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#タクシードライバーは見た「赤坂のど真ん中に出来た群り」

赤坂を走っていると、ある群りが出来ていた。
その中心には50代後半ほどの男性がいて、男性を中心にひしめき合う周りの者たちは我こそはと男性に逼り、中には側にいる者をはたき落とすように押しのける者もいる。
数にして四、五十といったところだろうか。
まんざらでもない表情をみせる男性はハーレム状態で目の前の信号を渡っていた。

年に数回は目にすることがある。
赤坂に限らずどこでもその群りは出来る。北海道でも沖縄でも、アメリカでも。ただ、赤坂のこんなど真ん中で?とは思ったが、どこであろうといつでも良いのだろう。
その群りの周りを歩く者にとっては通行の妨げになるし迷惑だ。
きっと、そのむき出しの欲望に嫌気が差す者もいる。

男性はどういう気持ちなのだろう。
自分を求めてやってきてくれるのだから当然嬉しさがあるだろうが、この時が唯一自分を満たし、そして安心させてくれる瞬間なのかもしれない。
両腕も二、三ほどに取られ、自由はほとんどない。
歩き進むこともままならない程、男性は囲まれている。

歩行者信号の点滅も終わり、車も動き出すというところだが渡り切ることが出来ず、少々時間をかけて目の前を右から左へ渡って行った。
その男性が周りの者たちとようやく渡り切り、僕は車を発進させたが、通り過ぎた後に申し訳なく思った。
別にその群りを壊したいとは思わなかったし、普通に走っただけだった。
でも群りの外側にいるまだ少し道路にはみ出ていた者たちにとっては身の危険を感じてハッとしたのだろう。
こちらが通り過ぎる際に、4.5羽は飛んで行った。


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