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2022.10.28 〜13歳からのアート思考〜

美術鑑賞は、難しい。
そんな、なかなか教えてもらえない「美術」という学問との向き合い方について、初歩の初歩の初歩から、手取り足取り教えてもらえる本。

美術、とくに絵画は、写真という発明によって、かつてその価値が大きく揺さぶられた分野だ。
「目の前のものを正確に捉える」ことが評価され、それが生業となっていた時代は写真の登場で一瞬にして崩れ去り、「写真にはない絵画の価値とは?」「絵画が人に与えているものとは?」という答えのない問いと、絵描きたちは強制的に向き合わされるハメになる。

相当切羽詰まった状況だったと思う。しかしこれを機に、感情を表現する、音楽を絵で表現するといった表現対象や、色彩に着目する、構図に着目するといった技法など、あらゆる方向から、絵画の可能性が勢いよく広がっていく。

その発展の礎となったのが、芸術家たちの中に育っていた「自分自身の中に確立した価値観、意志を醸成し、それを外の世界に表現する」という力だ。

この本の中では「作品を鑑賞し、じっくり考える」時間を取ることが非常に大切にされている。せっかちな私はすぐ、音声ガイドや作品横解説に手をだし、「この絵は何を表しているのか」を求めてしまうが、筆者はそういった姿勢に「ちょっと待って!」と声をかける。

「これは何を表している作品なんだろう……?」というアート作品への素朴な疑問に対し、

「どこからそう思うか?(主観に対応する事実を述べる)」
「そこからどう思うか?(事実に対して感じる意見を述べる)」


という、意見と事実が交互に行き交う質問を繰り返させ、鑑賞者と作者が意図のやりとりをする。その過程で、自分の中に自分だけの考えが醸成されていく。
この探求のプロセスが美術鑑賞にしかない面白さであり、過去の芸術家たちが身につけ、芸術を高みに発展させた力なのだと、筆者は語る。

私はつい「正解らしきもの」に手を伸ばしてしまう。スキルアップしないととか、人から評価されやすい価値のことばかり考えてしまう。
それは簡単だけど、だからこそ賞味期限も早いなと、つくづく感じる。
「探求する」ということを面倒くさがってはいけないし、もっとゆっくり芸術を楽しみたいな〜と反省させられた一冊だった。

ちなみにこの本は、「美術の鑑賞の仕方」に焦点の置かれた作品のため、意図的に美術史に関する解説が少ない。
とはいえ、美術史、特に20世紀まわりの知識が前提にあると、この本が格段に面白くなるので、ぜひ「山田五郎のオトナの教養講座」をかいつまみながら読んでほしい!(ピカソ、ゴッホ、モネ、セザンヌあたりを見ればなんとなくつかめる。私のオススメはスーラ)


ちなみにオーディオブックもあるよ!


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