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【旅行記】RISING SUN ROCK FESTIVAL 2002 #2

(前編はこちら)

3 ミサイルマン  

 
テントで苦労して火を起こす人たちを尻目に(謝)、向かったのはEARTH TENT。HERRMAN.H AND THE PACEMAKERS の演奏が始まっていた。
このバンド、高市氏のPOP JAMで知ったのだが、ウルフルズ系直球ロックバンドに、一人だけヘロヘロ踊る意味無しダンサーがいて、それが決して狙った感じじゃなく、なんだか好感が持てていたのだ。
ライブも、ストレートで良かった。
 
テントに戻るとモンゴル800が遠くで歌っていた。炭もすっかり着火していたのでバーベキューに参加させてもらう。何よりも生ラムがうまい。なんでも北海道ではスーパーでも生のラム肉が売ってるそうだ。全然臭みがなくて、塩胡椒だけで相当いける感じ。モンゴルの歌声を聞きながら、ガンガン食べる。
 
んでハイロウズ。そういやメインステージに行くのはこれが初めて。去年のハイロウズは「14歳」リリース直後で、メチャメチャ盛り上がった。昼間のライブで結構疲れていたはずなのに、両足でジャンプすると驚くほど高くジャンプできた。ヒロトのように、着地する足でそのままジャンプすると、もっともっと高くジャンプできた。その時の、空を浮遊しているような感覚は今も忘れられない。あのへんから、ロック熱が戻ってきたのである。
 
なんてことを思い出していると、メンバーが入場。
一曲目は「ママミルク」。歌詞は3番までふくめても10行にも満たない、セッション中心の曲。うむむむ。なんだかイヤな予感がした。
 
その後やった曲は「いかすぜOK」「青春」「相談天国」「ミサイルマン」あと新曲を何曲か。全体的に観客側の気持ちを微妙にかわすようなステージだった。MCも「お前らー(ピンバッジの)ガチャガチャやったかー?ハイロウズ出たかー? それはハズレだよ。モンゴル出るまでやらないと(笑)」的な感じ。
 
4月にブリッツのライブを見た時も感じたけれど、最近のハイロウズは決して、自分たちのあふれ出る物をステージで表現していないように思える。
ステージで下半身を出したとしても、生身をさらけ出してはいない。あえてそれをしないようにしているようにも思う。前へ前へと進みすぎる事で、バンドに歪みが入る事を怖れているような、そんな気もする。しかしそれで本当に満足が出来るのだろうか?ヒロトとマーシーは、もっと正面から対峙するべきなのではないか?そんな事を考えた。
アンコールは「SUPERSONIC JET BOY」で一日目のライブが終わった。
 
その後はテントでバーベキューしながら、ダラダラと過ごす。夜になるとさすがに北海道。もうウィンドブレーカーを着ても若干寒い感じ。12時を回ったあたりで高市氏と、夜の会場を探索に出かける。僕らはメインステージの近くにテントを張ったのだが、結構遠くの果てまで会場が続いている事に驚く。そして、テントサイトの果ての方で、やけに明るく音楽がなっている場所が見えた。周りが暗いだけに、本当になんか竜宮城みたいな怪しい感じ。近づいていくと、DJブースがあって、芝生の上で何十人かがヘロヘロ踊っていた。
 
これはいいっつって、僕らは近くでテキーラのロックを買って(寒いのね)、その輪に加わった。DJは田中なんとかという人、有名な人だそうな。
 
かけてる曲が、結構ロックファンを意識したものだったらしく高市氏は曲が変わるたびにのけぞったり、笑ったりしていた。僕には「ロッキーのテーマ」くらいしかわからんかったっす。
 
午前2時くらいまで踊った後、テントに戻った。何人かはもう寝ていた。バーベキューの炭は若干明るさを保っていた。僕はこの為に買った寝袋に潜り込んだ。
 
 4 TWISTIN'DAY
 
テントに差し込んでくる日差しの強さで目が覚めた。二日目もすげーいい天気。まだ8時半だけど、友達はもうビールを飲んでいた。顔を洗ったり、まだちょっと火の残っている炭で、昨日の残りのキャベツとかボテチなんかを焼いて遊んでいるうちに、どんどん日は昇っていく。でも、今日も風があるから、去年のような殺人的な暑さではない。
 
今日の開始は午後1時。EARTH TENTの一番手は楽しみにしていたTHE NEATBEATS! 開始前からかなり熱気が高まっていた。いつものように黒のスーツで決めたメンバーが登場すると、もうそんだけでメチャメチャ盛り上がる。(いや自分的に)
一曲目は「俺にまかせろ」このバンド、HPでも何度か書いているけど、本当にすごい。気が狂ったマージービート。コロンブスの卵のビートルサウンド。しかも脳天気な初期ルースターズでもあったりして。

会場はツイストやらモンキーダンスなんかでガンガンぶつかりあう。土けむりがモウモウ上がって、それとそれぞれの汗の匂いが混じにあって、なんか野球部の部室のような匂いに包まれる。一曲の長さはどれも3分以内、それを短い大阪弁のMCをはさんで、ビシビシと繰り出していくと、テンションはどんどん上がっていく。でも顔は笑ってる。
 
