見出し画像

今年の我が家のポジティブ変換流行語

祖父母だけの仏壇に父が加わった今年。我が家の流行語は「仏壇ファミリー」となった。毎朝仏前にお茶とお水、ごはんを上げ、夕方になると下げるのだが、母がすでに下げたか否かを確認するため、私が
「仏壇ファミリーのは持ってきたの?」
と口走ったのがきっかけである。

仏壇にいるのは父だけではないから「お父さんの湯飲み茶碗」と言うのは祖父と祖母に悪い。かといっていちいち「おじいちゃんとおばあちゃんとお父さんの湯飲み茶碗」と律儀に言うのも面倒。

だからなんとなく「仏壇ファミリー」と一緒くたに言ったのだが、これが母にはおもしろおかしかったらしく、
「たしかにファミリーだ」
と笑いながら納得していた。
以後我が家では「仏壇ファミリー」が定着する。

父がまだ祭壇にいた頃は私も毎日泣いていたが、仏壇へおさまってからはだいぶ気持ちが落ち着いた。そこに行けば会えるし、話ができるから。なんなら生きていた頃より話しかけている。

だが母は、
「今でも信じられない。仏壇でお父さんの写真見るたび涙出る」
と、まだ落ち着かない。

だから私がテキトーに発した「仏壇ファミリー」という言葉が少しでも母の気持ちを明るくしてくれたなら、自画自賛ながら、我が家にとって最高の流行語だと思うのだ。

  *

先日、伯母から電話があった。手がふさがっていた母は電話に出られず、そのあとすぐにかけ直した。

「ごめんごめん、仏壇ファミリーにお茶っこ上げてたからさ!」
元気に詫びると、伯母が笑った。
「なんだ仏壇ファミリーって」
「和珪が言ったのだ〜、仏壇ファミリーって。仏壇の方が人数多くなってしまった〜」

母が明るく説明する。
伯母は電話中、ずっと笑っていた。
母もずっと、笑っていた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?