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鎌倉散策(グルメじゃないよ)

 僕は鎌倉を散歩する。どうしてだかわからない。鎌倉が好きかと言うと、好きなところもあるし嫌いなところもある。天気の良い土曜日、何故か鎌倉に足を向けてしまう。

 何故鎌倉なのか、思い当たることはなくもない。数年前、僕は群馬に住んでいた。週末の昼下がり、別にドライブするというわけでもなく、車を走らせて偶然車を止めたところが生品神社だった。社務所でお守り売っているような、大きな神社ではない。そこが新田義貞挙兵に地ということになっている。つまり鎌倉攻めをする出発点なのだ。

 僕は引っ越して神奈川県に住むことになった。近くに分倍河原とか、関戸とか新田軍と北条軍の合戦場があることを知った。それからだ。僕は新田義貞の何かを背負ってしまったと思う。だから僕は鎌倉に向かうのだ。

 鎌倉は軍都である。地形そのものが城なのだ。だから行き方、攻め方が難しい。切通しと呼ばれる小ぶりの峠道を抜けるか、海沿いに行くしかない。切通しは守りが堅固であり、新田軍ですら苦戦した。僕は新田義貞のたどった道を行くしかない。つまり海沿いの道だ。

 小田急線に乗って、藤沢駅へ。そこから境川沿いに江の島まで。浜沿いに延々歩き続けるのだけれども、夏のシーズンは少し歩きにくい。おやじが一人汗だくで歩くのはショーナンの雰囲気からしたら如何なものかとおもわれるだろうから。ましてカメラなんて首からぶら下げていたら、何しに来たと、変態扱いされかねない。

 それから稲村ケ崎。新田義貞が刀を沈めてここを渡ったという伝説の地である。ここは貴重な場所だ。こんもり丘の中腹に公衆トイレがある。浜つたいの道で、数少ない無料で使える公衆トイレだから。
 
 用を済ませて、由比ガ浜へ。由比ガ浜から鎌倉の町中へ。

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 僕は必ず訪れる場所がある。そこが北条高時の腹切りやぐらだ。北条高時を自害に追い込み、鎌倉幕府が終わった場所だ。『霊処浄域につき参拝以外立ち入り禁止』の石標(ちょっと前までは木の札だったと思うけれど、石標になった)がある。例えば「神奈川心霊スポット」で検索すると必ずと言って良いほどここが出てくる。最恐スポットとの呼び声も高い。ちょうどハイキングコースの出口、閑静な住宅街の際にある。隣は東照寺跡という金網に仕切られた荒地がある。

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 そう思って見ると確かに雰囲気があるような気がする。でもすぐ近くに民家もあるし、本当にヤバい場所だったら、人も住めないと思う。心霊スポットで有名になり、肝試しに来る連中が迷惑なのだ。

 ただ『霊処浄域』って、おどろおどろしくて語感がすばらしく良い言葉だ。あまりに雰囲気にハマりすぎているので、逆に心霊スポットとして煽っているのではと邪推したくなるけれども、でも深夜に来て大騒ぎするのはダメだ。近所迷惑。
 
 鎌倉幕府が終わった場所で、僕の散歩は終わる。鎌倉の町はあんまり長居できない。どうしてかと言うと、僕がのんびりできるような、カフェとかがないから。せいぜい行けるはマクドナルドとか、ルノワールとか、ケンタッキーフライドチキンとかそれぐらいである。オシャレなカフェはたくさんあるけれども、入れない。たぶんカフェとかは迷惑だろうと思う。客筋が悪くなるだろうから、僕は入るのを控えている。そして入るの怖い。

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 僕は新田義貞を背負っているのだからしょうがない。僕はグルメに来たわけではなく、戦いに来たのだから。

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