言葉にすると「バッカだなぁ」みたいな気持ちなんだけど、ただのバカじゃないんだよなぁ。愛と本気のバカなんすよね。
 
もうさ、人生、否応なしに何かの道を選ばないとやってけない、っていうか、そうせざるを得ないじゃないすか。この年になってくると。その時に「本気でやるぜ、マージービートをさ」って考えたんだと思うんすよね。真面目な顔で考えて。
いやホント気が狂ってるし、クールだと思うんすよ。なんか変な例えだけど、落語的な感じ。たぶんメンバーは僕らと同じ年代なんすよね。「行くとこまで行けや」そんな言葉をかけたいっす。
 
おぼえている曲は「Hamburug Twist」「59BAR」。
「Twistin' day」ではドラムがボーカルを取る。ギターとベースが機関銃のように客席に向けてポーズを取る。「黒いジャンパー」で、僕は最前列にダッシュした。あとはよく記憶に無いっす。間違いなく今回のベストアクト。
 
ライブが終わって放心状態になっていると、HP「ハヴァナイスディ」のアユチンさんと出会う。北海道在住のアユチンさんは、ピーズつながりで知り合って、去年のエゾで初対面したのです。奥田民生の途中から流れてきたそうで、ちょっと悔しそうだった。僕は「でしょー」なんつって、自分の手柄のようにニートの出来を自慢したりした。
 
日差しも強くなってきていて、「ここでビールを飲んだら、間違いなく去年のようにダウンする」と思ったのでポカリなんかを飲んで回復を図る。
 

次は同じくEARTH TENTでデキシード・ザ・エモンズ。全然知らなかったんだけど、これも相当格好良かった。ソウルをベースに置いたビートバンド。記憶が減退してるので、うまく形容できないけどズボンズなんかに近い感じ。

笑えるのはボーカルの激しいMC。
「後ろの方は乗ってんのかよ?!そこら辺でぼさーと歩いている奴はどーなんだよ!!!!」
とにかくこの人、ぼさーっとしているのが、何よりも許せないらしく、何かにつけて「後ろでぼさーとしてる奴、乗ってるのか!!」とか鋭く指摘していく。


さらに「俺達はどーせ天国になんかいけねーんだよ、わかってんのかよー」みたいな事を言ったかと思えば
「この手で幸せをつかむんだぞ、わかってんのか、おめーら」なんて、首尾一貫していないこと甚だしい(笑)でも、その強引なMCに大笑いしながらも、会場はどんどん一体化していく。僕らも相当引き込まれた。
 
で、そのまま次のKING BROTHERSになだれ込む。これは、エモンズをさらに崩して、暴走させた感じ。最初はとっちらかってたけど、段々グルーブとしてまとまってきて最後は相当盛り上がった。(形容が乏しい)
 
でもほんとに、このEARTH TENTの3連発は決まっていた。
 
5 歩いて帰ろう

ライジングサンで、一番好きなのは夕暮れにさしかかる頃なんすよね。
日中の厳しい日差しが和らいで、風が吹き抜ける時間帯にそんなに気合い入れて見る感じではないバンドの、だけど素敵な演奏を、ビール片手にぼんやりと見ている。そういう思いがけないボーナスみたいな瞬間がフェスの一番の宝物のような気がします。
 
去年はそれがスピッツでした。CDを持って無くても、嫌でも知っている「ロビンソン」とか「涙がキラリ☆」なんかの曲を本当にしっかりとしたバンドサウンドで聞かせるのを聞いて、やっぱ大したもんだなぁ、いいバンドなんだなぁなんて(偉そうに)思ったりしました。
ボーカルの草野も、自分たちが若干他のメンツから外れているのを意識してか、「楽しそうだねぇ、君たち」なんてシニカルなMCをしたりしてたけど
最後はそれでも「オレも楽しくなってきたよ」なんつって、素直にその場の雰囲気を楽しんでいる感じに変わってきたのです。
 
 
今年その時間帯に見たのは斉藤和義でした。メインステージではなく、会場の端に作られた小さなステージなんだけど、彼が歌い出すとテントから、売店から、「こうしちゃいられん」みたいな感じでステージに向かって、女の子なんかが走り出してきました。すごい笑いながら。
 
で 今年も良い風が吹いていました。ステージのあちこちには北海道らしく干し草の塊が置いてあって何人かは得意気にその上に座って特等席で聞いています。僕は何杯目かのビールを飲みながら、相当いい気分になってました。なんつーかハッピーになるのは、そんなに難しい事じゃないよなぁ みたいな。そんな事をぼんやりと考えながら。
 
 
 走る街を見下ろして のんびり雲が泳いでく
 誰にも言えないことは どうすりゃいいの? おしえて
 
 急ぐ人にあやつられ 右も左も同じ顔
 寄り道なんかしてたら 置いてかれるよ すぐに
 
 嘘でごまかして 過ごしてしまえば
 たのみもしないのに 同じ様な朝が来る
 
 走る街を見下ろして のんびり雲が泳いでく
 だから歩いて帰ろう 今日は歩いて帰ろう

 
 
良く通る声とタイトなギターで、彼が歌ったのが「歩いて帰ろう」でした。
僕は「ポンキッキーズ」なんかで聞いた事があるくらいで、どっちかっつーと、この手の曲はたぶん誰かがカラオケで歌ったら「けっ」って思うような類の人間なんですが、その時は、本当に純粋に心に入ってきました。
 
清志郎じゃないすけど
「始めに感じたままでいいさ」
そんな感じを思い出しました。
 

(旅行記はここで終わっていた)

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