会社の利益は役員報酬で減らすべき?
こんにちは、税理士の宮崎と申します。
このブログでは私が税理士として顧客の方から聞かれた「これってどうなの?」という疑問、質問に「平たい言葉でわかりやすく」をモットーに答えていきたいと思います。
初投稿のテーマは「会社の利益は役員報酬で減らすべき?」
顧問先のお客様からも事業が好調の方からは、会社で利益を出して法人税を払うのか、役員報酬などで個人へ支払った方がいいのか、よくご質問をいただきます。
やはりみなさん税金を払わないでいいなら払いたくない、そんな思いもありますよね。今回は事例を見ながら説明してまります。
内容理解を重視するため細かい部分は端折って説明しますのでこれからビジネスを始める方、ご自身にかかる税金の全体像を簡単に理解したい、そんな方におすすめの内容です。
(1)会社にかかる税金 法人税等
まずはどのように法人税を計算するか、実際の法人の決算書を見ながらご説明してまいります。
とある通販会社の決算書をサンプルにしていきます。
こちらは損益計算書と呼ばれ会社の収支の状況を表す書類になります。上から見ていきますと
まずは本業の売上から仕入を控除して「売上総利益」
そこから給与や家賃などの諸々の経費(販売費及び一般管理費)を差し引いたものを「営業利益」
そこに受け取った銀行利息、支払った利息を加味して「経常利益」
最後に臨時の利益・損失を加味して「税引前当期純利益」
こんな形で1年間の利益が計算されていきます。
税金はこの「税引前当期純利益」を基に計算していきます。
法人税等の中には、
・税務署に支払う法人税
・都道府県税事務所に支払う法人都民税、事業税
・市区町村に支払う法人市民税
があります。自治体により税率なども異なりますが、上記3箇所へ支払うものの税率を大雑把に合計しますと
0-400万円の利益 約22%
400-800万円の利益 約24%
800万円-の利益 約38% (急に税率アップ)
この税率が「税引前当期純利益」にかかってきます。A通販の事例で税引前当期純利益が750万円の場合であれば
0-400万円の利益 400万円×22%=88万円
400-800万円の利益 350万円×24%=84万円
赤字の場合でも一律に払う均等割 7万円
支払う法人税等 179万円という要領です。(正確にはもう少し細かい計算がありますがイメージはこんな感じです)
やはり800万円以下の比較的税率が低くかかる利益であっても約1/4くらいは国庫へ税金で支払うようなイメージを持っておくといいかもしれません。
(2)役員報酬にかかる税金 所得税・住民税・社会保険料
今度は役員報酬にかかる税金を見ていきたいと思います。
A通販の甲社長の確定申告書を見てみましょう。
社長は法人から年収960万円を受け取っています。
所得税というのは年収にそのままかかるわけではなく、
給与額 △ 給与所得控除 △ 所得控除 =課税される所得金額
というような形で計算されます。
〇給与所得控除
サラリーマンでも引くことのできる概算経費です。細かい計算式は割愛しますが、
年収400万の人 概算経費124万円
年収600万の人 概算経費164万円
年収850万の人 概算経費195万円(ここが上限)
年収に応じ徐々に増加していき、概算経費が195万円に達すると上限になりこれ以上は増えなくなるので、今回のケースでは年収960万円の甲社長は上限金額の195万円を引くことができます。
〇所得控除
給与から天引きされる社会保険料や自身でかけている生命保険料、医療費控除など各項目を、もらった給与から差し引いていくことができます。
さて、給与から「給与所得控除」「所得控除」をそれぞれ差し引くと確定申告書の右上の欄、「課税される所得金額」の計算がされます。
こちらに所得税の税率がかかります。
税率はそれぞれ下図の通りです。
これは日本の所得税の特徴ですが、累進税率と呼ばれ稼ぎが多くなれば多くなるほど高い税率で課税されます。
今回甲社長は課税所得554万円なので所得税の税率は20%
554万円×20%△控除額42万円= 甲社長の所得税 68万円
こんな具合で所得税額が計算されます。
ここまで見てきますと
法人税は高い部分で24%
所得税は高い部分で20%
こう見ると所得税の方が低税率なので「役員報酬として給与でもらうのがお得」となりそうです。
しかし忘れてはいけないのが、役員報酬には所得税以外にも個人住民税と社会保険料(健康保険+厚生年金)がかかります。
住民税 :課税所得に対して一律10%
社会保険料:給与額面に対して本人負担約14%、会社負担14%
これらも加味すると
所得税 20% + 住民税 10% + 社会保険料本人負担 14% =44%
こう見ると個人へ給与で年間960万円払いだすと、所得の高い部分には実に44%もの税率がかかっていることがわかります(さらにこの他会社負担の社会保険料14%が別途かかります)。
法人税は高くても利益の38%までしかかかりませんので、今回の事例であれば所得税(+住民税、社会保険料)の税負担の方が重いとの結論になるかと思います。
(3)まとめ
いかがでしょう?おそらく役員報酬の負担が大きいと感じた方も多いと思います。
私も数多くの顧問先をご支援する中でこの問題はよくご相談を受けますが、会社で利益を出して税金を払うことを嫌うあまりに、かえって役員報酬を高くし過ぎて損をする方も少なくありません。
また税負担の比較だけでなく、会社で利益を出していくということは
・銀行からの借り入れがしやすくなる
・会社内に内部留保が増えていくので成長につながる
などのメリットもあります。
ぜひ経営者のみなさんも現在のご自身の会社の状況、役員報酬額をみてよいバランスになっているか確認してみてください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?