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生きる力

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戻ってきた実家での田舎暮らし。里山の風景。染みるご近所付き合い。親類のありがたみ。母から学ぶ農作業。できなくてもいい。知っておきたい。
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#岩手県一関市

冬至過ぎの朝

午前5時50分。 冬至はとうに過ぎたというのに。 まだ夜は明けず、たっぷり真っ暗闇。 まだ眠そうな10歳の愛犬を連れて、散歩コースの畑へ出る。ここまで来れば、愛犬もウキウキと軽い足取り。 かと思えば今度は枯色の草むらへ鼻を押し付け、タヌキの残り香でも追っているのか。 愛犬を待つ間、私は視線を上げた。 ご近所さんちを見る。 これがすっかり癖になった。 庭のセンサーライトがついた。 あちらも今から出発らしい。 ほどなく、庭から小さな明かりが、トントントンとおりてきた。目

【地元旅せんまや】路上駐車の仕方に日本人の心を感じる

年末年始にテレビに映る神社仏閣を見ながら、ふと数年前の地元夏祭りでの出来事を思い出した。 地元千厩の夏祭りは、千厩町内の各地域から山車や踊り手たちが出され、商店街があるメインストリートを踊りながら進むパレード型のお祭り。 私の子供時代には、もっと賑わって見えた。 今は子供も夜店も少なくなってしまったが、それでも当日は町内中から人が集まる。 その年も、まだ祭りが始まったばかりの時間帯だったが、路上には駐車場からあふれた車が果てしなく並んで停まっていた。 職場から車で自宅

一歩ずつ、春

日本海側ではまた雪の空とのこと。太平洋側の岩手にある私の住みかは、いつも奥羽山脈が雪をブロックしてくれる。雪かきが大変と言いつつも、日本海側に比べれば大したことはない。奥羽山脈サマサマである。 今朝は庭に雪が少々あった。せっかくマイナスじゃない気温の日が続き、庭や路面もすっかり乾いていたのに。側溝に詰まっていた氷もようやく掻き出せたのに。 だけど雪の質はこれまでとまったく違い、水分を多く含んだ、重たい雪。庭に出ると、そんなに寒くない。庭の蛇口もクルクル回る。朝イチでも蛇口

【地元旅せんまや】今日も一日、つつがなく

車が一台も通らない道路を運転していたら、リスが横断していた。渡りきるのをのんびり待つ。 商店街では、横断歩道じゃないところから腰の曲がったおばあさんが出てきた。ゆっくりゆっくり、地面を見ながら道路を渡っている。 私の車の前を走るタクシーがそっと止まり、私も続いてそっと止まる。 おばあさんが渡りきるところで、他に車も走っていないから、タクシーがやんわり大きめに避けながら発進した。私も後に続いて、やんわり発進する。 おばあさんはゆっくりゆっくり、歩道を歩き始めていた。