_タクシードライバーは見た__60歳を越えたタクシー運転手の幸せな働き方_のコピー__55_

#タクシードライバーは見た「映画を撮っているんだ!」

もはや、映画のワンシーンを撮っていたんだと言いたい。
青山でお乗せしたスーツ姿のふたりの男は60を超えた風貌で、二人とも低く響く、太い声で会話をする。
不動産関連で大きなお金の動く話をする二人は、大手企業の名前がチラホラと出てくる。
一般的に生きていたら話題すら耳に入らず、そんなことが存在することも気付かないであろう。
まさに映画の中にいるようだった。

「あの✖✖というビルあるだろ、〇〇と、△△が金出しているらしいぞ」
「ああ、そうらしいな」
「お互い譲らんらしいから難しいみたいだけどな」

都内の土地に関しての大手企業の動きだろうか。
どちらも名を出せば知らぬ人はいない財閥系の企業だ。

「◇◇駅前のホテル、あの場所も出してるらしいな」
「ああ、そうなのか」
「額は△△が30億、そいで○○が18億、だけどあの場所を握っているのは〇〇なんだよ」
「ほ~」

全く内容が分からない!
とりあえず大手企業の、土地取得?権利取得?の争いが実は裏で続いていて、
今回は〇〇に軍配が上がった。的な話だったような気がするが
スケールがデカいというか、バン!バン!ババン!
と言う感じだ。

映画の中で夜の東京をヘリで上から眺める映像があり、そこには高層ビルが連なっている。その街中を高級車やタクシーに交じって走る一台のタクシーに寄っていき、その中の会話が聞こえてくる。
その時に流れているのがバン!バン!ババン!といった感じのオーケストラの音楽。
そして、タクシーの車内のシーンに変わると次第に音は小さくなり、沈黙の中に響く太い声。
助手席からカメラが二人を抜いているが、暗く顔は映らない。
道路の街灯で微かに明かりが入り込むが上から下のため表情までは見えず、対向車のライトの光が二人の顔を舐めるよう左から右へ流れていく。

そこには口元が笑む男と眼鏡の奥に眼光鋭く対向車のヘッドライトを見る男がいた。

そんなシーンを撮っているんだ!

という気持ちになる時間だった。


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