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軽くてとことんな双子座♊️ ージョン・エヴァレット・ミレイ【ホロスコープから見る芸術家のひとかけら⑧の1】

ジョン・エヴァレット・ミレイ(ミレー)
John Everett Millais
1829.6.8 生まれ
Southampton U.K.

前回のミレーが、画家人生の転機を迎えていた1848年のこと…
海を隔てたイギリスに、同じ響きの名を持つ若者・ミレイがおりました。
ミレイは、ロセッティら仲間たちと元気に【ラファエル前派兄弟団】を興しておりました…

はい!ということで、今回はミレイです!

※ちなみに、前回のミレーの転機についてはこちら ↓↓


◎ミレイって?

ラファエル前派に属したのち、アカデミックな画家に
11歳で国立のロイヤル・アカデミーの美術学校に入学したまさに神童。
しかしロイヤル・アカデミーは保守的だとし、19歳で 「ラファエル前派兄弟団」を結成。 23歳で 《オフィーリア》 を描くが、その後ラファエル前派は解散。
ミレイは最終的にロイヤル・アカデミ一の会長に就いた。

『理由がわかればもっと面白い!西洋絵画の教科書』監修:田中久美子

しかも、オクスフォード大学の名誉法学博士号を授与されたり、準男爵位を授かったり、大規模な展覧会も開催されたり…

社会的成功者じゃん!!

ってとこですね。

画家の生涯のイメージって、
「理解されない」
「貧乏」
「没後に認められる」

とか。

ちょっと不運なにおいがある人が多いような気がしますが、ミレイは違います。

ちっちゃい頃から神童で〜♪
大っきくなったら成功者〜♪

です。

はあ〜、羨ましい限り。
(まあもちろん、経歴的には、ですけどね。ミレイ本人の思う成功があったかどうかは、藪の中!)

さて、そんな羨ましさ満載のミレイさん。
ホロスコープを見てみないわけにはいきません!

早速、ドン!

(Astro Gold より)
※ソーラーサインハウス

太陽双子座♊️さんです。
金星もここ。

画家として生きたミレイにとって、人生の目的や創造性(太陽)と愛と美の惑星(金星)が入っている双子座♊️の要素というのは外せないかなと思います。

なので、今回はミレイの双子座♊️的要素をピックアップしていきます。



◎【双子座♊️太陽期】  ー時代を読むイラストレーター


ミレイは画家でありながら、今でいうイラストレーターのような側面もありました。

作品を描けば人気が出て、版画化されては多くの人の手に渡り、本の挿絵も多く手掛けていました。
(お孫ちゃんを描いた絵が、石鹸会社のポスターにもなったりもして  ↓↓)

《シャボン玉》(1886)
ペアーズ石鹸の広告(1893)  ※クロモリトグラフ
(本当はカラーです)

自分の描きたいものだけを追求したのではなく、

大衆の求めるものや時代の流行を敏感にキャッチして作品に落とし込み、
またそれを、作品を通して多くの人へ伝達していった
のです。

四季の移り変わりに合わせて表情を変える季節風に例えられる、柔軟な双子座♊️らしい働き方なんじゃないでしょうか?

そんなミレイの双子座♊️的特徴を、よく表している一文があったので紹介しますね。

ミレイはその画業を通して常に時代の一歩先を行き、 新たなスタイルを生み出していった。 それはむろん、 彼の豊かな絵画的創意によるものであったが、 同時にまた、人々が求めるものを的確につかんで提供していくという稀有なマーケティングの才覚のおかげでもあった。

『ジョン・エヴァレット・ミレイ  ヴィクトリア朝 美の革新者』著:荒川 裕子

うーん、マーケティングの才覚…
ほしいですね。全然ないんで。

やっぱりミレイは羨ましいなー。

まあ、そんな感想は置いといて。

このように、双子座♊️的能力が人生の軌道に乗っかり、成功への道を歩み始めたのは、ミレイが結婚をした26歳頃からなんです。

太陽期に重なっているところが面白いですね。

ミレイは結婚後、8人もの子どもに恵まれたため、家族を養っていく必要がありました。
ここで、築いてきた画風を少し手放すことになりますが、手放した後、イラストレーターのような役割で人気を博していくのです。


では、それ以前の、〈築いてきた画風〉とはどんなものだったのでしょうか?


