マガジンのカバー画像

【小説】太陽のヴェーダ

49
どう見ても異常があるのに「異常なし」しか言わない医者たちに失望した美咲。悪化した美咲に手を差し伸べたのは、こうさか医院の若き院長、高坂雪洋。雪洋の提案は、一緒に暮らすことだった。…
小説の本編は無料で読めます。番外編や創作裏話などは有料になることが多いです。
¥1,000
運営しているクリエイター

#同居

【小説】番外編 先生が私に教えてくれないこと(4)

太陽のヴェーダ【番外編】 先生が私に教えてくれないこと   ●嫉妬(1)

【小説案内】太陽のヴェーダ 番外編

「同居入院」開始直後から、本編ラストの、ほんの少しその後のお話まで。 『太陽のヴェーダ  先生が私に教えてくれたこと』の番外編、 『先生が私に教えてくれないこと』。 番外編は有料です。 第1話はこちら↓ 未読の方は本編から先にお読みください。 本編はすべて無料で読めます。 第1話はこちら↓

【小説】太陽のヴェーダ 先生が私に教えてくれたこと(25)

(第1話/あらすじ)   ●退院前夜 新しく住むアパートも決まった。 新しい仕事も決まった。 荷物も大方運び入れた。 手元にあるのは、貴重品と必要最低限の日用品だけ。 明日、「退院」する。 雪洋と二人で過ごす生活も、これでおしまい。 明日からは一人でやっていく。   ――何時だろうか。 美咲にしては珍しいことに、夜中に目が覚めた。 体調が安定してからは、痛みで目が覚めることなんて滅多になかったのだが。これが最後の夜と思っていたから、気が高ぶったのだろうか。 「

【小説】太陽のヴェーダ 先生が私に教えてくれたこと(24)

(第1話/あらすじ)   ●自立準備 冬の厳しい寒さを何とかすり抜け、春の盛りが過ぎ、今は五月の陽気が続いている。 朝の散歩、最近は毎日している。 膝の痛みが嘘のようになくなったから。 痛むこともあるが、時々だ。 今日も痛くない―― それだけで、何よりもありがたい。 美咲は雪洋のもとで穏やかな日々を過ごしつつも、着々と自立への準備を進めていた。 明るく前向きになった美咲の様子が嬉しかったのだろう。雪洋も美咲にいろんなことを教えてくれた。 体質に合った食べ物の選び

【小説】太陽のヴェーダ 先生が私に教えてくれたこと(21)

(第1話/あらすじ) 「美咲! どうしました!?」 雪洋の声―― 倒れたおかげで頭に血が巡り始めたのか、めまいは少し治まっていた。 「水を何回も流す音がしたから心配していたんです。嘔吐ですか? 下痢ですか? 倒れたとき頭は打っていませんか?」 ゆっくりと体を起こされる。 頭に異常がないか、雪洋が指先で探っている。 「頭は平気……。おなか、急に痛くなって……便意が、何回も、何回も……」 「下痢ですか?」 美咲はかすかにうなずき、でも、と唇を動かした。話すのがひどく億劫

【小説】太陽のヴェーダ 先生が私に教えてくれたこと(20)

(第1話/あらすじ)   ●体からのサイン 元気になります、と宣言したものの、その後美咲の体調はいまひとつ冴えなかった。 雪洋が土曜日の午前診療をしている間に昼食の用意をしてみたが、いつも以上に疲労感がある。 食欲よりも睡眠欲の方が強い。 『少し調子が悪いので休みます』 雪洋宛のメモの筆跡が我ながら弱々しい。 ベッドに潜り込む。――至福の時。 疲れと意識が、心地よくベッドに吸い込まれていった。   美咲、と伺うような囁き声がした。 薄目を開けると、雪洋がのぞきこ

【小説】太陽のヴェーダ 先生が私に教えてくれたこと(19)

(第1話/あらすじ) 冷えた体でベッドに座ったところで、美咲はぱっと顔を上げた。 「そうだ先生、好きな人いないんですか?」 「――え?」 雪洋の虚を衝いたようだが構わず続けた。 「好きな人です、好きな人! いないんですか? いい若いモンなのに」 「……どうしたんですか急に」 それまでの鬱々していた気持ちが嘘のように、美咲の心はすっきりと晴れ渡っていた。 「先生だって私と年、そんな変わらないでしょう?」 美咲の質問に、雪洋はベッドに腰掛けながら「三十二です」と答え

【小説】太陽のヴェーダ 先生が私に教えてくれたこと(6)

(第1話/あらすじ) 第2章 病名   ●白い道 美咲の体調はだいぶ回復していた。 紫斑はほとんど消え、膝も痛くない日が増えた。 ――が、やはり朝晩は時々痛み、動きもぎこちなくなって転びそうになる。 「杖を使ってみますか? 職場でも、足が悪いというアピールになるでしょう」 「杖!? いや、それはちょっと……」 老人が持っているイメージしかない。 ふと、外で車が止まる音がした。 耳を澄ましていると、ドアを開け閉めする音もする。もうすぐ夕食だというのに客だろうか。 「

【小説】太陽のヴェーダ 先生が私に教えてくれたこと(5)

(第1話/あらすじ) 「おはよう天野さん」 聞きなれない声に、美咲はびくっと肩を震わせた。 笑顔でのぞきこんでいるこの男―― ああ、昨日のお医者さん。 ええと……高坂先生。 白衣、着てる……。 「あれから眠れましたか?」 「はい、おかげさまで」 いつもより体が軽い。 それでもやはり寝起きは関節が強張っている。 横向きで寝ていたから下になった右腕は力が入らず、支えにして立とうとすると、ガクッと力が抜けて体勢が崩れた。 「体、痛いですね?」 雪洋が支えてくれる。 白衣を

【小説】太陽のヴェーダ 先生が私に教えてくれたこと(4)

(第1話/あらすじ)   ●同居入院、開始 「天野さん、一人で歩かないでください。何のために私がいると思ってるんですか」 同居は開始されたが、雪洋の目が離れると、美咲は自分一人で歩こうとしていた。 「すみません。つい、いつもの癖で……」 でも本当の理由は別にある。 「先生、普段は白衣……着ないんですよね……」 「白衣? 白衣が好きなんですか?」 「そういう趣味はありません」 「勤務中はもちろん着てますよ。スクラブ白衣ですけど」 スクラブ白衣……医院で着てた紺色のあれか

【小説】太陽のヴェーダ 先生が私に教えてくれたこと(3)

(第1話/あらすじ) 「体の痛みはいつからですか?」 「五、六年前から……」 「この紫斑は?」 「一年くらい前から時々。今は、毎日……」 診察台で仰向けになったまま、美咲は答えた。 「病院へは?」 「先月、個人病院から出された薬で一ヶ月様子をみましたけど、何も変わりません」 「先月? 一年前と、五、六年前は?」 「……五年前までは行ってましたけど、それ以降、病院へは行ってません」 あからさまに美咲の声のトーンが落ちた。 雪洋から目をそらす。美咲の口元は笑っていたが、目