見出し画像

スペシャルインタビュー 柴幸男編

2019年1月12日より東京芸術劇場にて本番を迎える多摩美術大学 演劇舞踊デザイン学科 第二期生 卒業制作 演劇公演『英雄』/『運命』
一年をかけて準備が進んできた卒業制作もいよいよ本番まで二週間を切った。そんな学生たちに本作へかける想いを訊きたいと思い、『英雄』出演者・『運命』出演者・舞台美術・衣裳・照明・アトリエ展示、それぞれに携わる学生たちへインタビューを行なった。
今回は番外編。今作『英雄』『運命』の作・演出を務める柴幸男へのインタビューを敢行。
前代未聞の新作2本立て。その創作の裏側に迫った。

―今回『英雄』と『運命』の新作二作品をやるという企画で行こうと考えた理由はなんですか?
柴:消極的な話からになっちゃうんですけど(笑) とりあえず人数が多いんですよ。全員が出る作品を作るのはしんどくて、二つのチームに分けたいなっていうのは最初にもう思ってて。ダブルキャストでもいいんですけど、僕がダブルキャスト全然興味湧かないっていうのもあって、こういうときは楽でも興味湧かないことやるよりは、大変でも興味あることやった方が良いので。

―『英雄』はどういったお話ですか?
柴:『英雄』は、携帯キャリアのお話で。僕がちょうど高校生から大学生ぐらいの時に、みんな携帯持ち始めた記憶があって。ここ10、20年ぐらいの携帯の流れと個人的な恨みをいつか作品にしたいなって思ってました。
―恨み?
柴:はい。やるなら今かなって。昨年は“第九”で『大工』を作ったので、次は“英雄”でauだなっていうのはもう決めてました。ただ、恨みの要素を強くすると携帯会社を打ち滅ぼせ!みたいな『大工』に似た革命劇みたいになるので、恋愛の話にしようと思って。恋愛で携帯キャリアが違ったらってなると、やっぱ『ロミオとジュリエット』がすごい合うなと。それに“英雄”の曲を聞いた時に、やっぱりロミジュリ的な中世ヨーロッパ的な演劇が合いそうだなっていうのはあって。最初はもうちょっと現代の若者が出てくるようなお話にしようかなって考えたんですけどね。せっかく二本作るなら、一つは現代っぽいもの、もう一つは古典的な演劇にしようかなと。巨大群像劇っていうか、古い形の演劇の作品性を踏まえつつ作りたいなっていう感じはありました。ま、ロミジュリを現代の恋愛観プラス携帯電話の掛け算でちょっと変容させたって感じですかね。
―『運命』はどういったお話ですか?
柴:大学を舞台に、友情と食事を巡るお話になっています。でも食事の要素は、『運命』っていう題名からなんかダジャレできるかなって聞いたときに、「うんめい、うんめぇ、ぐらいじゃないっすか」とかって言って。じゃあ、うんめぇで食事をちょっとキーポイントにするかって感じで決まりましたね。ただ、“運命”って曲は相当強いんですよ。みんな“英雄”はわかんなくても、“運命”はわかる。だから、“運命”を劇の何のために流すのかっていうところが一番肝になってきましたね。
―すでにイメージが付いちゃってますもんね。
柴:だから、今回は人間の力を超えた存在の登場するときに流すことで、しっくりきましたね。でもね、“運命”って曲は本当に激しいんですよ。人間関係のドラマレベルじゃ使えない。よっぽど事態がデカくないと使っちゃいけないような曲だなってすごく感じて。だから一種ゴジラとか、ジョーズとか、あぁいうパニックとかホラームービーを参考に作ろうという風に決めて、今作ってる感じです。

―次に話題を変えて、柴さんは既に演劇界でご活躍されている中で、3年前から多摩美に講師として関わるようになったわけですけど、きっかけはなんだったんですか?
柴:誘われました。興味ありませんかって。で、たまたま暇だったんですよ、その次の年が。あと受けた理由の大きいところは、一期生だったっていう所ですね。完全に出来上がった仕組みの中に入っていくのは、なんかなっていう気はあったんですけど。まだ、一期生で、三年生の受け持ちが誰もいなくて、これから上演実習もありますっていう話は面白そうだなって思いましたね。
―大学で教え始めてから、ご自身の、<ままごと>での創作などに影響はありましたか?
柴:作り方とかに関してはないですけど、若い人を入れた方が良いなっていうのはすごい思って。劇団員に若い人を入れたりしたのは、大学に来てからかな。これやってなかったらもっと守りに入ってたというか、若い人と関わり持とうとそんな思わなかった気がしますね。閉じていったと思います。もうちょっと年取ったら焦った気がします。自分が生きてる世界と自分が演劇をやり始めた世界が分裂してるイメージをすごい持っちゃうような気がしてたと思うんですけど、今は地続きにはなってますね。

―最後に、お客さんへ一言。
柴 :お客さんもどういうモチベーションで観に行くかって難しいと思うんですよ。卒業公演っていうのは、どうしても発表会のイメージがあるし。でも学生が回転し始めたら、面白いことになるかもしれないなと思いますね。その熱は感じてます。これもしかしたら何か回転し始めるかもなって。やっぱなんか作りたい観せたい、なんかしたいっていう欲望がちょっと蠢き始めてる感じがあるので、そこはちょっと期待しててほしいですね。

聞き手:芳野広太郎
写真:有馬華穂

_______________________________________

公演情報

多摩美術大学 演劇舞踊デザイン学科 第二期生     卒業制作 演劇公演『英雄』/『運命』

2019年1月12日(土)〜14日(月・祝)

東京芸術劇場 シアターイースト

関連リンク

『英雄』/『運命』特設HP

http://www.tamabi.ac.jp/sdd/stage2018/0305/



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?