_タクシードライバーは見た__60歳を越えたタクシー運転手の幸せな働き方_のコピー__32_

#タクシードライバーは見た「ゴミ客と思ってしまう気持ち」

深夜の六本木、最近は外国人やマトモな人が減ったように思う。
深夜のお客様は目的地まで寝てくれるサラリーマンが一番楽。

この間お乗せした女性は、乗る前からちょっと乗せたくないメンドクサそうな雰囲気を醸し出していた。
ある交差点で待っていると、電話をしながらタクシーを横切り、扉の前でピタッと止まる。
電話をしているしなんの合図もないし乗るのかどうかはっきりしていない。

お乗せすると、電話をしながら「えっと~六本木の交差点、六本木の交差点の駅」
六本木交差点の時点で戸惑う、なぜなら、そこから六本木交差点までは100mほど。たぶん、信号待ちや渋滞を考えると歩いた方が早い。
それでも利用する方もいることから、理解するとその次に出たのは
「六本木交差点の駅」
まぁどっちでも良い、六本木の交差点も六本木駅も同じ場所にある。
六本木交差点の地下に六本木駅があるから。

いつもは少しタクシーが並ぶ道を10秒足らずでお送りすると、急に女性は
「あ、なんか分かって来た、えっと~この先に六本木交差点ありますよね」
「この先ですか?いや、六本木の交差点はこちらですけ」
「この先の六本木交差点駅まで」
「いや、あの~六本木駅も、交差点もここなんです、もしくは駅の入口とかですか?」
「え、ちょっとまって、この先に六本木交差点って」

全然聞いてない!

「あの~、六本木交差点はこの目の前の交差点ですし、六本木駅はこの地下にあります。入口とかが」
「いや~ここじゃなくて」

女性が何と間違えているのかは分からないが、六本木駅でも六本木交差点でも場所はここになる。
A1のような入口のことを言っている訳でもなく、とりあえず見た感じここではないらしい。

「ここじゃなくて、六本木交差点です」
「ここなんです、六本木交差点。駅は地下で、入口とかもしくは」
「へ?もういいです」

女性は、なんで伝わらないの?
といった運転手が悪いという雰囲気で降りて行った。
何と間違えているかも分からず、悶々とする車内。

タクシー運転手になりたてのころ、
深夜の近距離のお客様のことを「ゴミ客」と言っているのを聞いたことがある。
「僕は、そうは思わないないだろう」と思っていたし、これまでもメンドクサイ客は何度もいたが「ゴミ客」と頭に浮かぶことはなかった。

でも今は「ゴミ客」と言ってしまいたくなる気持ちは分かる。
良く分からないがなんとか認識した目的地を言われ、お送りするとそこじゃない。
どこと間違えているのか他の場所も探って、きちんとお送りしようと思ったが、そんな間もなく不満だけを車内に残して降りて行った。

俺はどうすればいいんだヨ!
胸糞悪い感覚だけが残ったが、いつの日だったかどんな客をも受け入れると決め「俺は神のようなタクシー運転手になった」なんて記事を書いたことを思い出し、穏やかになった。

「ゴミ客」と口にはしなかった。


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