ほんとうのたわけ。

12月29日
足元が揺れた日。人生の中でこれから忘れないであろうこの瞬間。記録に残して後で笑えますように。


さて、今からかわいそうな女の話をしよう。
この話にでてくるのは23歳女、年齢=彼氏いない歴である。

恋人が欲しいと思ったことはあるが性欲が強くはないし、まず見た目が異性ウケしないせいで恋人というものとは縁遠い人生であった。
(人間顔だよな)

そんな面倒な女は自分を出会いを求めていない、異性友だちもOKないわゆるサバサバ系女として周りにふれまわっていた。

しかし実際はかまってちゃんで人の言葉ぐるぐるいつまでも考えるヘタレだった。
そんな自分が嫌いでサバサバ女子に憧れていたのである。

この女をここでは・・・A子と呼ぶことにする。

A子は最近転職した。

接客業である。そこで働く人たちは女性ばかりであるが自社の製品は店舗に併設した工場(こうば)からそのまま販売しているため店舗の人間だけでなく工場の人たちも一緒に働いている。

そこにはA子と年が少し離れた顔の良い男がいた。
最初こそ顔が良いなとは思いつつも何も思わなかったが、あるきっかけでA子とこの男は二人で食事に行くことになる。

一回目の食事で男はA子の手に触れ、酒が入った帰りの電車でA子にもたれながらA子が降りる駅まで次はどこにいこうだの話をしていた。

二回目の食事では男が車をだし海に行き、コーヒーを片手にケーキを分け合った。

この時A子は思った。この男、沼であると。
まだ冷静でいられたA子であったがこの後三回目の約束をしたところでA子は経験がないせいで勘違いをする。
この男は自分に好意があると。

三回目の食事ではまた酒を飲んだ。男はA子よりも酒に弱く、この日はA子が男の最寄り駅まで送る流れになった。
(一緒に乗っていこうよとあんな表情で言われたら断れない。後日覚えてないと腹の立つことを言うのはまた別のお話・・・)

案の定この時もA子にもたれた男は爆睡を決め込む。A子は自分のマフラーを男にかけ静かに眠らせた。

駅までついた二人はA子の提案でアイスを食べることにした。A子が送ったのでアイスは男のおごりだ。

A子もほぼ終電に近い状態であったため急いで帰らなくてはならないがこの時間が愛しくだらだらと話していた。寒さもそっちのけで。

「明日一緒に出勤しようよ」

「服どうするんですか」

「そんなのうちにいっぱいあるよ、着ればいいじゃん」


こんな会話友達としないだろ。ふざけんな。

ありえないですよ、といいつつも流されそうになったA子は終電をわざとらしく気にして男を帰らせた。

そこからA子は男を意識せずにはいられなくなった。

SNSをのぞいてみたり、いつもより話しかけてみたり
どうにか接点をもとうとしていた。

しかし突然男からの連絡が無くなった。
A子が返信せずとも勝手に送られてきた写真はもう来ない。

A子は自分がなにか失言をしたのではないかと仕事どころではない。
しかし男の態度は冷たく感じる一方であった。

違和感を感じるまま今日2021年12月29日。

男は自分の職場に女性を連れてきた。
店舗より一足先に工場は休みに入っていた。

いつもラフな格好の男は見たことのないかっこうで静かに女性と話していた。まるで別人で隣の女性は恋人なのだと一瞬で分かった。

一緒につれた女性は背は小さいが目は大きく、体の小ささを隠すようにコートに身をつつんでいた。

その女性を見た私の足元は瞬時にコンクリートから泥に変わり、ながれる店内BGMはまるで水中のようにぼやけて聞こえた。

目の前で対応している客はまるで気にならず、二人が店内でどう動くかそれだけを目が追っていた。

よりによって店内は込み合い、男に話しかける暇もないまま二人は出て行った。

A子は一目ですべてを察した自分が大嫌いになった。
そのあとのことは覚えていない。

勝手に好意を寄せて勝手に散ったのか。そう思うと自分が保てない気がしたA子はこうして冷静になろうと起こったことを文にしたためている。

口の中がやけにしょっぱい。目が乾燥する。

正月の休みをありがたく思った。





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