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占い

占いを信じない圭くんは毎月自分の誕生日の日に占いをするのだという。
占いを信じない圭くんは、ホロスコープ占いと四柱推命に精通している。
「性格を見ても違うんだよね。僕と違うというか、このふたつの占いが別々のことを言っている。180度違うということもないわけではない。なかには言葉を変えると同じ意味だよね、とならないわけでもないけどね」
自分では信じていないと言いながら、他人に占ってくれと言われると「いいよ」と簡単に頷く。
「生年月日はわかっていても、生まれた時間はわからないでしょ?」
と、意地悪く言うのがお決まりのパターンだ。
圭くん曰く。同じ日でも午前0時と午後11時ではかなり星の場所が違うから、星の影響もそれなりに変わるものなのだそうだ。
圭くんはそのひと月に一度の占いで出た結果と、今の自分の現状を照らし合わせる。
「要は解釈の仕方ひとつなんだろうけれども、占いの結果と100%同じでなければそれはハズレているということだよ。半分だけ当たっているとかそんな都合のいいものは占いじゃないよ」
つまり、圭くんのいう占いは予言と同じということだ。
「だから、みんなでそんなハズレをわざわざ聞きに来るなんておかしいなと思いながらいつも占いをしている」
「ねぇ?圭くんの占いだと、圭くんはどんな性格?」
「頑固で強情で正義感が強くて負けず嫌い、というのと、コミュニケーションお化けだけど飽きやすい」
「それどっちもあるでしょ」
「前者と後者は別々の占いの結果」
圭くんは涼しい顔で言う。
「ただ、両方の占いで共通するのはどうやら自分は頭のいい人が好きらしい」
「好きらしい…って実際はどうよ?」
「頭のいい人が好きだよ。バカは嫌い。察しの悪いヤツというか、自分で考えられないヤツも嫌い」
それはつまり占いにおんぶに抱っこな人は嫌いというわけだ…と口に出さずに思った。
圭くんは自分の占いを終え、その結果をじっと見て「フン」と鼻を鳴らした。
何か大きな事件が起きた後ネットで「予見していました」という人を目にすると圭くんは「フン」と鼻を鳴らす。
そして「起きる前に言えよ」と決まって言う。
「おんなじホロスコープの人っているの?」
「まぁ、おんなじところで同じ時間に生まれた人は一緒になるね」
そんなふたりがおんなじ運命を辿った事実があったら占いを信じてもいいと圭くんは言う。
残念ながら自分達の周りに同時に生まれた人はいない。一卵性双生児の岸元兄弟もふたりが生まれるのに25分の差がある。
「自然分娩だったらまだ誕生した日時が関係するのはわかるけど、帝王切開とかさ、他人が決めた運命で生きることになるじゃん」
「うわぁ、もしそうだったら手術の予定日とか安易に決められないよ」
「だろう?」
「逆に占いでいい日を選んで出産するというのもあるかもしれないな」
「占い信者はそうかもね」
圭くんは涼しい顔でホロスコープを広げ、タロットカードを置いていく。そしてしげしげとそれを眺めると「フン」と鼻を鳴らした。
その結果がどうだったのかは本人しかわからない。

「結果を訊かないのかって?それは野暮ってものでしょう?」