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聖心美容クリニックの新しい試み

こんにちは!
50回目のnote。
何をテーマにしようかと考えていました。

前回は聖心美容クリニックの30年を振り返ってみましたが、
今回は今、進めているユニークな研究についてお話しできたらと思います。

最後まで、ぜひ、お付き合いください!

■アンチエイジングの取り組み

今、多くのクリニックで若返り治療の取り組みが行われています。

例えば、患者さんの皮膚を少し採取して、肌細胞を培養して線維芽細胞を増やし、本人の皮膚に戻すことで、シワやたるみを改善する「肌細胞補充療法」という治療があります。

年齢と共に減少していく肌細胞の量が増えることで、肌のハリや弾力を支えるコラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンなどを生成する機能が戻り、老化の進行を遅らせるというアプローチです。

しかし、この治療は効果のある人にはあるのですが、ない人にはなく効果があっても非常にマイルド。

自分の皮膚の細胞を培養して線維芽細胞を増やし、
目の下に注入すると小じわやくまが少し良くなることもありますが、
顕著に効果が出ている印象はありません。

そうしたなか、僕はより良い治療法を求めて
情報を収集し、研究を続けてきました。

■ユニークな共同研究

今、動物実験レベルではありますが、あるユニークな共同研究をしています。

例えば、60歳の人の皮膚から細胞を採取したとしましょう。
その肌細胞を培養して増やし、コラーゲンやエラスチンなどの多様な成分が分泌されるとします。
もちろん、それらはとても有益なものかもしれません。
しかし、あくまで60歳の細胞由来のものであることに変わりないのです。

では、60歳の人から採取した細胞を、特殊な環境下で培養して若い線維芽細胞に変換し、若返った線維芽細胞を増やして、本人に戻すとしたらどうでしょうか。
つまり、60歳の人が20代の頃の自分の細胞を使うということです。

常識で考えたら、これは自分が20代の頃に細胞を採取しておかないと無理ですが、それが可能になるかもしれないのです。

「年をとった細胞を若くする」ということは、
細胞を初期化(リプログラミング)したり、若化させたりすること。
つまり、細胞を分化する前の状態に戻すことを意味します。

細胞の初期化で有名なのがiPS細胞です。
2006年、山中伸弥教授らのグループが、マウス由来の体細胞に4つの遺伝子を組み込むことで細胞の初期化に成功。続いて2007年には人間の皮膚細胞でも同じようにiPS細胞の作製に成功しています。

iPS細胞を医療に応用するうえで問題になるのが、発がん性です。
発がん性のメカニズムについては、iPS細胞を作製する際に投与する細胞の初期化に関わる4つの遺伝子が関与しているのではないか、また未分化の細胞が残存してしまうからなど、いろいろな考えがあります。

アンチエイジング治療は何よりも人体に安全であることが大前提。
今、僕たちが行っている共同研究では遺伝子を使わずに、ある環境下で年をとった細胞を若い細胞に戻し、その結果を観察しています。

アメリカで行われたマウス実験によると、年をとったマウスに若いマウスのエキスを移植してみたら、若くなったというデータがすでにあり、人間への応用が期待できそうです。

このユニークな研究は、実用化の見通しがたっており、
成功すれば、美容医療と再生医療のフィールドのなかで、より良い治療法を開発につながるでしょうし、美容医療のあり方にも大きな変化をもたらすかもしれません。

いつか、この共同研究の結果をご報告できる日が来ると思います。
乞うご期待!


再生医療は、世界各国で研究されており、
現代の医療に大きな変化をもたらすことは間違いないでしょう。

再生医療は発展途上で、知られていない部分も多いのですが、
とてつもなく広い可能性を秘めています。

より安全に適切な再生医療を美容医療に応用するためには、
僕たち医師の経験、知識、高い技術力が必須。

だからこそ、学び、研究し続けなければならないと思っています。


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