンフォード大学経営大学院で24年にわたって指導した。2016年3月に死去。

Who Am I

都内のWeb系PR会社でWeb広告のコンサル・Webサイト制作のディレクションを生業にしている28歳です。上記の仕事以外にSNSコンサルやSNS用の写真撮影、ライティングなどもたまに担当しています。大学院を経て現職なのでいい年して社会人4年目です。

役職としては、チームリーダー(チームメンバーは自身を含めて9名)、直結する仕事での部下は1名という体制で日々働いています。マネージャー見習いみたいなポジションです。

My Mission

今、自身の役割として考えているミッションは2つです。

①チームの生産性向上

より生産性の高いチーム作りを出来るようチーム内の業務最適化やノウハウの共有、勉強会の開催などを行っています。また、自身の上司と他チームのリーダーと事業部をどうするべきか、何がボトルネックかについて日々考え、動いています。

②会社全体の売上向上

自身の所属するチーム以外に対しても顧客の満足度・会社の利益を伸ばすことを目的にアウトプットすることを心がけています。営業のメンバーへのナレッジ共有や勉強会の開催など。その他、新しい商品の売り方や新しい広告プランなどを提案し、営業のメンバーとディスカッションした上で顧客に提案するなどをしています。こちらはプレイヤーとしての役割の側面が大きいです。

以下から書評です。

マネージャーの仕事とは

本書で述べられているマネージャーの仕事は至極シンプルです。自身の部下の生産性を最大限に引き上げることです。その為にマネージャーが考えるべきこと・するべきことが一冊にまとまったのが本書"High Out Put Managament"です。

生産性とは

本書では、朝食工場を例に生産性の概念を説いています。

朝食工場に求められるアウトプットは以下です。

上記をより短い時間で的確に作り出し、より多くの顧客に提供できるかが朝食工場においての生産性になります。そして、それをどう最大化できるかがマネージャーの役割です。

私の立場ですと、いかに質の高いWebサイトや制作物をいかに早く・的確に納品できるかのマネジメントを行うことが仕事となります。

生産性向上を図るうえで考えるべきインディケーター(指標)

生産性向上をマネージャーが考える上ではインディケーターを決める必要があります。例えば、営業のマネージャーであればテレアポからの引き上げ率、アポイントメントからの受注率などです。マネージャーの仕事は適切なインディケーターを考え、細分化し、ボトルネックを特定した上で改善を図ることです。

マネージャーが行動するべき上で考えるべきレバレッジ

マネージャーが行動する上ではレバレッジ(テコ作用)を考える必要があります。その行動をする上で副作用的にどれだけの改善が図れるのかということです。

レバレッジの高い行動とは?

①大勢の人に影響がある行動をするパターン

極端な例:社内の体制の変更など

②ある人の長期間の活動が特定のマネージャーの言葉や行動に影響されるパターン

例:個人が査定では見えていなかったところで努力していることへの評価

③ユニークな知識や情報を提供する個人によって組織に大きな影響を与えるパターン

例:部下の新しいアイデアを積極的に採用するなど

レバレッジの高い行動は表裏一体

上記の行動は良い影響を与える可能性もある一方で間違った判断をしてしまうと組織全体の生産性を大きく下げてしまう可能性もあります。その見極めを的確に行い責任を持つのがマネージャーの仕事です。

テコ作用の高い行動を見極めるには。ミーティングの重要性

本書では、一部のビジネス書では軽視されているミーティングの重要性を説いています。本書で登場するミーティングは以下の3つに分けられます。

①1on1 Meeting

部下一人一人と定期的に設けるミーティングです。各部下から現状の業務での課題や考えていることなどを聞き出すことがこのミーティングの目的になります。本書では、ミーティングのアウトラインを決め、メモを取りながら進めることを推奨しています。レバレッジの②や③の行動はこのミーティングから浮かび上がってくるのだろうなと読んでいて感じました。

②スタッフミーティング

言葉の通り、自身の部下全員を集めて行うミーティングのことを示します。チーム全体の協調性を向上させることなどがこのミーティングの目的です。スタッフミーティングは、自由にブレストさせるのではなくアウトラインをある程度決めた上で自由討論することを推奨しています。

私自身も週に一度自身がリーダーを務めるチームのミーティングを行っていますが、本書を読んでから決めたアジェンダ以外に持ち回りで業界に関する動向などについて議論する場を導入しました。その効果はまだ大きくは出ていませんが、各スタッフが自社及び自身のチームの立ち位置を考えて、この先どう行動するべきかを考えるきっかけになったと感じています。

③業務検討会

自部門以外の間接部門を交えたミーティングのことを示します。例えば、私の会社で言えば営業部門と私の所属する制作部門を交えたミーティングを示します。他部門も交えることで、他部門の行動が自部門にとっていかにプラスになっているか、マイナスになっているかが浮き彫りになることや双方で情報交換を出来るメリットがあります。

