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はい、縫製室です/それは能力給でなんとかしてよ

 素人のワタクシが工業用ミシンでお直しをやっとひとりで1枚仕上げることができるようになった頃、その間に熟練のねーさんがたは3~4枚仕上げている…というのが、はじめの一歩。


 縫製業の相場は、全国どこでも最低賃金で、なおかつ能力給がつかない!

 なぜなのですか…。


 熟練のねーさんたちは、複雑なお直し部門も引き受けています。

 私がこの職場に入る前までは、残業にかなり寛容だったようです。パートタイム雇用に関わらず、勤務の平均時間は200時間以上。週6日勤務のシフト制です。
 しかしここ数年は一連の自粛時短勤務形態が継続中で、シフト表に書いてある時間以上の勤務は基本的に認められず、大抵は、退勤予定時刻にタイムカードを打刻したあとで自主的に居残り、仕事を仕上げていくという次第です。

「時間内で収められないのは、自分の技術が未熟だから」。

 熟練のねーさんは、そう言います。


 《最低賃金の給与に相当する労働の提供》の感覚がまるで違うことに、非常に驚きました。

 「この給与ならば、自分はここまでの労働しか提供できませんよ」。と私などは考えます。
 ですから、最初の頃、退勤時間が来たら「帰りますよ」と声をかけて帰ってました。が。これが不満だったそうです。「忙しいのに、なんで自主的に残らないの?」と。
 いや、聴きましたよね?
 「必要なら、言ってください。延長しますよ」と。
 最初の頃程、仕事の量とスタッフのさばける量の全体像は把握できてませんから、自分がいたほうがよいのか、いなくても充分なのかは、新人の私では判断できません。ですから、「必要ならそう指示してください」と。それで【私が】引き受けることができると判断したら、延長の申し出を引き受けますし、できない状況にあると【私が】判断したら引き受けません。
 【私が】延長するかどうか、の決定権は【私に】ありますよ。

 ところが私が驚いたのは、「察して、積極的に、残ってほしい」というもの。

 わかるか、そんなもの!

 というわけで、妥協案として、3年以上経った今では、とりあえず「私はこれで帰る時間ですけど、大丈夫ですか?」と確認するようになりました。まぁ、そう聞くと、100%「大丈夫よ」って返事がくるんですけどね。
 だって、まぁこの後、忙しくなるのかどうかの予想は、【誰にも】できないんですもの。

 それでも、「あなたが帰ったあと、忙しくなってねー」って言われますけど、それは「帰らないでいてほしかった」とは受け止めないことにしています。ただ《そういう事実があった》とそれだけです。まぁ、これは本当のことで、愚痴のようなものです。ただ、そうであったことを聞いてほしい気持ちからですから、「そうなんですか」と聞き流すだけで充分なのです。そんなことまで(私の責任!)だなんて思いこまなくてよろしいの。


 話を戻しますけれども、最低賃金で提供する労働を《ベテラン基準》にすんなってことですね。

 ベテランさんは、仕事が早いです。
 私のような素人の新人は、同じ仕事でも、倍とか3倍とか時間がかかります。
 こういう差がある技術職を、「時給」だけで労働の対価にみあわせようというのは、どう考えてもおかしいでしょう。

 ベテランさんは、《自分が納得する仕事をする》かたが多いです。
 そういう仕事の仕方であれば、それに見合う〈能力給〉を差し上げてほしいです。

 そうすれば、私のような素人新人も心置きなく、自分の未熟さを振り返り、もっとできるようにと励むことができます。逆に、〈能力給〉がないと、同じ時間内にできることの差が違いすぎるのを常に自覚するので「できない自分」を責め続けますし、挙句「ここに居てはいけないのだな」と感じる人はすぐに辞めていくでしょう。
 私自身は「この賃金で、私が提供できるのはここまでです」って割り切ってるからいいんですけど。

とはいえ。

 3年も過ぎると、できることが少しずつ増えました。
 可能な限り、時間が許せば、空いた時間で、技術を教えてくださる予定だそうです。(人材を育てる余裕は無いに等しいです。)

 すると…。

「時間が足りねぇ!」ってなりますな。
 えぇ、えぇ。自主的に早朝出勤もしますな。1時間程度の無料(タダ)働きなんてザラですな。
 でも、ちょいちょいプラスマイナスの調整をしますよ。(そこはベテランさんたちも実はきっちり行っている…らしい感じもする。)

 
 だから、そういうタイミングで能力給をつけて、昇給させなさいよ!

 20年、30年のベテランと、4年目の素人新人が、どうして同じ時給になるのよ。おかしいでしょぉ!?なぜ、こんなことがまかり通っているのか、不思議でなりません。誰か、答えを知っている人はいますか。教えて欲しいです。


〔時給計算と休憩時間のこと〕

 ここの時給計算は1時間区切りでした。去年くらいにやっとこさ、30分区切りになりましたが、30分区切りってどういうことかわかります?
〇9:31出勤=10:00出勤扱い(29分間のサービス勤務)
〇16:59退勤=16:30退勤扱い(29分間のサービス勤務)
〇〔9:35出勤~16:59退勤〕= 〔25分+29分=54分のサービス勤務〕
 こういうことが求められるんです。
 
 ちなみに休憩時間も縫製室で過ごすように言われます。
 なぜなら、混雑時にすぐに対処できるようにするためです。本当はこういうことは休憩とはいいません。
 個人商店で全員が創立メンバーの社員とかいうなら、そういう事態もあり得るかもしれません。でも、すでに数十年創業の株式会社で、この雇用形態が常態化しているのが全国的にそうだっていう、ね。

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