銭湯のおっちゃん・銭湯 de 心理学講座?! ~幼馴染の教授現る!~
「なぁ、店主。この前テレビで見たんやけど、心理学って色々あるんやなぁ。」
湯上りの一杯をぐびっと飲み干しながら、おっちゃんは新聞の折り込み広告を指差した。「心理学で人生を豊かに」なんて書かれた、怪しげなセミナーの広告だ。
「心理学か? 人間の心って複雑やなぁ…。」
番台店主は、遠い目をして答えた。何か悩み事でもあるのだろうか。
「そうやなぁ。人の心は、わからんことだらけや。まるで、女心みたいに…。」
おっちゃんも、遠い目になる。すると、ちょうどその時、脱衣所から上品な雰囲気の紳士が出てきた。
「おーい!久しぶりやなー。」
「あれ、健太郎か?!」
なんと、おっちゃんの幼馴染で、大学で心理学を教えている健太郎教授だったのだ。
「こんなところで会うとはなぁ。奇遇やなぁ。」
「せやなぁ。元気そうやな? まだ心理学の研究してるんか?」
「ああ、してるしてる。心理学は奥が深いからなぁ、研究しても研究しても、尽きることがないわ。」
「へぇ~、心理学って、そんなに色々あるんか?」
「せやで。今日はちょうど時間もあるし、ちょっと教たろか?」
「おお、頼むわ!」
こうして、思いがけず銭湯の憩いの場で、心理学講座が始まった。
1. 認知心理学
「まず、『認知心理学』っていうのは、人間の思考や記憶、学習といった心の働きを研究する分野なんや。」
「認知…って、ようわからんなぁ。なんか、難しい言葉やな。」
「簡単に言うと、人間がどうやって物事を理解したり、覚えたりするんかを研究する学問や。」
「なるほどなぁ。うちの息子も、もっと認知心理学を勉強したら、成績上がるんかな?」
2. 発達心理学
「次は、『発達心理学』。これは、人間が生まれてから死ぬまで、どのように心や行動が変わっていくのかを研究する分野や。」
「へぇ~、赤ちゃんから老人まで、色んな人の心を研究するんか。まるで、人生の縮図みたいやな。」
3. 社会心理学
「『社会心理学』は、人間が社会の中でどのように行動し、他者とどのように関わるのかを研究する分野や。」
「なるほどなぁ。人間関係の心理学ってわけか。うちの嫁はんとの関係も、社会心理学でなんとかできるんかな?」
4. 異常心理学
「『異常心理学』は、精神疾患や心の問題について研究する分野や。」
「中々センシティブな問題系やな、いちがいにこうすればいいとか、答えは出にくい分野っぽいな!」
「まぁ、せやな。心の病気で苦しんでる人はたくさんおるんや。それを理解して、治療法を探るのが異常心理学の目的や。」
5. パーソナリティ心理学
「『パーソナリティ心理学』は、人間の性格や個性について研究する分野や。」
「パーソナリティ…? なんか、横文字ばっかりで覚えられへんわ。」
「簡単に言うと、人の性格が、なんで違うのか、どんな種類があるのかを研究する学問や。」
「なるほどなぁ。俺も、もっと明るいパーソナリティになりたいわ。」
6. 生理心理学
「『生理心理学』は、脳や神経系といった体の仕組みと、心の働きとの関係を研究する分野や。」
「生理…? なんか、保健体育の授業みたいやな。」
「まぁ、そう言うな。人間の心は、体と密接に関係してるんや。それを科学的に解明するのが生理心理学や。」
7. 比較心理学
「『比較心理学』は、人間以外の動物の行動や心理を研究する分野や。」
「動物の心理学? 犬や猫の気持ちが分かるんか?」
「そうや。動物の行動を研究することで、人間の心理をより深く理解することができるんや。」
8. 臨床心理学
「『臨床心理学』は、心の問題を抱える人を支援するための心理学や。カウンセリングなどが代表的な方法やな。」
「なるほどなぁ。心の悩みを聞いてくれるんか。まるで、銭湯の店主みたいやな。」
9. 教育心理学
「『教育心理学』は、より効果的な学習方法や教育方法を研究する分野や。」
「へぇ~、教育にも心理学が役立つんか。うちの息子も、教育心理学を学んだ先生に教えてもらいたいなぁ。」
10. 産業・組織心理学
「『産業・組織心理学』は、職場環境や組織における人間の行動を研究する分野や。」
「なるほどなぁ。会社で働く人の心理学ってわけか。俺も、もっと仕事が楽しくなるように、産業・組織心理学を勉強してみようかな。」
エピローグ
「ふぅ~、心理学って、ほんま色々あるんやなぁ。」
「そうやろ? 心理学を学ぶことで、自分自身や周りの人をもっと深く理解できるようになるんや。」
「健太郎、今日はありがとうな。おかげで、心理学のことが少し分かったわ。」
「どういたしまして。たまには大学の講義を聞きに来たらどうや?」
「おお、ええな! 健太郎の講義、聞いてみたいわ。」
おっちゃんは、心理学への興味と幼馴染との再会を喜び、銭湯を後にした。
…後日、おっちゃんは大学の講義に潜り込み、学生たちに混じって心理学を学んでいる姿が目撃されたとか、いないとか…。
【巻末資料】
心理学のジャンル、もっと詳しく!
