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#タクシードライバーは見た「現実を感じる」

ネット上の世界は所詮ネット上の話でしかない。
Twitterでワニの話題やその他の話題がトレンドとなろうが、タクシーの車内ではお客様からその話は出てこない。
結局どの現実もその人が見ている世界が広がっていて、同じ空間、次元にいるはずなのにどこか違う感覚がある。
でも今回のコロナ騒動によって、「あ、同じ現実を生きているんだな」と実感することが出来た。

タクシー運転手をするようになって、同じ世界にいるはずなのに、こんなにも違う世界が存在しているのかと感じるようになった。
渋谷でスクランブル交差点が封鎖されるほど人ごみに溢れようが、ちょっと住宅街に入ると人が歩いていないことがある。
朝の通勤時間帯で渋谷を走っているとき、新橋を走っているとき、
同じ時間に走っているはずなのに流れているコードがまったく違う。
ラジオで「○○線○○駅で人身事故が起こり、電車がストップした」というニュースが流れると、その駅周辺は流れの変わる人達でごった返す。
その電車とは繋がらないところにいると、その流れの影響を受けないどころかそのことを知らない人すらいる。
10分ちょっと、2.3km先の距離にお客様をお送りするだけでその違いを心底感じる。

あれ、同じ時間だよな?同じ空間だよな?、そんなことを思うことが何度もある。
それは乗ってくるお客様が変わる瞬間にも思う。
大手金融機関に勤務しているであろう30代と40代の男性のお客様をお乗せしていたはずなのに、その後すぐに大阪から旅行中の60代ほどの女性のお客様3名をお乗せすると同じ時間、空間であるはずなのに流れるコードがいとも簡単に変わる。
その旅行中のお客様をお送りして車内が静かになると、自分がいるだけの空間になる。
そして銀座を抜けるところにいる。
でもその瞬間、さっきの金融機関の男性のお二人は大手町付近でお仕事をし、旅行中の60代の女性のお三方は銀座で買い物をしている。
この瞬間も、同じ14時台を過ごしているはずがそれぞれが違う地点にいて、違うモノを見て、触れて、違う話をして過ごしている。
今これを読んでくれているあなたがいても、きっと近くにいる他人は全く違うモノを見て、触れて、違う話をして過ごしている。

ネット上でどんなに話題になることがあろうが、それは変わらない。
自分が見ているモノ、触れている情報は一部のモノでしかないと感じるようになっていった。
でも、今、世の中では皆が同じようにコロナの情報を得て、話をし、そして行動を控えている。
「あ、同じ現実なんだな」と年末年始以上に感じることが出来ている。

同じ時間なのに違うコードをいくつも感じることがあるこの仕事をしているからこそ、
余計にその現実感を感じて、そして凄く大きなことなんだなと改めて思う。

誰もが分かっていることだろうけど、
みんな共通の現実を生きている。


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