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雪の朝

「おい。起きろよ」
「ん?」
「時間だぞ」
「あ・・・あーっ!」
「目覚まし掛けなかった?」
「いや掛けた」
「まぁ、雪の朝は寝坊するよね。静かでさ」
「え?雪?」
「夜中から降ってたみたい。結構積もってる」
「マジで?・・・うわ。電車動くのかな?」
「早めに出た方がいいんじゃない?」
「そうだな…って。おまえは?」
「有休消化で休み取ってたんだよね」
「うわっ。なにそれ?おまえ、この雪を予知していたとか」
「違うよ。今日さライブの配信あって、それ見ようと思ってチケット買った時に休み取ってた」
「おまえ、いっつもそうだよな。運がいいというか」
「そうかな?」
「従兄弟同士だというのにさぁ」
「そうかな?俺から見ればおまえもなかなか強運だよ。って、いいから支度して来いよ」

「それにしても静かだね」
「車の音もしないからね。圧雪だよ。よほど積もっているんじゃないかな?」
「そんな・・・電車動いてる?」
「ネットで調べたら、遅れてるってなってたよ」
「うわぁ・・・一日中降るのかな?」
「天気予報だと夜まで降るって」
「うわぁ・・・会社行きたくない」
「休みとかにならないの?あれほどリモート積極的だったじゃん。おまえんとこの会社」
「そうだよなぁ。あ、ご馳走様」
「コーヒー飲む?」
「もらおうかな?あったかいミルクとか入れてもらえる?」
「いいよ」

「車は走ってるんだね」
「本当だ。でも音がしない」
「こっちはさ。こんなこと滅多にないからさ。イベントみたいにみんなざわざわしてるんだよな」
「静かだけどね」
「あ。会社から連絡きた」
「ん?」
「え?」
「ん?」
「どうした?」
「何が?」
「休みだって」
「おや、まぁ」
「まぁ、でも。うん・・・」
「出ても営業に出れないし、取引先だって出てるかどうか怪しいじゃん」
「確かにな」
「『承知しました』と・・・やった」
「折角ネクタイしたのにな」
「まぁ、家を出る前でよかったよ」

「ライブ夜なんだけどさ」
「休む必要なかったんじゃない?」
「ふふふ。一緒に観ようよ」
「ライブ。雪でもやるよね」
「多分ね。海外からの配信だから」
「そっちも雪ってことないよね?」
「・・・・・・調べてみる」