見出し画像

晴れのち曇り時々雨

「テレビで見たんだけどさ、雲が空の9割以上が曇りなんだって」
「ふうん」
「この間、飲んだ時に竹本が言ってたじゃん。『どこからどこまでを曇りと呼んだらいいやら』って」
「言ってたっけ?」
「言ってたよ。珍しくお前が竹本の話に同意してたじゃん。『俺もそう思ってた。曇りの天気予報はどこまで曇りで当たっているのかわからない』って」
「そうだっけ?」
「そうだよ。ちなみにそのテレビでなんだけど雲が1割以下なら『快晴』であとは『晴れ』なんだって」
「ふうん」
「好きと嫌いの境界線にも似てなくないよね」
「何が?」
「好きが晴れ、嫌いが曇りだとすると、嫌いなところがあっても好きが見えているうちは好きじゃん。でも、ついに好きが見えなくなると嫌いになる」
「そんな単純じゃないだろう?どれだけ嫌いを我慢しなくちゃならないんだ?90%だぞ?」
「んー…雲がひとつでもその雲が大きかったらあっという間に90%超えちゃうけど、雲の数が多くても青空見えてたら晴れだと思うんじゃないかな?」
「ふーん」
「何?その目」
「お前の言うことに納得しそうになっている俺が嫌だ」
「なんだよ。ひどいな」
「まぁ、天気を気にしているうちが花だよな」
「うん?」
「さっきまで晴れていたのに、雲が出てきた。曇っていたけど晴れ間が見えてきたからどうやら雨は降らないな。そんなふうに天気が気にすることなく、曇っていようが晴れていようが関係ない。無関心になったら、もうそこには空がないも一緒だからな」
「そうだね」
「空がないのか、それとも自分がいないのか」
「明日の天気は?」
「何?」
「明日の天気予報」
「自分で調べられるだろう?」
「ちぇ。つれないなぁ。晴れのち曇り時々雨。フルコースじゃん」
「やれやれだな」
「ホント、やれやれだよ」
「明日、仕事終わったら、竹本に会うんだ」
「へぇ。雨止んでるといいね」
「まあな」