悲しみの譲り合いと流し。
7/14。曇り時々雨。
青タンまではボチボチだった。21時半の段階で38,000円売上。目標は30,000円なのでここまではまぁ良かった。
しかし、途中で心がへし折られる事件が起きた。私がよく使っている某乗り場に向かうと、タクシーが枯渇していた。実際にお客様は長蛇の列。
「ラッキー😁すぐ乗せられる😁😁」
なんて思っていたのが甘かった。乗り場に到着し、ドアを開けると、なんと先頭の組から3組目くらいまでが譲り合いが始まり、一向に乗車しないのだ。
おそらく、皆車内が広々とし快適なJPNタクシーに乗りたいのだろう。同じ値段ならそう考えるのが普通であり、誰が狭いコンフォートに乗りたいだろうか。笑いと悲しみの気持ちが同時に襲いかかってきた。こんなことは久々だ。
2〜3分経った後だろうか。先頭に並んでいたカップルが根負けして乗車してきた。彼らは、私、そして交渉していた待機客に対する軽い怒りがあるように思えた。乗車するなり
「右曲がって◯◯の交差点左。そこまで行ったらまた後で指示するから」
男性がそう言い放った後に、車内には重い沈黙が流れた。
いい年なのにも関わらず、私は泣きそうになった。私次第で彼らのストレスは避けられたのではないか?お客様にとっては、早く目的地に付くことよりも、JPNタクシーによる快適な移動を優先していたのかもしれない。そうした前提に立つと、私じゃなければ、今日の素敵な思い出を楽しく語りながら家まで帰れたのかもしれない。全くもって、不要な思いをさせてしまったのかもしれない。すみません…すみません…。
ハンドルを握りながら、私は心の中で何度も謝った。
お金を頂く際、悲しみが表に出ないよう普段より明るく、大きく、ハキハキと声を出すことを意識した。接客し降車まで済ませた後、体中の力が抜け、広い道路に出た後、しばらく運転マトモにすることが出来なかった。
精神面を考慮し普段している青タン時の流しは中止。付け待ちしながら待機中は色々と考えた。どんよりした曇り空からたまに降る雨は、まるで私の精神状態を表しているようだった。考えても分からない。何が分からないのか分からない。しばらく考えた後
よし、港区走ろう。
何故こんな結論に至ったのか分からないが、付け待ちしていた新宿を離れ、港区に向かうことを直感で決めた。
そこから、新宿通り〜外苑東通りで六本木まで。六本木通りを走りながら六本木ヒルズの車寄せに侵入したり、The Okura に行ってみたり、外苑西通りをひたすら走ったり普段あまり通らない道路を走った。
テキトーにドライブしていると手が上がった。流石は港区。1時過ぎにこんなところで手が上がるなんて。乗車してくるなり開口一番
「イイクラカタマチ マデ オネガイシマス」
外国人だった。私が飯倉片町まで案内出来るルートはただ一つ。それは、新宿方面から外苑東通りを真っ直ぐ行く場合に限る。それ以外は不可能である。したがって、
お客様、私新人でございまして、ナビを使ってもいいでしょうか?
とお声掛けすると、外国人は無表情で
「ワタシ ミチ イイマス」
外国人に道案内される日本人ドライバーが誕生した瞬間だった。彼に言われるがまま、曲がり、止まり、加速し、あっという間に到着。私に文句を言うこともなく、クレジットカードで支払いを済ませ、静かに降りていった。とてもスマートな外国人だった。
その後、普段は眠くなるので避けているのだが、久々に仕事中に飯を食べた。そうしたら4時間も寝てしまった。結果、青タン時から早朝にかけて6,000円程度しか売上を出せなかった。
ただ、後悔はない。自分で決めたことだし、この6,000円は数ヶ月後の為の投資であり、何倍ものカネを生み出す可能性があるからだ。来週からは港区を中心に頑張ろう。避けていたエリアを攻めてみよう。何故か分からないが、私はそう決めたのだ。
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