_タクシードライバーは見た__60歳を越えたタクシー運転手の幸せな働き方_のコピー__81_

#タクシードライバーは見た「丁寧な伝え方」

「ァテュフタシまで行ってください」
「はい. . . ?あの、もう一度行き先を教えて頂けませんか?」
この仕事でそうなることは少なくない。
真横を車が通ることでかき消されることもあれば、早口過ぎてブルブルブルと雑音だけが聞こえてくることもある。
困っているというわけではないが、そのお客様の伝え方一つ一つにも違いがあって面白い。
丁寧に伝えようとしてくれているのか
遅すぎて遅すぎて、結論が通り越してしまう時もある。

住宅街の細かい道に入ると、伝えて頂かないと難しい。
目的地の近くで最終的にどこなのかを案内していただいた。
50代ほどの女性をお乗せした時だった。

「お客さま~、この先はどうなさいますか?」
「あそこのー、電柱のー」
「はい」
「先をー. . . 」
「はい」
「右にー. . . 」
「. . はい」
「曲がってー. . . 」
「はい」
「頂けますか?」

「かしこまりました」
間が、、、。
間が空きすぎてこちらが反応しないと次に行かないのかと思うほど。

「そしたらー」
「はい」
「その先に見えるー」
「・・・」
「あのー. . . 」
「. . . はい」
「黄色い建物の前なんですけれども」
「はい」
「止めやすいところでー」
「ぉ. . はい」
お止めしましょうかと言う言葉が口から飛び出しかけるがグッと返事で押さえて閉じ込める。

「止めて―. . . 」
「 . . . . はい、ぅ」
危ない。多分まだ続くはず。

「. . . ぃ」
やっぱり。

「 頂けますか?」
「はいー、かしこまりました」
ようやく終わった。

「ありがとうご、ざいます」
「あ、はい」

最後の最後まで丁寧に言葉を発してくれた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?