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変わってゆくことで、この気持ちや美しさを伝えていきたい


思い出した言葉がある。

「いつか、ある人にこんなことを聞かれたことがあるんだ。たとえばこんな星空や泣けてくるような夕日を一人で見ていたとするだろ。もし愛する人がいたら、その美しさやその時の気持ちをどんなふうに伝えるかって?」

「写真を撮るか、もし絵がうまかったらキャンバスに描いてみせるか。いややっぱり言葉で伝えたらいいのかな」

「その人はこう言ったんだ。自分が変わってゆくことだって……その夕陽を見て、感動して、自分が変わってゆくことだと思うって」
引用:星野道夫「旅をする木」

僕にも、感動して自分が変わってゆくことで、この気持ちや美しさを伝えていきたい。そう思う出来事が6月13日から今日までの間にあった。

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言葉の企画を通して自分らしい生き方を見つける講座「言葉の企画2020」が6月13日から開講した。コピーライターの阿部広太郎さんが講師をつとめ、昨年みなとみらいのBUKATSUDOで始まったこの講座。今年は昨今の状況を考慮しオンラインでの開催となった。これから半年間、月一回のペースで出される課題に対して企画書を提出する。その中で学びを深めていく講座だ。


講義を一言で表すなら密。進むスピードも早く、メモをとるのがギリギリ。
画面を見ながらノートに書き写すのではもはや間に合わず、耳で話を聞きながら一つも聞き漏らすまいと一心不乱にメモをとった。視線を落とし、歯を食いしばって全速力でペンを走らせ食らいつく必死さは、僕に部活動を思い出させた。

嫉妬や悔しさ、どす黒い感情を燃料にしていた自分へ。


講義中に放たれたその言葉に急ブレーキをかけられる。ギクッとした。自分のことを言われたのかと思った。ペンを休ませ、阿部さんと目を合わせる。


斜に構えている場合じゃない。


その言葉は、僕のお腹にズシンと響いた。
だけど響いた理由はわからないまま、第一回の講座は終わってしまった。
その理由がわかったのは、講義が終わって二日後の月曜日だった。


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言葉の企画が始まる前夜のこと。空が白んできはじめた頃に、僕はnoteに記事を投稿した。記事に書いた感情は、嫉妬、悔しさ、羨ましさ。お腹の中にある感情に目を向けると真っ暗で、どす黒いという言葉がよく似合っている。それでもその気持ちを乗り越えて前を向く。決意表明を綴った言葉。誰にみせるでもなく、自分が乗り越えるための言葉だった。

馬鹿にされるかもしれない。馬鹿にしたい奴は馬鹿にすればいい。
笑われるかもしれない。笑いたいやつは笑ってろ。僕は変わってやる。
不安と反発心を自分の中で行ったり来たりしながら、決して嘘は書くまいと正直に書き記した記事だった。
誰に見られたっていい。これは自分のための言葉だから。何度も言い聞かせて完成させたnoteだった。

第一回の講義が終わりSNSを通して企画生が繋がり始めた時、僕は正直怖かった。自分のSNSを通してこの記事が読まれ、知られ、馬鹿にされてしまうのではないかと。アツすぎる奴。イタい奴。意識高い系。散々言われてきた思い出したくない言葉が意識してないのに脳内でリピートされる。

怖い。

そんな僕の気持ちをよそに、阿部さんと企画生は平気で僕を裏切ってきた。

約束。近い将来、シュウマイ弁当食べよう。
私ももっと頑張りたいと思いました。
みずぐちくんと一緒に学べることが嬉しい。
彼のことを応援したいと思う。

涙を誘う裏切りだ。つい開講する前日まで、悔しさで泣いていたというのに、今度は嬉しさで涙を流してしまった。嬉しい涙は、胸もあったかくなるのだと知った。伝わるってこんなに嬉しいことなのか。もらったコメントをどれもスクリーンショットに収め、アルバムに保存するほど嬉しかった。

全てがあまりに優しく嬉しくて、何度も何度も反芻して噛み締めた。伝わるってこんなに嬉しいことなのか。世界が鮮やかにゆらめいて見えた。
今まで生きてきた中で、これほど「伝わった」を実感することはいまだかつてない。その時初めて、僕も伝わっていることをちゃんと全て言葉にしたいという気持ちがむくむくと頭をもたげた。

とにかく見る。とにかく書く。

講座を受ける全員に、企画書を通して「伝わったこと」「感動したこと」をメッセージとして記した。書き終えた時刻は午前1時。あと1時間遅かったら望遠鏡を担いで踏切に向かうところだった。

SNSで全員に向けてメッセージを書いたことを伝え、誰かが見にきてくれるかを期待して見ていた。すぐにコメントが入る。まだみんなも頑張っていることが嬉しかった。メッセージを喜んでくれるコメントが嬉しかった。

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正直なところ、全員分メッセージを書くのは大変だったし、書かなくても誰も怒らない。何にも言われない。それに書いたところでコメントが返ってくるかはわからない。誰にも届かず、無用の長物になっていたかもしれない。

それでも「伝わった!」「届いたよ!」と叫ぶことに意味があったと思う。
みんなにメッセージを書くことを通して、自分は知らず知らずのうちに、向き合うことを避けていたことに気づいたから。
「悔しい」「羨ましい」の二言で自分の感情を片付けるという楽な方へ逃げている自分に気づけたから。どういう気持ちでその言葉を選び、写真を選び、pdf一枚の企画書が完成させられたのか。そこに目を向けることができたから。

ううん。ここでわかったんじゃない。本当は元々わかってた。でもあなたからもらったコメントが、自分が斜に構えていると気づかせてくれた。向き合うきっかけになってくれたんだと思う。それが後からわかった「ズシン」の理由だった。

第一回の講座で学んだ考え方や捉え方も重要だけど、僕にとっては斜に構えず、向き合うことの大切さが何よりの学びだった。

これから半年、きっとたくさん逃げ出したい、見なかったことにしたいと思う感情に出会うことになると思う。

でもそのどれもを越えて、感動していられるとおもった。
それはすでに一緒に学ぶ企画生、阿部さんに救われてしまったから。

だからこそ、僕はこの半年間が美しいものになると確信している。
僕が変わることで、それを知って欲しい。

感動して、自分が変わってゆくことで、この半年間の気持ちや美しさを伝えていきたい。第一回の講義とそれから数日の出来事は、僕にとってあまりに大切な時間だった。

僕の自己紹介を見てくれたあなたに、言葉を交わしてくれたあなたに感謝を伝えたい。ありがとう。

そしてこれから、よろしくお願いします。






最後に冒頭にも引用した「旅をする木」から企画生の皆さんにゆっくり読んで欲しい一言を。

これが僕の短いアドバイスだよ。寒いことが人の気持ちを温めるんだ、離れていることが人と人を近づけるんだ。
引用:星野道夫「旅をする木」


この離れている距離こそが僕たちを近づけると信じて、僕はあなたと一緒に変わっていきたい。今までもこれからも、そう思っている。



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