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2022.11.19〜マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ〜

おいしい料理が出てくる小説には間違いがない。

とある商店街の片隅で、深夜にひっそりと営業しているカフェ「マカン・マラン」。様々な理由でその場所に流れ着いた人々が、ドラァグクイーンの店主シャールさんと、そこでもてなされる料理を通じ、心と身体に栄養を取り戻していくお話。

出てくる料理はどれも細やかで、時間をかけ、丁寧に作られたものばかり。そして、お店に現れる人々の心の内も、それらの料理と同じくらい、とても、とても繊細。
4つのエピソードそれぞれの登場人物が葛藤している内容は、単純なものではなく、決して一言では片付けられない。また、シャールさんとお話して、カフェで食事を取ったからすぐ問題解決!という展開にもならない。
でも、登場人物たちは、ほんのちょっとだけ肩の力を抜いて生きていけそうだという安心感と共に、お店を出て明日に向かっていく。

そんな、なかなか伝わりづらい心の内をまるごと受け止めるシャールさんと、彼らとの心の通わせをみていると、
ああ、そうだよな、人ってそんな、わかりやすい感情だけで構成されている生き物じゃないよな、ということを思い出させてくれる。

身近な人の心の機微や、自分自身の感情に、時間をかけもっと大切に向き合っていきたいと感じる一冊でした。

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