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ヘンゼルとグレーテル

「ヘンゼルとグレーテルでヘンゼルが最初に道標に置いた石ってなんだったんだろうな?」
「何それ?」
「知らない?ヘンゼルとグレーテル」
「お菓子の家だろう?」
「そう」
「石なんて置いてたの?」
「置いてたんだよ。で、一度は家に戻るんだ」
「ふうん」
「2度目は石を拾えなくてね」
「どうして?」
「拾う隙を与えなかったのさ。外に出られないようにしてたんじゃなかったかな?」
「回収しながら帰ってきたらよかったのに」
「まさか2度も捨てられると思わなかったんじゃない?」
「なるほどね。パンを撒いたのは仕方なくしたことなんだ」
「そうさ」
「で?」
「あぁ。ふたりは貧乏ゆえに森に捨てられたんだけど、石の種類によってはそれを売って儲けられたんじゃないかな?とか思ってみたり」
「なんだそりゃ?」
「森の近くに住んでいて、月明かりで白く光る石。なんだと思う?」
「石灰岩」
「ザックリだなぁ。石灰岩じゃあ金儲け難しいか?」
「石灰岩って言っても種類あるからな」
「まあな。でもやっぱり石じゃ稼げないか…。童話って得てしてそうだけど。あのふたりさ、何日か彷徨った挙句お菓子の家にたどり着いたんだけど、魔女を殺した後は速攻で家に帰れるんだよね」
「ご都合主義、って知ってる?」
「わかってるとも」
「じゃあいいけど」
「でさ、もうひとつ」
「うん」
「あれって、お父さんは子どもたちを捨てるのに反対していたけど、お母さんがどうしても捨てろっていうんだよね」
「そうなんだ。おっかない母ちゃんだな」
「子どもたちより自分の方が可愛かったんだろうねぇ」
「お父ちゃんは泣く泣く子どもを捨てたっていうけど、向こうの国もカカァ天下あるんだねぇ?」
「そのカカァ天下のお母さんが子どもたちが家に帰った時には死んでいたんだよ」
「おっと…」
「その間、1ヶ月強」
「ふんふん…事件の臭いがするぜ」
「あ、おまえもそう思う?」
「まあな」
「本当にめでたしめでたしなら、心を入れ替えたお母さんと、以前から優しいお父さんと、ヘンゼルとグレーテルでいつまでも幸せに暮らしましたとさだよね」
「まあな」
「子どもたちを捨てろと言うお母さんに病気の影は見えない」
「うん。つまりは子どもを捨てさせた妻に夫が復讐を果たしたって思ってもいいんじゃないか?」
「むしろそれが自然だ」
「魔女の宝で3人は幸せに暮らしましたとさ、おしまい…ってこれでいいのか?って話」
「黒いな」
「あぁ。結局昨夜はそのことについて考えて眠れなかった」
「それはそれはお疲れ様でした」
「おまえ…馬鹿にしているだろう?」