部下をどうコントロールするか

話は少し変わり、部下をどうコントロールするかの話になります。

部下のコントロールにあたり、本書では行動をコントロールする力を3つ挙げています。

①自由市場原理の力

買い手はとにかく安く買いたい、売り手はとにかく高く売りたいという普遍的な市場の原理のことです。これは労働力においても共通です。しかし、一般的な物と異なる点として、業務が複雑になればなるほど労働力を評価することは難しくなります。

②契約上の義務

会社と部下が業務契約をする上で守るべき規則・行動指針などのことを示します。

③文化的価値

会社として掲げているビジョンに共感できているか、各メンバーがお互いに信頼できているかなどのことを示します。

部下の状況に応じてをどの力を用いてコントロールするべきかが変わってくるというのが本書の主張です。そして、それを考えるにあたって登場する指標がCUA要因です。

Cは複雑さ(Complexity)、Uは不確実さ(Uncertainity)、Aは不明確さ(Ambiguity)のことです。

例えば、個人がグループの利益のために働きたいと考えており、携わっている業務の複雑性が高い場合は、文化的価値を用いたコントロールが重要になります。まだ、市場が無く新たに市場を切り開こうとしているベンチャー企業などはまさにこのマネジメントが適正になるのではないかと思います。ベンチャー企業に給与を下げてでも転職してくる人も多いと聞きますので納得です。

逆に個人の利益を重視しており、CUA要因が低いケースは市場の原理に委ねることが有効とされています。CUA要因が低い極端な例を挙げると、コンビニのレジ打ちなどの単純作業でしょうか。CUA要因が低い業務は各個人のアウトプットがわかりやすいので給与という形での交渉が働きやすいです。

マネージャーの仕事は、1on1などで個人のモチベーションを把握しつつ、市場の動向をキャッチアップし適切な力で部下をコントロールすることであると言えます。

部下のモチベーションの管理

部下のモチベーションを上げるにはどうすればいいのか。本書では、部下が仕事をしない要因を以下の2つに定義づけています。

①能力の欠如

②意欲の欠如

上記を定義した上でマネージャーの仕事は、「訓練」と「動機づけ」であるとされています。

マズローの5大欲求

モチベーションを上げる上で、各プレイヤーの欲求を把握することが重要と本書では述べています。

①生理的欲求

生活必需品を購入することができる金銭的な対価

②安定/安全

①が奪われることは無いという安心感。

例:会社が安定しており、路頭に迷う心配をしなくていい状態

③親和/帰属

価値観の合う仲間と共におり、所属できる場所があることへの欲求。

④尊敬/ 承認

そのコミュニティの中で更に認められ、尊敬されたいという欲求。例:会社の中でマネージャーになりたいなど。

⑤自己実現

自身のできる能力を最大限に活かし、最善を尽くしたいという欲求

プレイヤーのモチベーションを上げる上で最も原始的な方法は、金銭でのコントロールとされています。馬にとっての人参と同様です。ですが、人はあるラインを超えると金銭的報酬だけでは満足しなくなり、より高度の欲求を求めるようになります。ダイヤモンドの記事で「年収800万円を超えると幸福度は上昇しなくなる」という記事がありましたがまさにこのことだと思います。よって、部下の置かれている状況を踏まえて欲求を理解し、適切な処置を行うことがマネージャーの役割といえます。

部下をどう教育するか

次の課題は、部下をどう教育するかです。部下の教育にあたっては、部下の状況を把握することが重要とされており、その際に考えるべき指標として挙げられているのが、タスク関連習熟度(TRM)です。

TRMの高低によってマネジメントのスタイルは大きく変わります。また、一定の業務においてはTRMが高い部下の場合でも別の業務になるとTRMが著しく下がるというケースもあります。以下がそれぞれのケースに応じてするべきこととされています。

【TRM-低】明確な仕組み、構造、何を、いつ、どうするかを教える

【TRM-中】インタラクティブなコミュニケーション、支持、お互いの意見を尊重する

【TRM-高】マネージャーの関与を最小限に。目標を設定し、モニターする

私自身のケースですと、自身の直属の業務に関して部下が1名いますが未経験の状態で私の下についたのでTRMが低いと考えられます。よって、日々何をするべきなのか、何が目的でどう構造化して考えるべきなのかを教えています。