◎【双子座♊️金星期】  ーラフェエル前派時代


26歳より前といえば、金星期。
ミレイは金星も双子座♊️でしたね。

この頃は、冒頭に書いたように、
ラファエル前派を結成し、仲間たちと目指すべき作品作りに邁進していた頃
です。

【ラファエル前派って?】
1848年、芸術革新を唱える青年たちによって結成されたグループによる美術様式です。 ラファエロ以前、初期ルネサンス美術に着目し、聖書や中世の伝説・文学を主題とした写実的な作品を描きました。

『語れるようになる 西洋絵画のみかた』監修:岡部 昌幸

当時のアカデミーは、ラファエロやダ・ヴィンチ、ミケランジェロなど、ルネサンス時代の絵こそが美しいとし、そこを規範に教えていました。
で、【ラファエル前派兄弟団】は、「ラファエロなんて古いんじゃーい!」と、それよりもっと古い絵をお手本としたってわけです。


絵画的特徴としては、

清澄な色彩、細密描写と、現実をありのままに描くということ。

『語れるようになる 西洋絵画のみかた』監修:岡部 昌幸

ラファエロ以前とは、初期ルネサンス・北方ルネサンスあたりが該当するので、ヤン・ファン・エイクなんかもそうですね。

《アルノルフィーニ夫妻の肖像》(1434)

※ヤン・ファン・エイクのこの絵に関しては、以下の本の解説がおすすめ。
無造作に転がったオレンジに至るまで意味が含まれているのがわかり、
絵を細かく見ていくことが楽しくなります。


さて、ミレイに話は戻って。

ラファエル前派時代の代表作といえば、やはりこれ。
《オフィーリア》(1851-52)です。

ここからは、占星術的話題から一度離れて、オフィーリアの説明をしていきます。


◎オフィーリアって?

見出し画像にもありますが、ミレイの《オフィーリア》をもう一度。

《オフィーリア》(1851-52)

は〜、美しいですね〜〜〜

・・・じゃなくて。

話を続けます。

され、これが誰で何なのかというと、こちら。

イギリスの劇作家・シェークスピアの悲劇、ハムレットの登場人物。
宰相ポローニアスの娘でハムレットの恋人。
父にハムレットに会うことを禁じられた上、狂気を装ったハムレットに「尼寺に行け」などと邪険な仕打ちを受ける。
さらに、ハムレットの手による父ポローニアスの急死により発狂し、小川で水死する。

ハムレットを読むと、悲しくなってくるくらい最初から最後まで救いのないヒロインです。
(まあ『ハムレット』自体が悲劇なんで全体的に救いがない感じですが)
美しく、純潔でありながら悲劇的な運命を辿る。その儚さが人を惹きつけるのか、オフィーリアは幾人もの画家によって描かれています。

とはいっても、『ハムレット』の主役はあくまでハムレット。
ハムレットに沿ってお芝居は進んでいくので、オフィーリアのこの狂死の場面は、実際に劇中では演じられておらず、王妃ガートルードのセリフで伝えられるのみです。

こんな感じで。

土手から斜めに柳が生え、小川の水面に白い葉が映るあたり。
あの子はその枝で豪華な花飾りを作っていました。
金鳳花、刺草、雛菊、それから、口さがない羊飼いたちが卑しい名前で呼ぶけれど、純潔な乙女たちは死人の指と呼んでいる紫蘭。
そのすてきな花輪を、垂れた枝にかけようと、柳によじ登ったとたん、
意地の悪い枝が折れ、花輪もろとも、まっさかさまに、涙の川に落ちました。
裾が大きく広がって、人魚のように、しばらく体を浮かせて――――
そのあいだ、あの子は古い小唄を口ずさみ、
自分の不幸がわからぬ様子――――
まるで水の中で暮らす妖精のように。
でも、それも長くは続かず、
服が水を吸って重くなり、哀れ、
あの子を美しい歌から、泥まみれの死の底へ引きずり下ろしたのです。

