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自分の面白いのコンパスは正しいですか?

薄暗い道をテクテクテクと歩く。今日は上も下も靴も黒だ。不注意なドライバーがいたら轢き殺されるなと思っていたら、後ろから自動車がくる音がしてピキッとなる。

歩行者用の信号がチカチカチカと緑色に点滅する。後ろから今度はロードバイクを飛ばした大学生が猛スピードで右側を横切る。ライトもつけていない。殺される確率はロードバイクの方が高そうだ。

たぶんやめたほうが生命にはいいのだが、歩きながら意識を脳の奥へとやり考える。

昨日読んだエッセイのことだ。正確には半分まで読んだエッセイだ。最近気になっている若手有名人が凄いと絶賛したエッセイ。これがどうにもこなかった。

ノット・フォー・ミー。たぶんそうなのかもしれない。もう少し若ければ、つまらないと言い切ったかもしれない。でも、歳をへてできなくなった。いま歩く帰り路のように薄暗く、不安だ。

感性が完全に鈍っているからつまらないと感じているのではないかと。

面白いものを嗅ぎ分ける勘だけは少し自信があった。でも、それがそのエッセイにはきかない。自分に自信がなくなっているから不安になる。

面白いと言われるものを、面白いと感じられなくなる。歳をとることの恐怖は容姿でも、体力でもなく、そこにある。ぞっとした。

老いという薄暗い道をテクテクテクと歩く。進んでいった先に明かりは見えるだろうか。後ろから何かがくる音がしてピキッとなる。諦めだ。まだ追い付かれたくないと早歩きになる。

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