命がけの接触

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余命15歳を宣告された重度の心疾患を持つタケくんが、兵庫から京都まで、わざわざライブを観に来た。

空間が広く、比較的、安全な会場ではあったが、彼の通常とは比べ物にならない感染リスクを思うと、不安を拭いきれなかった。

でも終演後、楽屋で彼の目を見た瞬間、つよい意志で、命がけで会いに来たってことが解って、それに応えられるだけの言葉が何か自分のなかに無いかと探ったけれど、歌い終えたばかりで空っぽ、何も出てこなかった。
タクシーの到着が迫っていた。

最後、タケくんが何か言いたげに、もじもじしていたが、お母さんに促されて、俺の身体に触れた。
接触はまずくないか?と思ったが、僕もがまんできなくなり、なるべく安全な角度で彼の上着ごしに抱きしめた。
タケヒロ、愛してるぞ。

コロナ禍のなかでいちばん体温の暖かさを感じた瞬間だったかもしれない。

君の命の輝きと熱は、おひさまにも負けない大きさで、
空っぽの俺を照らしていったよ。
また明日からたくさん歌えそうだ。


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