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最大筋力は何で決まる?

最大筋力の大小に影響する要因としては、主に神経系の要因と筋系の要因が挙げられる。筋力や筋パワーの最大値を高めるためにはこの2つの要因を合理的に高めることが重要となる。

①神経系の要因:筋線維の動員能力

神経系の要因とは「大脳からの運動指令を筋に伝え、より多くの筋線維を活動させる能力」といい換えることが出来る。具体的には運動単位の発火頻度や同期化(運動単位の動員能力)、拮抗筋における活動抑制などを指す。私たちが筋力を発揮する際には大脳の運動野からの指令が脊髄神経と運動神経を介して筋線維の動員を引き起こす。この際、筋線維の動員能力は最大筋力の大小に直接的に影響を及ぼす。すなわち、筋力発揮時にどれだけ多くの筋線維を動員できるかが、最大筋力の大きさと密接に関係する。

②筋系の要因:筋量と筋線維組成

筋系の要因としては、筋断面積(筋量)がまず挙げられる。一般に最大筋力と筋断面積の間には正の相関関係が見られることから、筋断面積や筋量を増加させることは大きな最大筋力を発揮するうえで重要となる。筋系の要因のうち、筋断面積や筋量は筋の量的要因として位置づけられる。これに対して筋の質的要因としては筋線維組成が挙げられる。

筋線維とは筋肉を構成する細かい細胞の束のことを指している。

収縮速度は速いが持久力に劣る速筋線維と収縮速度が遅いが持久力に優れる遅筋線維に分類される。

ある筋肉に占める速筋線維の割合が大きいと、最大筋力の発揮の際には有利に働く。実際には陸上短距離選手や投擲種目などの爆発的な筋力、パワーが求められる種目の一流選手では速筋線維の占有率が高くなり、陸上長距離選手のような持久性競技の選手では遅筋線維の占有率が高い。

筋線維組成はトレーニング によって大きく変化するものではない。遺伝により大きく支配される。

したがって最大筋力や筋パワーを高めるためには、神経系の要因(運動単位の動員能力)と筋系の量的要因(筋量)の向上に焦点をあてたトレーニングが必要となる。

※運動単位の発火頻度とは
筋力発揮時における運動神経細胞が発するインパルスの発射頻度のこと
※筋線維組成を調べる方法
微量の筋組織を採取し、生化学分析により直接的に測定する
50m走と12分間走における速度比から推定する

引用文献
はじめて学ぶ健康・スポーツ科学シリーズ 5
体力学  
(株)化学同人 2014年

医療従事者向けオンラインコミュニティ「KIUZKI」共同代表 『将来、「自分事」として働いていけるようにするために、現状の課題を知り、学び、互いに高め合っていく仲間を募集中』 https://xpert.link/community/1412