以上、"High Out Put Managament"のまとめでした。

この他の項目として人事査定についてや面接についての項目がありますが、長くなるのでまたの機会にしようと思います。

「マネージャー見習い」として本書を読んで感じたこと


個別化の重要性

本が変わって、ストレングス・ファインダーの話になりますがマネージャーに求められる力として個別化の志向が重要だと感じました。

部下=こういった存在、今の新卒=こういった考え と決めつけることなく、それぞれのモチベーションや置かれている状況を考えた上で適切な処置を行うことがマネージャーの役割だと思います。

ちなみに私のストレングス・ファインダーの結果は以下です。

①着想 ②戦略性 ③個別化 ④未来志向 ⑤最上志向


マネージャーの仕事を勘違いしている人が多い

マネージャー=進捗管理をする人やマネージャー=教育担当といった認識の役職者が多いのではないかと感じました。より部下の深い内面と向き合い、仕事において抱えている課題の解決を図ってあげることが求められているなと。全てのマネージャー(特に昭和式のガン詰めのマネジメントしかできないおっさんなど)は、この本を読んだ方が良いのではないかと思いました。

ちなみに、特に営業の場合ですが、優秀なプレイヤーをマネージャーに引き上げると上記のような問題が起き、最悪のマネージャーになるケースが頻発するそうです。自身の経験のみを絶対視して部下に合った方法を教える発想が無いからです。

マネージャーと部下との関係と対人の関係は切り離して考えるべき

これは当然のことですが、中のいい人(部下)でも仕事のパフォーマンスにおいては課題を抱えているケースも多いです。友人・仲間としての贔屓目は捨て1人のプレイヤーに対する評価・マネジメントを行う必要があると感じました。嫌われる勇気も時には重要ですね。

マネージャーは孤独だからこそGO OUT思考で

マネージャーとしてランクが上がれば上がるほど、ピラミッドの上に登っていくので同じランクに属する人、同じ目線で話せる相手は少なくなっていきます。部下と同じ目線で同調して話してしまうと部下の視野が上がることの妨げになってしまうので、どうしても部下にとって耳の痛いことを話さなければならない機会も増えます。

よって、相対的に孤独を感じる機会が増えていくのではないかと思います。そこで取るべき行動は、社外の同じ立場に置かれている仲間を増やすことだと本書を読んで感じました。実際、ベンチャーの経営者などが横で強い繋がりを持っているのは同じレイヤーで話せるのが経営者だけだからだと思います。幸いにもTwitterで同じような仕事をしている同世代と繋がっているのでこの繋がりを大切にしていきたいです。

マネージャーと言えども視点を変えれば部下である

"High Out Put Managament"は、マネージャーに向けて書かれた本ですが、マネージャーの多くはマネージャーであると同時に部下でもあります。(社長でない限りはきっとそうですよね…?)

この本を読むとマネージャーとして、どう立ち振る舞うべきかばかりを気にしてしまいますが、部下として自身がどう立ち回るべきかを考える上でも気付きを得られる本だと感じました。また、部下の欲求を気にかけてばかりで自身の欲求を達成できないケースも恐らくあるのでそこについては上手くバランスを取る必要がありそうです。

ノウハウ・マネージャーの重要性

この本で一番重要だと思った割に初めて書く概念になりますが、ノウハウマネージャーの重要性を改めて感じました。ノウハウ・マネージャーとは、役職や権限を持っていないもののユニークな知識やアウトプット力に長けており、他のプレイヤーに大きな影響を及ぼしうる人のことです。私自身も今の時点ではノウハウ・マネージャーとしての役割が大きいです。

ノウハウ・マネージャーが重要な理由としては、1人居るだけでレバレッジ効果が大きくなることです。つまり良いマネージャーの仕事とは自分の傀儡として働いてくれるノウハウ・マネージャーが育つようなマネジメントをすることだと思います。私の場合は、好きだから勝手にやっているだけなのですが、もし今後正式にマネージャーになることがあれば、自身の経験を元にノウハウ・マネージャーとなりうる人の能力を高めていくということが重要な仕事の一つになると感じました。

2ランクアップの思考

数ある会社の行動指針の中で特に好きなものとしてDeNA社のDeNA Qualityという指針があります。その中で特に好きなものが2ランクアップという考え方なのですが、本書を読んでこの考え方がより好きになりました。上司の立場ならどう考えるだろうか。を常に逆算的に考えて行動するとさらなる高みを目指せるという行動指針なのですが、"High Out Put Managament"はそのきっかけになる本だと思いました。立場に関わらず一度読むとマネージャーの仕事の理解に繋がると思います。

最後に

マネージャー見習いという立場で読みましたが、非常に学ぶことの多い本でした。ちなみに読む上でなかなかにしんどさを感じるパートも多かったですがこうやって読み終えた後にまとめてみると納得感のあるわかりやすい内容だったなと思います。不思議です。

今後レイヤーが上がったら再度読み返して良いマネージャーになれるよう頑張っていきたいと思います。

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