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町工場しくじり先生、ブランディング確立までの道のり(バッグ製造体験編)

こんにちは、和装バッグ製造工房アトツギの高栁 実です。好評頂いている『町工場しくじり先生』シリーズなのですが、タイトルの後半を『ブランディング確立までの道のり』と変え、連載を続けて行こうと思います。

といいますのも、記事を書くに当たり、沢山の方のお世話になってきたということを改めて感じ、また結果的に事業化しなかっただけでそこから得た教訓は大きく『事業化出来なかったのはあくまで自分の責任であり、その過程まで失敗と言うのは関わって頂いた方に失礼』と感じた為です。

自分自身に対する自虐のスタンスと『何かが足りなくて上手くいかなかった』という要素、その足りない要素こそ大切だったという反省点は今後もしっかりお伝えしたいと思いますので、今後とも宜しくお願いします!!


・第一話 力技で実現したカタログ製作編
・第二話 勢いのみで作った和装バッグ作成キット編

『町工場しくじり先生』これまでの流れ

さて前回、勢いのみで初めての自社製品、和装バッグキットを製作した私ですが、その後は新商品作りよりも社内の掌握・改革に力を注ぎます。機会があれば別途お書きしようと思うのですが、文字通り修羅場の7年間でした。

そして時は流れ、社内を掌握し、改革を進めて新事業に再び動けるようになったのは2018年。家業に戻ってから実に8年の月日が流れていました。2018年。今から4年程前ですが、当時は空前のインバウンド需要に沸いていました。

こんな感じの訪日外国人の方で溢れていました (フリー素材より)

『インバウンドにはきっと大きなビジネスチャンスがある』そう考えた私は訪日外国人の方々について情報収集を行いました。

訪日外国人が熱狂するコンテンツとは

『訪日外国人が熱狂するコンテンツ』偶然ではありますが私は知っていました。というのも、私は大阪芸術大学在学中に殺陣(チャンバラ)をする演劇部に所属しており、そのご縁で【訪日外国人に侍体験をする団体さん】のお手伝いを時々させて頂いていたからです。

学生時代の舞台風景
空前の忍者不足だった為、ヘルプ忍者やってました。とあるイベントにて家族と共に

【侍に成りきって体験をする。そしてその風景の動画も記念に貰える】訪日外国人の方はそのサービス内容に熱狂し、口コミ効果でお客さんが殺到している状況でした。

『ということは、バッグ作り体験をして、その様子を写真に撮ってシェアしてあげると、外国人の方はめちゃくちゃ喜んでくれるのではないだろうか?』毎回の如く安易な発想ですが(苦笑)、私はバッグ作り体験の事業化を模索します。

バッグ作り体験を視察しに豊岡へ

『国内で鞄作り体験をしている所はないだろうか?』調べてみたら該当する事業者さんが豊岡にあり、私は前職の友人を連れて観光客として視察に訪れました。

持ち手を平ミシンで縫う様子

3時間でレザーバックを完成させるという少々過酷な体験でしたが、普段からバッグを作っているので楽々クリア。『絶対素人さんじゃないですよね!?』とスタッフさんに即バレするも、『和装バッグ職人やってるんです』といった具合に答えてながら、楽しく鞄作り体験を経験しました(笑)

裏地は無いタイプでしたが、本格的なレザーバックが完成しました

『これを和装バッグに持ってくればいいんや。ついでに完成した写真と共に記念撮影もセットすればいいんや』そう考えた私は和装バッグ製造体験の準備を初めました。

まずは身近な方にお願いしての実証実験

『後々は英語で体験事業をするとして、まずは日本人の方にバッグ作り体験をしてもらい、感想を聞いてみよう』そう考えた私はまずは身近な方にお願いして体験プランの実証実験を行いました。

工房に着物姿で親子仲良く体験してくださりました

参加してくださったのは当時侍体験のスタッフを一緒にしていた方。日本舞踊の先生でもあるその方は娘さんを連れて着物で工房に来てくださりました。(本人さんにはnote出演許可を頂いております)

パーツの配色はお二人の好みで選んで頂きました

『長くとも3時間くらいで終わるだろう』と思っていた当初の予定を大幅に超えて5時間くらいかかったものの、無事にお二人の好みのバッグが完成。記念撮影を経て第一回実証実験は終了しました。

謎の記念撮影サービス
個性的なオリジナルバッグが完成しました

想い出の素材が持つ可能性

『今回のバッグの形はごく平凡な和装トートバッグ。然しながらモニターのお二人はビックリするぐらい喜んで下さった。自分が携わり、配色を選ぶということは特別な意味を持つのだろうな』この実証を経て私は感じていました。

そして更に疑問が生じます。『この想い入れというものをもっと強くすればどうなるのだろうか?』そこで私は更なる実験として『結婚式を迎える新郎新婦が想い出の素材を使って親御さんへのバッグを作ってプレゼントする』という企画を実施しました。 (映像公開承諾済)

そしてその様子は友人(某関西準キーの番組でディレクターをしている友人)に頼み、映像化も行いました。

結婚式は無事に終了。新郎新婦は大変喜んで下さりました。そしてその結果は『(自分の)想い入れはデザインを超える』という結論を私の中に大きく印象付けました。


まとめ、体験事業から学んだこと

3回の実証実験を経て、最終的に私は感じました。

・バッグ製造体験事業は時間と工数が掛かり過ぎて生産性が合わない
・見栄えの良い場所の確保、人員(指導者レベル)の確保は必須
・インバウンドを狙うのであれば英語が必須

『これを現業(OEM)を同時に走らせるのは無理だな…』

結構な工数を掛けて実施した7年ぶりの新規事業でしたが、またもや事業化には至りませんでした。しかし『ユーザーの想い入れは商品のデザイン性を超える』という確信が私の中に残りました。

また、今回の体験事業も、弊社の事業規模・当時の人的リソース下では実現しませんでしたが、大きな事業所さんでしたら、『会社見学のコンテンツの一環』として取り入れたり、或いはブライダル向けのサービスとしてローンチすることは充分可能だったと感じています(それくらい顧客満足度は高いものでした)

いくら可能性のある事業を思いついたとしても、それを実現する自社の状況でなければ『絵に書いた餅』でしかありません。この挫折の経験は自社の状況に見合った形で新規事業を始めるべきという教訓を私の中に残して行きました。

まぁしかし… 勢いだけで後先考えず動いてたなぁと我ながら感じます(苦笑)
自分に対して突っ込どころは色々あるのですが、一番は会社としての考えや方向性・そこから派生する世界観(ブランディング)を決めずに場当たり的に新規事業や新商品作りをやってしまっていたという点に尽きるかなと思います。

7年越しの新規事業、またもや空振りに終わりますが、この後も懲りずに新しいことにチャレンジしていきます。次回遂にバッグでの自社商品作りが始まるのですが、それはそれでまた別に機会にお話したいと思います。

『バッグ製造体験編』最後まで読んで頂きありがとうございました!!

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