銭湯で健太郎教授から教わった心理学のジャンルについて、もう少し詳しく解説しておこう。
1. 認知心理学
人間の思考、記憶、学習、言語理解、問題解決、意思決定など、様々な認知プロセスを研究する分野だ。人間の知覚、注意、記憶、言語、思考といった能力がどのように働くのか、また、それらの能力がどのように発達し、変化していくのかを探求する。
認知心理学は、1950年代に「認知革命」と呼ばれる心理学の潮流の中で誕生した比較的新しい分野だ。代表的な学者には、 ウルリック・ナイサー や ジョージ・ミラー がいるぞ。
2. 発達心理学
人間が生まれてから死ぬまでの発達段階における、心身の発達や変化を研究する分野だ。乳幼児期、児童期、青年期、成人期、老年期といった各段階における、認知能力、社会性、情緒、人格などの発達を研究する。
発達心理学の先駆者には、子どもの認知発達を研究した ジャン・ピアジェ や、精神分析の立場から発達段階を提唱した ジークムント・フロイト がいる。
3. 社会心理学
人間が社会の中でどのように考え、感じ、行動するのかを研究する分野だ。社会的な影響、対人関係、集団行動、態度、偏見、ステレオタイプなど、社会における人間の心理や行動を研究する。
社会心理学は、20世紀初頭に クルト・レヴィン らによって確立された。レヴィンは、「人は場によって行動が変わる」という「場の理論」を提唱したことで有名だ。
4. 異常心理学
精神疾患や心理的な問題、異常行動などを研究する分野だ。うつ病、不安障害、統合失調症、パーソナリティ障害など、様々な精神疾患の原因、症状、経過、治療法などを研究する。
異常心理学は、精神医学と密接に関連しており、 エミール・クレペリン や カール・ヤスパース などの精神科医が重要な貢献をしている。
5. パーソナリティ心理学
人間の性格や個性、気質、その形成過程などを研究する分野だ。パーソナリティの構造、特性、発達、個人差、測定方法など、様々な側面からパーソナリティを研究する。
パーソナリティ心理学は、 ゴードン・オールポート や レイモンド・キャッテル らによって発展してきた。彼らは、パーソナリティを構成する特性を特定し、測定する方法を開発した。
6. 生理心理学
脳や神経系、内分泌系などの生理的なメカニズムと、心理的な現象との関係を研究する分野だ。脳波、神経伝達物質、ホルモンなどが、人間の感情、認知、行動にどのように影響するのかを研究する。
生理心理学は、 ヴィルヘルム・ヴント が設立した世界初の実験心理学研究室から発展してきた。ヴントは、心理学を生理学から独立した学問として確立しようとした。
7. 比較心理学
人間以外の動物の行動や心理を研究する分野だ。動物の認知能力、社会性、コミュニケーション、学習能力などを研究し、人間との共通点や相違点を明らかにする。
比較心理学は、 チャールズ・ダーウィン の進化論の影響を受けて発展してきた。 コンラート・ローレンツ は、動物行動学の創始者として知られており、動物の行動を本能の観点から研究した。
8. 臨床心理学
心の問題や精神疾患を抱える人を支援するための心理学だ。心理検査、心理療法、カウンセリングなどを通して、心の問題の診断、治療、予防を行う。
臨床心理学は、 ライトナー・ウィトマー が設立した世界初の心理クリニックから発展してきた。ウィトマーは、子どもたちの学習障害を治療するために、臨床心理学の手法を開発した。
9. 教育心理学
学習過程、教育方法、学習環境などを研究し、より効果的な教育方法を開発するための心理学だ。学習者のモチベーション、認知能力、学習スタイルなどを考慮し、教育現場における問題解決に役立てる。
教育心理学は、 エドワード・ソーンダイク らによって発展してきた。ソーンダイクは、学習に関する実験を行い、「試行錯誤学習」の理論を提唱した。
10. 産業・組織心理学
職場環境、組織行動、リーダーシップ、人事管理など、産業・組織における人間の心理や行動を研究する分野だ。従業員のモチベーション、生産性向上、組織開発、人材育成などに貢献する。
産業・組織心理学は、 ウォルター・ディル・スコット や ヒューゴ・ミュンスターバーグ らによって発展してきた。彼らは、心理学の原則をビジネスや産業の分野に応用しようと試みた。
注釈
●各心理学のジャンルは、互いに関連し合っており、明確な境界線があるわけではない。
●上記以外にも、多くの心理学のジャンルが存在する。
●各ジャンルの提唱者は、必ずしも一人ではなく、複数の学者が関わっている場合もある。