好きな服を着ること

「みのりちゃんのファッション好きー!」
と友人に言われて、本当にびっくりしてしまった。
私はどちらかというとファッションには疎い方で、最近やっと自分の好きな格好が出来るようになってきたなぁ、と感じていたところだったから。

私は美人でもスタイルが良いわけでもないし、服を選ぶ時の最優先事項は、“入るサイズで尚且つ太く見えないこと”という、ファッションが好きな人からみたら、それでいいの? と言われそうな基準で以前は服を選んでいた。(今は変わった)

もちろん、好きな服はあったし、着てみたいなーと思うことはあった。
あと、この服をあんな感じの人が着たら素敵だろうなー、という視点で服を眺めるのも好きだ。
自分は似合わないけど、素敵だなー。
そんな感じ。

「私には似合わない」

多分、こう思って諦めていたのは、幼少期から投げかけられてきた母の言葉が、心の奥底にあったからなんだろうと思う。

素敵だなー、と、服を眺めていると、ため息を1つ
「それはあんたには似合わないわ。太く見えるし。こっちの方がいいわよ」

幼い私は、ただ素敵だなと思っていただけで、その服を自分が着ようとは思っていなかった。
だけれど、その素敵な服は、「私には似合わない」のだと言う。
そして、「こっちの方がいい」と言われたのは、自分の好きな雰囲気ではなくて、母が好きな感じの服。

嫌だと言えば、母は不機嫌になる。
幼い私は、自分の好きなものを着るのを諦めて、提示された服の中で1番マシなものを選ぶようになっていた。

そんなの楽しいわけがなかったし、だから服に興味がもてなかったんだ、と、今なら分かる。
だって、自分の好きな服を見るのも買うのも着るのも、今すごくうれしいし楽しいから。

母から物理的に離れて暮らすようになってから、自分の好きな服を着てもいいんじゃないかという気分になってきていた。

実家から離れてから数年経った今、
「こういう服好きだ! 着たい!」っていう服に出会って、
「そうか、私はこういう私になりたかったんだ」って気付いて、服を着るようになったところだった。

「みのりちゃんのファッション好き!」
と言われて、なんでかな、自分も肯定されたような、そんな気持ちになったんだ。
その時は
「ほんまに? ありがとう」
ってしか言えなかったけど、じわじわと、嬉しい気持ちが湧き上がってきて、にやにやしてしまっている。
マスクしていてよかったぁ。

自分に似合う服なんてないって思っていたから、今まで、友人と服を見に行きたいと思うことはなかった。
みんな、自分より素敵で、自分は醜くて。
みじめになるとばかり思っていたから。

けれど、今日、自然に
「いつか一緒に服とか見に行けたらいいね」
と、口が動いていた。

私となんて!と即座に怖くなったけど、
「いいねー! 行きたい!」
と友人は言ってくれて、また心がきゅうっとする気持ちになった。

自分の好きな服を着るって、こんなに嬉しいのか。
自分らしい服を着るって、こんなに心が軽くなるのか。


中々今はショッピングもしづらいけれど、いつか、一緒にショッピングしにいきたい。
スイーツとかも一緒に食べたりしたい。

友達と色々したいって思えたのも、もしかしたら、自分らしい服に出会えたからかもしれない。

自分の“好き”を出してもいいんだ!
という気持ちになれた。
好きな服を着ることで、こんなに気持ちが変わるなんて思ってもみなかった。
一度にたくさんは買えないけれど、ちょっとずつ、クローゼットの中を、自分の好きな服に変えていこう。


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