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三島喜美代の100年、江古田ちゃんの100年-「三島喜美代―未来への記憶」練馬区立美術館
練馬区立美術館にて開催中の展覧会「三島喜美代―未来への記憶」へ行ってきた。
練馬に赴くこと自体、たぶんはじめてに近い。昔練馬に住む友人の家へ一度行った記憶があるが、それから10年は経過していると思われるので記憶もほぼない。西武池袋線に池袋から乗り込む。ホームがちょっと大阪の梅田に似ている。電車の外見も阪急電車にちょっと似ている。
練馬区立美術館の最寄り駅は「中村橋」、各駅停車しか止まらなさそうなのでそれに乗る。途中、江古田という駅を通過した。「臨死!!江古田ちゃん」という漫画があったことを思い出す。かつて全巻持っていた。主人公はここに住んでいたのか。男運が悪く、冷静だが甘えたがり、そして意外と常識人。様々なアルバイトをかけもつコミュニケーション能力高めの女子の話だった。そういえば作者の瀧波ユカリさん、先日フジテレビの「ワイドナショー」に出演されていて初めてお顔を見た。「江古田ちゃん」は半分コミックエッセイみたいなものなので、この人が江古田ちゃんか!となぜか感慨深く思えたのだった。「ザンギ」という北海道のから揚げを知ったのも「江古田ちゃん」に書かれていたからである。
「三島喜美代―未来への記憶」(以下、三島展)は三島喜美代という女性に興味を覚える展覧会だった。展覧会場では三島氏のインタビュー動画(約20分ほど?)が放映されている。個人的に展覧会中の動画というのは3分も見たらあとはスルーしてしまうほど我慢強さがない私だが、この動画で喋る三島氏が普通の関西のおばちゃんのように見えて足が止まってしまった。誤解を恐れずに言うと芸術家然としていないのである。
「本当は医者になりたかったけど、断念して、絵ばっかり描き始めた」という。そのうちに足元に転がる新聞紙に気づき、立体にしたほうがおもしろいとなった。今年91歳になるがいまだ現役のアーティスト。女学校を出て医者になりたいと思っていたが親に反対され結婚、その後すぐ離婚し絵を描くことに没頭。絵画の道で出会った男性と結婚し、朝から晩まで絵を描いていたという。当時からしてもこの破天荒さ、ただものではない。ちょうど今期やっている朝ドラ「寅に翼」を地で行くような人物である。
作品はおそらく誰もが一回は目にしたことがあるかもしれない。廃棄物・ごみを陶器で作成されており、一瞬段ボール箱など本物と見分けがつかない。ごみ箱に山と積まれた空き缶やチラシ、新聞紙。観覧者は立ち止まってまじまじと見ざるを得ない。特に新聞紙は「割れる印刷物」として立体作品化されることで、情報のもろさ、危うさを表現しているという。崩壊する文明や文化を陶器として表現するということにまた人間の面白さを感じる。
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三島展のハイライトとなっている代表作《20世紀の記憶》では、展示スペース200平方メートルにぎっしりと耐火レンガブロックが並ぶ。20世紀の100年間の中から三島氏が選んだ新聞記事が転写されたブロックには、これまでの人類の歴史がそのまま押し寄せる。人によって見える景色が違うであろうこのインスタレーションで、空襲を受けた後の景色のように見えたのは、自分にとって20世紀のイメージが戦争の100年と感じているからなのだろう。そしてそれは今も続いており、これからの100年がどのように転写されていくのか、私たちがどのように転写したいのか、を問うているようにも見えた。
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自分にとってあまりなじみのなかった練馬区という土地は、私にとって昔読んだ漫画である江古田ちゃん、そしてこれからの100年に向き合うキッカケの場となったのだった。江古田ちゃんはこれからの100年に何を見るのだろうか。
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