『新訳 ハムレット』 作:シェイクスピア  訳:河合祥一郎

ミレイのオフィーリアはこのセリフにもある通り、「水の中で暮らす妖精」のよう。
喜怒哀楽が剥がれ落ち、水の中にただ横たわって歌う姿は狂気に違いないのですが、この世にいながらにして、この世ものではない空気と美しさがあります。

そしてミレイは、人物のオフィーリアの表現だけでなく、背景に至るまで、王妃ガートルードのセリフや物語中から受け取れる情報をこれでもかとキャッチし、綿密に画面に落とし込むことによって、一枚の絵を物語として成立させています。


◎《オフィーリア》の双子座♊️性① ー細かい情報読み取ります


《オフィーリア》の詳細に描き込まれた背景は、それぞれ意味を持ち、この場面の悲劇性や切なさを象徴しています。

では、どれがどんな意味を?というと、意味を含んだモチーフがあまりに多い!
もちろん、物語内の情報によっているのですが、よくぞそこまで入れ込んだな…と唸ってしまうほど。

とりあえず、わかる限り箇条書きで紹介していきます。
(どこ…?は画集片手にお花に詳しい方に聞いてください…!)

・柳…悲哀、死者への嘆き
・イラクサ…残酷、あなたは意地悪
・ミソハギ…慈悲、愛の悲しみ
・スミレ…誠実、小さな愛、夭折
・ケシ…死と眠り
・パンジー…物思い
・ヒナギク…純潔、無垢
・バラ…愛、美
(オフィーリアの兄・レアティーズが「五月のバラ」と呼んだことに由来)
・忘れな草…私を忘れないで
・キンポウゲ…子供らしさ、中傷
番外で、
・コマドリ…
(オフィーリアが劇中で歌う「かわいいロビン(コマドリ)、わたしの命」に関連)

もはや花言葉図書館!!
情報の宝庫!!
(しかも、本当はもうちょっとあるらしい!!)

枯れゆく草花を描き入れていることも、命の儚さを表現しているとも言われています。

このように、背景にはオフィーリアに関する物語性が散りばめられており、描き込まれている奥にあるものは、なんとも重苦しく悲しいものです。


それでも、絵を見た時に、そこまでの重さは感じられたでしょうか?
少なくとも私は、「はー、キレイだな〜」でした。
(鈍いだけかもしれませんが…!)


悲劇の情報を入れ込んでもなお、息苦しさや悲壮さを感じさせない画面に仕上げるというのは、双子座♊️の成せる技のような気がします。


◎《オフィーリア》の双子座♊️性②ー制作エピソード


双子座♊️の支配星の水星は、しばしばギリシャ神話のヘルメスに例えられます。
翼の生えた靴を履き、カドゥケウスを片手に、冥界も天界も行き来する伝令神です。

「あっちにいい情報がー」とか「あー、あの神様にお知らせが」と思い立てば、重たい荷物も面倒な手続きもなしにひょいっと行けます。


ミレイも、ヘルメスさながら「オフィーリア描こう」と思ったら、自分の足を使って、スケッチをしに行っていっています。

あーらほいっと軽々行ったかと思えば…

1851年の夏、ミレイはハントとともにサリー州へ出かけ、ホグズミル川に沿った場所で本作品の背景を描いた。屋外での制作には多大な苦労が伴い、「このような環境のもとで絵を描くのは、殺人者にとって絞首刑よりも重い懲罰だろう」と書いている。

『ジョン・エヴァレット・ミレイ ヴィクトリア朝 美の革新者』著:荒川 裕子

絞首刑より重い…
ミレイは、冥界にでも行ってしまったのでしょうか。

しかも、4、5ヶ月かけて、1日10時間くらい描いていたこともあったそうで。
何とも過酷でストイックな取り組みよう。

動きは軽くても、ヘルメス自身が軽いチャラ神なわけではないということでしょうか。
(これは、双子座♊️にも同じことが言えそうですね)

