_タクシードライバーは見た__60歳を越えたタクシー運転手の幸せな働き方_のコピー__50_

#タクシードライバーは見た「なんの時間?」

慌てふためいて、何が間違いなのか気付かなかった。

土曜日のお昼ごろ、原宿駅へ向かう女性をお乗せした。
距離はワンコイン程度。
嬉しくはないが、だからと言ってテキトーに仕事するわけでもない。
土曜日らしいお仕事。
少しだけ希望があったとすれば、キャリーケースを持っていたところだろうか。
少し期待したが、一番近い駅だった。

そこまで時間はかからないはずだが、その日はなぜか警察の人員輸送者が辺りに何台も止まっている。
前を見ても後ろを見ても、右も左もどこにもあの青く鋼鐵な鎧をまとったような車両が並んでいる。
路肩に停めて二車線のうちの一車線を塞いでいるだけだが、
それが両方になると圧迫感が増す。

最終的に料金は580円。
きっと通常であればワンメーターで到達したであろう。

そんなことを言ってもしょうがないが、それよりも問題はお客様を降ろす場所だ。
お客様が停めるように求めたのは原宿駅の竹下口のあたり。
あそこは片側一車線で両方に駐車車両がいたりするため、降ろしている時間は後ろを待たせることになる。
荷下ろし用のスペースもあるためそこに停める気でいたが全て埋まっていて良きスペースが見当たらない。
そういう場合に有難いのは信号が赤で停まっているうちにサッと降りることだ。
丁度信号が赤になったところで原宿駅竹下口の前に止まった。
後ろには5,6台の車が並んでいる。
この赤信号のうちの支払いを済ませさっさと立ち去りたい。

キャッシュレスの普及に急ぐ日本政府のおかげで、最近は現金支払いが減ってきており、「ピピッ」と交通系電子マネーでスマートに降りていく方もいる。
それを期待したがお客様出したのは1,000円札。現金支払いだった。

ーーーあ~正直メンドクサイ。
しかも580円と言う100円玉4枚、10円玉2枚という、少しばかり手間もかかる。
小銭入れから素早く小銭を取り出そうとするが、こういう時に限って上手く取れない。
信号を気にしながらようやくすべてのお釣りを手に取り渡そうとしたところ。

「あ、やっぱ大きい方で」
「えっ. . . . 」

1,000円札を目の前に出し、そしてこちらは小銭を渡そうとしたところ、急に1万円札に変えてきた。
しかももう、歩行者信号は点滅していて、青信号のタイムリミットまで残り5秒ほど。

間に合わないのはもう確実だ。

ーーーチクショー!
内心少しムッとしながらも、とにかく早くお支払いを終えなきゃならない。
お札をさっさと数えていると、1,000円札の時は出さなかった端数分80円の小銭も急に取り出し始めた。
もう万事休す。

領収書がいるというので、ボタンを押したが、慌てていたため二回押し、連なって出てくる。
それをその連なったまま渡した後、そこでようやく扉を開けた。

とっくにもう信号は青になっている。
図々しくそこに居座る選択肢もあるが、一応二種免許という資格として一般車に迷惑のない運転、運行は心がけている。
とにかく急いでいた。

そしてお客様を降ろし、そこを後にした。

そして気づく。
ーーーあれ、お釣り多く渡してない?
「いま、9,500円のお釣り渡したよな. . . . 」

「うわ~~!やってしまった!」

無駄に多くお釣りを渡してしまっていた。
焦らされた挙句、お釣りを多く渡していることに気付かず意気消沈。
休憩することにした。


休憩が終わり、先ほどは頭が少し混乱した状態だったのでもう一度整理してみると。

「料金580円だろ、、10,080円出されたから~お釣りはキュウセ・・・」

ーーーあれ?
「580円の料金だった。それに10,080円出されて、9,500円のお釣り・・・」

多く渡してなかった。
10,000円札の前に1,000円を出されていたことが混ざっていたのか、
とにかく混乱して頭が正常に回っていなかった。

落ち着かせるために、甘いもの買っちゃったよ。
2時間くらい寝ちゃったよ。

なんだったんだこの時間。。

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