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和装バックが進化する為に乗り越えないといけない課題②

前回の記事で、「革新的な形を作っても業界で評価されない」ということについてお話しました。

今日は和装バックが進化しない第2の理由、コスト面の課題についてお話したいと思います。和装バックの新型を起こす際は型紙の切り出しという大変な作業に取り組む必要があります。

新型作成の流れとしては

1.モチーフを探す
雑誌やインターネットで見つけた写真を元にベースとなる形を決めます。

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2.口金の枠を決める
ここが他の鞄(レザーバック等)と大きく異る点で、和装バックは横溝の口金を使用するため、この口金にピッタリ入る型紙を製作しないといけません。枠の大きさによってバックの大体の大きさも決まります。

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3.マチ付きタイプか角丸フクレタイプかを決める。
一般的に、生産が比較的容易で、量産に向いているのがマチ付きタイプ
⇒海外製の和装バックはこのタイプが大半です。(写真下)

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製造には高度な技術が必要で、量産には向かないのが角丸フクレタイプ
⇒海外製はほとんどありません。(写真下)

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4.型紙を切り出し、微調整
この作業が本当に大変で、ゼロから型紙を切り出す場合は、熟練の職人さんでも丸2~3日時間がかかります。

ちなみに型紙の種類は
生地型(胴・マチ・底・手)
芯型(胴・マチ・底・手)
裏地型(胴・マチ・底・手)

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これだけの種類になり、1箇所微調整を行えば、他の型紙も寸法が狂い、微調整が必要となります。

こうして出来上がった型紙ですが、和装バックは分厚いボール芯を使用するため、手裁ちでは裁断できません。従って抜き型なるもの(写真上)が必要になります。

この金型は13種類にも渡り、製作費も当然必要です。
更に、口金も最低ロット以上を発注する必要がある為(現在は3ダースが最低ロット。予備分を入れて約40本、一昔前は5ダース、64本が最低ロットでした)

人件費も含めて、一型新型を製作するためには決して軽くはない資金が必要となり、原則型代は工房持ちです。小規模が大半の和装バック工房にはこの費用は大きな負担です。

また、40本分の材料を容易しても、実際の注文は10本未満で終わることはしばしばです。材料が不良在庫として残る。多くの工房はこの痛い経験を長年してきているので、新型を作るのが億劫になってきているのです。

バブル期は型代が自腹でも、通常の仕事で十分元は取れました。しかし、小ロット多品種が当たり前となった現在においては、工房側も新型の費用を捻出することが困難になりました。

よって、何処の工房からも新型が出ずらくなってきております。これもまた現実に起こっている出来事です。

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