そして、ミレイの場合、足だけでなく、その目も手もヘルメスなのかもしれません。

で、冥界に行ってしまったミレイヘルメスですが、もちろん現世に戻ってこなくちゃいけません。
だって、得た情報は伝えるのが双子座♊️の使命ですからね。


そんなこんなで、現世に戻ってきたミレイヘルメス。
お次は、情報収集第二弾です。

絵の軸となる、主人公のオフィーリア。

こちらは、どうしたのかというと、

冬にロンドンに戻ってから、バスタブのなかでモデルにポーズを取らせて描かれた。

『ジョン・エヴァレット・ミレイ ヴィクトリア朝 美の革新者』著:荒川 裕子

だそうです。
リアル追求なので、バスタブは水…はさすがに寒いのでお湯を張ります。
でも、なにせミレイヘルメスはとことん型。
描いているうちに、お湯の温度はどんどん下がり…

絵は、時間をかけた分よくなるのかもしれませんが、モデルはこうなります。

オフィーリアのポーズを取っているうちに風邪を引き、父親がミレイに治療費を請求した逸話は有名。

『ジョン・エヴァレット・ミレイ ヴィクトリア朝 美の革新者』著:荒川 裕子

大変でしたねー…
(ちなみに、モデルのエリザベス・シザルの実際の生涯もオフィーリアに被さる部分があるんですよ。知ると切ないー)

まあ、そんなこんなで生まれた《オフィーリア》です。


ミレイの執念にも似た情報収集力には感嘆させられますね。
それがあるからこそ、私たちは《オフィーリア》から、物語に漂う空気まで感じられるのかもしれません。

狂気の中の美しさを感じさせるオフィーリアは、私が知るオフィーリアの絵の中では、ミレイが一番だと思っています。


◎最後に、『草枕』から  ー夏目漱石の感じたオフィーリア

最後に、夏目漱石の『草枕』言葉を紹介して終わりにします。
(私が、「ほわ〜、オフィーリアきれ〜」なんて言っているより、作家の言葉の方が伝わるものがあるので!)


『草枕』の主人公が、ミレイの絵について思い巡らせている部分です

ミレーのオフェリヤも、こう観察すると大分美しくなる。何であんな不愉快な所を択んだものかと今まで不審に思っていたが、あれは矢張り画になるのだ。水に浮んだまま、或いは水に沈んだまま、或いは沈んだり浮んだりしたまま、只そのままの姿で苦なしに流れる有様は美的に相違ない。それで両岸に色々な草花をあしらって、水の色と流れて行く人の顔の色と、衣服の色に、落ちついた調和をとったなら、屹度画になるに相違ない。

『草枕』著:夏目 漱石    新潮文庫より

ちょっと、「オフェリヤ」に萌えるのは私だけ…?


◎おまけーもう少しホロスコープの話題

こっからは、もはや妄想含めての深読みです。
そういうのも実は好きなのよね!な方、ぜひあとちょっとお付き合いいただければ嬉しいです。
(個人的には、ホロスコープを見るのはこういうのが楽しかったりします!)

❶ミレイの創作姿勢は、双子座♊️の身体対応部位、腕・手・指先を使いまくっている!?

→もはやこじつけ中のこじつけ!

❷ミレイの画面の細かな表現自体は、双子座♊️というより、乙女座♍️の月が成せる技!?

→月は出生時間で大きく動いてしまうのでなんとも言えないのですが、もしかしたら、双子座太陽や月にタイトにスクエアになる時間に生まれたのかな?なんて妄想してしまいます。

❸太陽星座の支配星、水星のアスペクトに威力あり!?

→ミレイの太陽星座、双子座♊️の支配星は水星です。
水星は、冥王星とスクエアをとっており、急に「とことんやるぞー!!」スイッチが入るのでは。
太陽期を前にした《オフィーリア》の頃のミレイは、そんな双子座♊️ルーラーの威力を、太陽ではなく金星の方に多く反映していたのかもしれません。


では、また!
次もミレイです。
《オフィーリア》だけじゃないよ!ってとこと、ホロスコープのことを書いていく予定です。


※画像は、Artvee、Wikipedia Commonsより