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passion

「パッションフルーツのパッションは情熱じゃないんだって」
「いきなり何?」
「うん。パッションフルーツ。知ってる?」
「パッションフルーツ?南の食べ物だと思っていたから、勝手にそれでパッション、情熱だと思ってたけど。じゃあ何?」
「キリストの受難」
「え?なんで?」
「花の形が磔刑のようだから」
「どんな花してるの?」
「こんなん感じ」
「どれ?・・・へぇ・・・これって時計草じゃね?」
「そう。時計草」
「時計草の実がパッションフルーツ?」
「時計草の中で実をつける種類のがあって、その実を言うらしい」
「へぇ・・・まずは花ありきってヤツ?」
「そりゃそうだろう。花が咲かなきゃ実がつかない」
「まぁ、そうだけど」
「南米にキリスト教を布教する際に名付けられたらしいね」
「その前はどんな名前だったんだろう?って南米の果物なんだ」
「らしいね」
「トロピカルフルーツのトロピカルってそもそも何?」
「トロピカルの意味は熱帯風」
「熱帯風果物。フウなんだ」
「熱帯っぽい果物」
「まぁ、確かに。っていうか寒いところの果物ってなんだ?」
「りんご」
「あぁ、確かに。他には?」
「イメージとしてベリー系。イギリスとかでも採れるから」
「なるほどねぇ…でもさ、そうなるとキリストはパッションフルーツは食べたことがなかったんだろうね」
「そうだなぁ」
「キリストの預かり知らぬところでキリストの受難の花みたいに紹介されてたんだろうね」
「宣教師たちが布教するためならなんでも使ってたからなぁ」
「時計草もいい迷惑だね」
「まさに受難ってとこか?」
「パッションフルーツ、パッションフラワーと呼ばれる前の名前が知りたい。勝手に奇妙な名前付けられて。それまで長いこと呼ばれていたであろう名前をあっさり捨てられて。受難極まりない」
「そうだなぁ。あ、トロピカルフルーツは正しくは低緯度で採れる熱帯産果物だから」
「フウじゃなく、きちんと熱帯なんだ」
「そういうこと」

「貰い物のパッションフルーツあるけど食べる?」
「オレ、食べたことない」
「食べる?」
「美味しい?」
「俺もまだ食べたことない」
「そういうこと?」
「ん?」
「不味かった時の記憶の共有」
「まぁ、ね」
「・・・美味しいことを祈りながらいただきましょうか」