フォローしませんか?
シェア
父がまだ子供だった頃から、うちの畑の土手には三本並んだ柿の木があった。いつからか父は私たちに、真ん中の柿の木だけは切るな、と言うようになった。 のちに母から聞いたのだが、職人気質で完璧主義のあの父が、トラクターの運転中、土手から落ちそうになったことがあったらしい。トラクターの下敷きになって命を落としたという訃報を、田舎では時々聞く。だけど父は、運良く柿の木に引っかかって助かったという。 「俺はあの柿の木に命助けられたのだがら。あれだけは切ってダメだがんな」 父の言いつけ