発行体のチーム構成
以前の投稿で、IPOの関係者を紹介しました。今回は、その中でも発行体の理想的なチームメンバーについて触れていきたいと思います。
前回の投稿では、CFOをリーダーとして、財務会計部門、事業部門、IR部門、管理部門を中心にプロジェクトチームが組成されるとお話ししました。
CFO
CFOは、プロジェクトのリーダーとして必ずいることになるだろうと思います。発行体の財務の最高責任者であり、アメリカでIPOを進めるにあたっては、
・なぜ発行体が日本ではなくアメリカでこそ評価されると考えたのか
・発行体の財務状況
・調達した資金をどのように使用していくのか
・放出する株式はどれくらいか
・想定の時価総額はどれくらいか
など全体のエクイティストーリーを描いている責任者として、プロジェクト全てをリードすることになります。
エクイティストーリー自体は、引受証券を務める投資銀行が全面的にサポートします。しかし、その前提として、発行体としての強い思いは持っておく必要がありますし、これを投資銀行と意見をぶつけ合う気概が一番大事かな、と思ってます。(精神論みたいですが。。。)
会計部門担当者
月次で締めれるくらいの体制は必要かと思います。また、会社の会計全体を見渡せる担当者は英語を使えた方がいいかと思います。
というのも、米国監査法人から、会計監査を受けますので、監査対応が必要になります。CFOも監査対応を行うことになりますが、CFOに全てを任せるわけにはいきませんので、会計の大部分については、この会計部門の責任者が英語で対応できるのが理想かと思います。
会計基準については、多くの会社が日本会計基準(J-GAAP)かと思いますが、その場合、米国会計基準(US-GAAP)か国際会計基準(IFRS)にコンバージョンする作業が必要になります(仮に、直接IFRSなどを適用しようとしても、税務申告はやはり日本基準の個別計算書類を作成することになろうかと思います)。
社内でこれができるに越したことはありませんが、リソースの問題もあると思いますので、外部の専門家にコンバージョンを依頼するという手もあるかと思います。
事業部門
事業の内容について深い理解をし、CFOとともに投資銀行にインプットするのが主な役割かと思います。CEOが一番の適任ではありますが、ここでは、IPOプロジェクトの日常的なやり取りを行う担当者を想定しており、執行役員や事業全体をよく理解する方がいると心強いです。
英語のスピーキングと質疑応答の対応力次第では、場合によっては、この方がロードショーするのもありかと思います。
IR部門
IPOにあたっては、Form F-1 (=有価証券届出書のようなもの)の提出前からQuiet Periodという発行体の広報活動に気を使わないといけない大事な期間が発生します。これは、Form F-1提出後も同様です。いわゆる、Gun Jumping規制の問題です。
また、上場後には、発行体の開示には気を使わないといけません。
このように、開示全般を管理し、また、PR部門との調整が必要な部門としてIR部門が必要になります。ただ、以下の管理部門で一手に対応してもいいかもしれません。
管理部門(主に総務・法務)
発行体の社内規定管理や契約書管理、株主総会運営、証券代行や預託証券との調整などを担当します。また、発行体カウンセルからのデューディリジェンスや証券会社からのデューディリジェンスでは主に窓口として対応することになると思います。デューディリジェンスの過程で、財務経理分野以外で必要な対応があれば、恐らくこの部門になるかと思いますし、その後、上場直前の株式発行手続やその準備手続でも対応するなど、CFO、会計部門担当者とともに、プロジェクト全体を通してカナメになるかと思います。
英語はどのくらい必要?
とにかく、できるに越したことはないです。
読み書きだけでもなんとかなりますが、最低、一名は、物おじせずにスピーキングできる人は社内に必要かと思います。この「物おじせずに」というのは、ただ流ちょうに、というわけではなく、発行体の事業を理解した上で、ロジカルに話せるレベルまで必要かと思います。逆にこれができれば、ネイティブレベルではなく、日本語なまりの英語でもいいかと思います。
そして、「とにかく、できるに越したことはない」と言ったのは、この最低一名の英語ができる人だけに頼りすぎると、その人にしわ寄せがきて、業務過多になってしまうことから、各担当者で極力英語でやり取りできるようにした方がいいだろう、という趣旨です。各担当者が、上のレベルではないとしても、各人で(多少間違い、不正確でも)英語でやり取りできるだけの自信をもっている必要はあるのかな、と思います。