見出し画像

恋愛相談・2

「セックスのない恋愛って恋愛じゃないって言われた」
「なんだそりゃ?」
「精神的つながりだなんて目に見えないものだけで本当に繋がっていられると思っているの?って」
「逆にセックスだけの関係だってあるじゃん」
「言ってやった」
「そしたら?」
「え?あぁ。セックスとまでいかなくても相手に触れたいって思うじゃない?って」
「うん」
「そうなのかな?って」
「うん」
「用もないのに触れないよね?親子だって、子どもが小さいうちは抱いたりするけど、いつの間にか手を繋ぐこともなくなる」
「うん」
「だけど、親子、家族ってさ、やっぱり大切だし特別だよね」
「そうだな」
「恋人だから触れていなくてはならない、はないよね」
「まぁ、そうだな」
「なんか違う?」
「いや。例えばさ。家族が亡くなりました。急に亡くなりました。その時に、その遺体に縋りつくか?」
「何それ?」
「俺さ。今まで祖父ちゃんひとり、祖母ちゃんふたり、で、父親。死んだ時に家族たちが泣きすがっているのをちょっと離れたところで見てたんだ。祖父ちゃん、祖母ちゃんには小さい頃抱かれてた。親父にだって子どもの頃抱かれてたし、亡くなる少し前まで、結構肩抱かれたりさ、俺たち友達みたいな父子だったからさ。でもさ。死んだらなんかもう別モンって感じだったんだよな」
「・・・う、ん」
「あー、ちょっと違ったか?」
「いや。うん。いまだに身内の葬式とかないから。祖父ちゃん祖母ちゃんも自分が生まれる前に亡くなっててさ」
「あら、まぁ」
「うん・・・」
「相手に触れるというのは触れることで何かを伝えることだと思うんだ」
「つまり、セックスも相手に思いを伝える手段のひとつということ?」
「触れることで相手がわかってくれるとしたらだけど。そうでなければ、文字通り自己満足だ」
「あ、それがさっきの話なんだね。死んじゃった人には伝わらないものね」
「まぁね」
「わかりにくいよ」
「悪かったね」
「人の温もりは安心するって言いますものね」
「そういう人もいる。でも、その温もりがなくなるのを思うと安易にそれを知ってしまうのもどうかと思う者もいる」
「それはあなたですか?」
「寒い夜の抱き枕としての温もりなら嬉しいけどね」
「確かに蒸し暑い夏の夜はひとりで寝たいです」
「そうだな」
「でも、暗い夜には手を繋いでいてほしいです」
「いいんじゃないか?握った手の温もりで相手が変わらずそこにいると認識できる」
「嬉しいです」
「どのみちベッドのサイズを大きくしないとな」
「僕は寝相いいですよ」
「俺も悪くはない。夏のことを思うとやはりベッドは大きい方がよさそうだ」
「そうですね」
「何がおかしい?」
「おかしくないです。嬉しいだけです」
「そうか?」
「はい。嬉しいだけです」

■■■
このふたり