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脂肪幹細胞を抽出する“セリューション”との出会い

今回も、この僕のnoteを開いていただきありがとうございます。

あっという間に5回目になりました。
これまで医師を目指し、外科医を経て
美容外科医として歩み出すまでをお話ししてきましたが
いよいよ、今回からは “再生医療”について語っていきたいと思います!
どうぞ、お付き合いください。


■“セリューション”との出会い

聖心美容クリニックが、再生医療への取り組みをスタートしたのは2007年。
内容もいろいろとアップデートして、
現在では、豊胸やエイジングケア、毛髪再生などの治療を行っています。

今でこそ、美容外科における再生医療の活用は珍しくありませんが、
2007年当時はほとんど認知されておらず、
当院も手探り状態からのスタートでした。

さて、聖心美容クリニックが
再生医療に取り組むことになったきっかけは、
2004年のある朝、突然かかってきた1本の電話でした。
*詳しくは4回目のnoteでもお話ししていますので、ぜひ、ご一読ください!

前回のnoteでもお話ししましたが、
電話の主は、僕の九州大学時代の恩師、杉町圭蔵先生。

電話の要件をざっくり説明すれば
「セリューション」という医療機器を使いたいから、
そのサポートをしてくれないか?という依頼でした。

「セリューション」とは、アメリカのサイトリ・セラピューティクス社(以下、サイトリ)が開発した医療機器のことで、脂肪組織から幹細胞を高精度に抽出することができます。

杉町先生は、アメリカでセリューションの存在を知り、
乳癌患者の乳房再建術に使うため、九州中央病院(杉町先生が院長を務めている病院)に導入したいとお考えになったようです。

杉町先生の電話で、僕は初めて「セリューション」という名前を聞きました。
脂肪細胞の中に幹細胞が存在することを、世界で報告されたのが2001年。
日本では幹細胞についての認知度が低く、当時の僕の中には、「幹細胞」「再生医療」といったキーワードは全くありませんでした。

まさに、この1本の電話が
聖心美容クリニックの再生医療への道を拓くきっかけになったのです。

■再生医療は美容にも使える!

乳房再建術にはインプラントを挿入する方法以外に
脂肪注入法もあります。

しかし、乳癌患者さんの場合、放射線治療などの影響があって、
せっかく脂肪を乳房に注入しても生着率(脂肪が残る率)がとても悪いのです。

セリューションを使った乳房再建術では、
患者さん自身の脂肪から幹細胞を含む間質血管細胞群(SVF)を抽出し
活性度を高めてから注入する脂肪にまぜて乳房に移植します。
これにより移植された脂肪が生着しやすく、長く留まることが期待されました。

僕は、杉町先生とセリューションを使った乳房再建手術を経験してすぐ、
「これは、豊胸に使える!」とピンときました。

美容の豊胸術でも自分の脂肪を注入する方法がありますが、
脂肪の生着率がいい人もいれば、悪い人もいます。
この個人差が大きな課題のひとつでした。

セリューションを使えば
脂肪の生着率を大幅に上げられるかもしれません。
そこには、サイトリ社のドクターも来ていたので、
いろいろと話を聞くことができました。

そうして、僕は「セリューションは豊胸に活用できる」と確信したのです。

■聖心美容クリニックにセリューションを導入!

すぐにセリューションが豊胸手術に有効だとは気づいたものの、
プロジェクトが始まったばかりの段階で「セリューションを僕も使いたいです!」と申し出るのは、さすがに失礼というものです。

そこで、まずはプロジェクトに携わらせていただき
経過や結果をお聞きしてからにしようと思い留まりました。

そして、プロジェクトの終盤。
「美容医療と再生医療の融合」というアイデアが僕の中に明確になってきた頃です。

いよいよ杉町先生に
「セリューションは、美容の豊胸分野でも活用できると思うんです」
と切り出したところ、
杉町先生は「ぜひ、やりなさい」と。
そこからはスムーズでした。

杉町先生のお力添えもありサイトリ社とも交渉して、
2007年、聖心美容クリニックはセリューションを導入することになったのです。

セリューションを導入することで、聖心美容クリニックの豊胸術のステージは大きく変化を遂げることになります。

次回は、セリューションを使った豊胸手術について、もう少し踏み込んでお話ししたいと思います。

続きのnoteもお読みいただけたら嬉しいです。


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