「遊びの自己目的性」とフロー理論
先日、遊びの自己目的性について書きました。簡単にいえば「何かのためになる」といった実利的な目的ベースで動くことではなく、遊びそのものが楽しいからやるといった特徴のことです。
今回はその自己目的性についてより深めていきたいと思います。これを考える上で「フロー理論」という楽しさや喜びに関する考え方はとても参考になります。
今回の記事では、自分の考えをまとめつつ、こちらの本における自己目的性について整理しましょう。
まず、本書では自己目的活動とは「自己充足的な活動、つまり将来での利益を期待しない、することそれ自体が報酬をもたらす行動である。」(p.86)と述べられています。
これをやったら「儲かる」とか「就職に役立つ」みたいな活動とは異なるというわけですね。もちろん結果として「儲かる」というのはかまいませんが、自分としては結果に関わらず「それをしていることがすでに報酬」といった状態であることが重要です。
次にそうした考え方を持つ「自己」とはどのようなものでしょうか。本書では以下のように述べられています。
「自己目的的な自己」とは潜在的な脅威を楽しい挑戦へと変換し、したがって内的調和を維持する自己である。決して退屈せず、めったに不安に陥らず、現在進行しているものごとに関わりをもち、そしてフローしている人は必ずといっていいほど自己目的的な自己を持つ人といえよう。(p.261)
そして、そうした自己目的的な自己を発達させるためには必要なものとして以下の4つを述べています。
1.目標の設定
2.活動への没入
3.現在起こっていることへの注意集中
4.直接的な体験を楽しむことを身につける
これらの4つをみると、明確な目標に対して没頭する姿が浮かび上がります。
フローの話もそうですし、「遊び」とか「楽しさ」の話をすると、「快楽」とか、「ゆるゆるで、適当で楽しい」みたいな感覚をもたれるケースがあるのですがそういうわけではないのですよね。
楽しさを維持するために、個々の可能性・能力を伸ばすということが必要であり、けして「消費的で怠惰な遊び」ではありません。
こうした、ある種「消費的でなく生産的」でありつつ、「将来の利益を期待しない活動」が、結果的に「自己の幸福」や「ある種の創造性」につながってしまうというところが面白さともいえるのかなと思います。
そのように考えると、「イノベーション」とか「新しいアイデアの創出」というのは、それをしたいのであれば、あえて「結果としてのイノベーション」は脇においておき、目の前の活動への没入や楽しさという点に目を向ける必要があるように思います。
「遊んでないではやくよいアイデアだせ!」
という言葉は実はとっても矛盾しているのかもしれませんね。
意味を手放すことについて書いた記事はこちらです。
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